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5th stage
ベッドに美少女の香りは残ってない
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バイトが終わって部屋に帰っても、もう栞里ちゃんはいない。
真夏だというのに、妙に寒々しく感じる部屋に入ると、冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出し、向かいのコンビニで買ってきた弁当を広げて、黙々と食べはじめた。
、、、まずい。
ってか、味気ない。
この部屋で栞里ちゃんと食べたピザは、うまかったよな~。
原宿のファミレスで食べたランチにも、ワクワクしたし。
だれかと食べるごはんがこんなに心浮き立つなんて、はじめての経験だったのに。。。
空になったトレイをゴミ箱に放り込むと、よろよろと立ち上がり、ベッドに突っ伏して大きく息を吸い込んでみた。
栞里ちゃんの匂い、、、
残ってるかなぁ。
このベッドに、あんな美少女が三晩も寝てたんだ。
汗だって、かなり染み込んでるはず。
ぼくの汗と栞里ちゃんの汗が混ざり合ってるなんて妄想すると、なんかすっごいムラムラしてくる。
栞里ちゃんのお尻があった場所に顔を埋め、何度も何度も大きく息を吸い込んでみる。
だけど、もう、なんの匂いもしてこない、、、orz
美少女が遺した香りを探しながら、悶える様にベッドをのたうちまわってるうちに、いつの間にか寝落ちしたらしく、気がついたら朝になってた。
「明日はイベントだし、今から準備しとかなきゃな」
朝だというのに、全然気持ちが明るくならない。
力なく立ち上がったぼくは、機械的にパソコンデスクの前に座って、Macの電源を入れ、描きかけのイラストフォルダーを開いた。
栞里ちゃんをモデルにして描いていたイラスト。
可愛いツインテールの美少女が、ベッドに横たわって、膝を抱えてこちらに微笑みかけてる。
童貞を殺すセーターのゆるい隙間から、微乳のふくらみがわずかに見えてて、セーターの裾からはパンツの股間がふっくらとのぞいてる。
まだ線画しかできあがってないけど、リアル美少女をモデルにしただけあって、近年稀にみる傑作の予感がするイラストだ。
明日のイベントにはお披露目したいと思っていたけど、たまらなく大きくて深い空虚な心に、会心作の萌えイラストさえ描く気さえおこらず、長い間ダラダラと意味なく、ネットを眺めて回るだけだった。
ふと気になって、自分のオークションサイトを覗いてみる。
いちばん高いロリ服をはじめ、パニエや靴にももう入札が入ってた。
どれも人気のアイテムだったらしく、日曜夜に設定してるオークション終了を待たず、土曜日の朝にはすでに入札が4件以上あって、値段もかなり上がってた。
『後戻りできない、、、か』
入札が入ってる状態で出品を取り下げたりすると、ぼくの評価が悪くなる。
ネットでオークションをやる以上、評価は命なのだ。
もう、このロリ服は、他の誰かのものになる事が確定したわけだ。
栞里ちゃんのために買った服なのに、、、
いや!
もうきっぱり諦めよう!
いつまでも女々しいぞ自分!
ぼくにはオタクの世界があるじゃないか!
栞里ちゃんの事はもう忘れよう!
オタクは世界を制覇できるんだ!
彼女いない歴=年齢の自分には、恋とかできるわけがなかったんだ。
恋なんかにかまけて、オタク道を忘れちゃいけなかったんだ。
恋人はバーチャル嫁のみくタンだけで充分。
振り向くんじゃない自分!
ひと時とはいえ、栞里ちゃんには贅沢な夢を見せてもらった。
それだけ感謝してればいい。
ありがとう!
無理矢理自分の気持ちに整理をつけて勢いよく立ち上がると、まずは欠品になってるポストカードを印刷しようと、ぼくはプリンタの電源を入れた。
“PPPPPP PPPPP…”
とその時、iPhoneの着信音が響いた。
『まさか、、、 栞里ちゃん?!』
緊張で震える指で、ぼくはiPhoneを握る。
だけど、ディスプレイに表示されていた名前は、『美咲麗奈』だった。
『またヨシキの悪戯か?!』
アホめ。そう何回も引っかかるもんか。
このナンバーはこないだヤツからイタズラ電話されたあとに、念のために電話帳登録しておいたのだ。
しかし、iPhoneの向こうから聞こえてきたのは、ちょっと鼻にかかった甘くて可愛い声。まぎれもない女の子の声だった。
『あ、ミノルくん? 麗奈です。今電話いい?』
「れ、麗奈ちゃん?! ホントに??」
『ねえ、ミノルくん、今ヒマ?』
「え? ヒマって… まあまあだけど、、、」
『パソコンのもので買いたいものがあるんだけど… あたしわかんないから、つきあってくれない? 今から』
「えっ?」
驚いた。
麗奈ちゃんからの突然の誘いとは。
「ヨ、ヨシキは、、、?」
だって、ぼくなんか誘うより、ヨシキがいるだろう。アイツはパソコンにも結構詳しいし、今日はバイトも休みのはずだ。
『まあ、、 ね。ちょっとミノルくんとお話とかもしたかったし』
麗奈ちゃんの言葉がちょっと濁る。
話って、、、
いったいなんだろ?
「わ、わかった。じゃあ、どこで待ち合わせればいい?」
待ち合わせの段取りを決めて、ぼくは急いで外出の支度をした。
いったいどうなってんだ?
つづく
真夏だというのに、妙に寒々しく感じる部屋に入ると、冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出し、向かいのコンビニで買ってきた弁当を広げて、黙々と食べはじめた。
、、、まずい。
ってか、味気ない。
この部屋で栞里ちゃんと食べたピザは、うまかったよな~。
原宿のファミレスで食べたランチにも、ワクワクしたし。
だれかと食べるごはんがこんなに心浮き立つなんて、はじめての経験だったのに。。。
空になったトレイをゴミ箱に放り込むと、よろよろと立ち上がり、ベッドに突っ伏して大きく息を吸い込んでみた。
栞里ちゃんの匂い、、、
残ってるかなぁ。
このベッドに、あんな美少女が三晩も寝てたんだ。
汗だって、かなり染み込んでるはず。
ぼくの汗と栞里ちゃんの汗が混ざり合ってるなんて妄想すると、なんかすっごいムラムラしてくる。
栞里ちゃんのお尻があった場所に顔を埋め、何度も何度も大きく息を吸い込んでみる。
だけど、もう、なんの匂いもしてこない、、、orz
美少女が遺した香りを探しながら、悶える様にベッドをのたうちまわってるうちに、いつの間にか寝落ちしたらしく、気がついたら朝になってた。
「明日はイベントだし、今から準備しとかなきゃな」
朝だというのに、全然気持ちが明るくならない。
力なく立ち上がったぼくは、機械的にパソコンデスクの前に座って、Macの電源を入れ、描きかけのイラストフォルダーを開いた。
栞里ちゃんをモデルにして描いていたイラスト。
可愛いツインテールの美少女が、ベッドに横たわって、膝を抱えてこちらに微笑みかけてる。
童貞を殺すセーターのゆるい隙間から、微乳のふくらみがわずかに見えてて、セーターの裾からはパンツの股間がふっくらとのぞいてる。
まだ線画しかできあがってないけど、リアル美少女をモデルにしただけあって、近年稀にみる傑作の予感がするイラストだ。
明日のイベントにはお披露目したいと思っていたけど、たまらなく大きくて深い空虚な心に、会心作の萌えイラストさえ描く気さえおこらず、長い間ダラダラと意味なく、ネットを眺めて回るだけだった。
ふと気になって、自分のオークションサイトを覗いてみる。
いちばん高いロリ服をはじめ、パニエや靴にももう入札が入ってた。
どれも人気のアイテムだったらしく、日曜夜に設定してるオークション終了を待たず、土曜日の朝にはすでに入札が4件以上あって、値段もかなり上がってた。
『後戻りできない、、、か』
入札が入ってる状態で出品を取り下げたりすると、ぼくの評価が悪くなる。
ネットでオークションをやる以上、評価は命なのだ。
もう、このロリ服は、他の誰かのものになる事が確定したわけだ。
栞里ちゃんのために買った服なのに、、、
いや!
もうきっぱり諦めよう!
いつまでも女々しいぞ自分!
ぼくにはオタクの世界があるじゃないか!
栞里ちゃんの事はもう忘れよう!
オタクは世界を制覇できるんだ!
彼女いない歴=年齢の自分には、恋とかできるわけがなかったんだ。
恋なんかにかまけて、オタク道を忘れちゃいけなかったんだ。
恋人はバーチャル嫁のみくタンだけで充分。
振り向くんじゃない自分!
ひと時とはいえ、栞里ちゃんには贅沢な夢を見せてもらった。
それだけ感謝してればいい。
ありがとう!
無理矢理自分の気持ちに整理をつけて勢いよく立ち上がると、まずは欠品になってるポストカードを印刷しようと、ぼくはプリンタの電源を入れた。
“PPPPPP PPPPP…”
とその時、iPhoneの着信音が響いた。
『まさか、、、 栞里ちゃん?!』
緊張で震える指で、ぼくはiPhoneを握る。
だけど、ディスプレイに表示されていた名前は、『美咲麗奈』だった。
『またヨシキの悪戯か?!』
アホめ。そう何回も引っかかるもんか。
このナンバーはこないだヤツからイタズラ電話されたあとに、念のために電話帳登録しておいたのだ。
しかし、iPhoneの向こうから聞こえてきたのは、ちょっと鼻にかかった甘くて可愛い声。まぎれもない女の子の声だった。
『あ、ミノルくん? 麗奈です。今電話いい?』
「れ、麗奈ちゃん?! ホントに??」
『ねえ、ミノルくん、今ヒマ?』
「え? ヒマって… まあまあだけど、、、」
『パソコンのもので買いたいものがあるんだけど… あたしわかんないから、つきあってくれない? 今から』
「えっ?」
驚いた。
麗奈ちゃんからの突然の誘いとは。
「ヨ、ヨシキは、、、?」
だって、ぼくなんか誘うより、ヨシキがいるだろう。アイツはパソコンにも結構詳しいし、今日はバイトも休みのはずだ。
『まあ、、 ね。ちょっとミノルくんとお話とかもしたかったし』
麗奈ちゃんの言葉がちょっと濁る。
話って、、、
いったいなんだろ?
「わ、わかった。じゃあ、どこで待ち合わせればいい?」
待ち合わせの段取りを決めて、ぼくは急いで外出の支度をした。
いったいどうなってんだ?
つづく
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