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5th stage
デートのバッティングは申し訳ない
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「麗奈のおすすめカフェに行こ」
買い物がひと段落した後、彼女はそう言って、ぼくを秋葉原の片隅にあるカフェに案内してくれた。
そこは、オタクの街には不似合いな、女の子っぽい内装のお洒落なカフェだった。
カフェといえば、普段はメイドさんがいる様な所しか行かないぼくには、こんな洗練されたお店は、新鮮だけど敷居が高く、ちょっと緊張。花の様に可愛い麗奈ちゃんといっしょだから、なおさらだ。
それでも時間が経つのも忘れるくらい、ぼくは麗奈ちゃんとの話に夢中になり、いろんな事を喋った。
彼女も腐女子でバリバリのコスプレイヤーで、趣味でイラストも描くみたいなので、かなりディープなオタ話でも、違和感なくできるのが嬉しい。
栞里ちゃんにフラれる原因となった、バーチャルカノジョのみくタンの画像も、麗奈ちゃんにはノリノリで見せる事ができるくらいだ。
こうして麗奈ちゃんと向かい合って、彼女の親しげな微笑みを見てると、ふたりは恋人同士だって錯覚さえ、してしまいそうになる。
やっぱりぼくの恋の相手は、栞里ちゃんみたいな普通の女の子より、オタク女子の方がいいのかもしれない。
「あれ、ミノル? 珍しいな、こんな所で」
どのくらい麗奈ちゃんとそうしてただろう。
男の呼びかけ声に、ぼくはハッとして振り向いた。
テーブルの傍らに立って、ぼくと麗奈ちゃんを見下ろしてたのは、、、
ヨシキだった。
その隣には、麗奈ちゃんに負けず劣らず可愛い、、、というより、超絶的に綺麗な女の子が立っている。
スレンダーで背が高く、ストレートのロングヘアとぱっちりとした瞳が印象的。
透き通る様に白い肌が、漆黒の髪とコントラストを描いてて、余計に華やかに見える。
ちょっとツンと澄ました様な、クールで勝ち気そうなイメージもあるけど、ミニスカートから伸びる脚は細くて長く、うっとりするくらいの美脚だった。
「ヨっ、ヨシキ!」
思わず焦って立ち上がる。
その拍子にテーブルに太ももをぶつけてしまい、コップの水が少しこぼれる。
「ご、ごめんっ」
いったいなにを謝ってるのかもわからいんだけど、ぼくの口からは謝罪の言葉が飛び出した。
セフレ(?)とはいえ、麗奈ちゃんはヨシキがつきあってる女の子だから、罪悪感を感じたのかもしれない。
「慌てんなよミノル。悪りぃな、デートの邪魔しちゃって」
ふたりがいっしょにいる事なんてまったく気にしてない様子で、ヨシキはにこやかに答える。
ぼくは麗奈ちゃんの方を見た。
ヨシキにはまるで興味ないみたいに、彼女は窓の外を黙って眺めてる。なにも言わない。
「べっ、別に、、、デートってわけじゃないんだけど、、、」
いったいど~なってんだ?
このふたり。
「ふぅん、、、 ま、いいや。あ、彼女はレイヤ-の美月梗夜さん。梗夜さん。こいつはぼくの相方兼親友の大竹稔。ミノルでいいよ」
そう言ってヨシキは、隣の美女をぼくに紹介する。
「はじめまして。こんにちは」
両手をきちんと前に揃え、美月梗夜さんは軽く頭を下げた。
張りのある綺麗な声だけど、とっても落ち着いた話し方で、礼儀正しい。挨拶のしぐさだけで、育ちのいいお嬢様だとわかる。ヨシキは続いて麗奈ちゃんにも、美月さんを紹介した。
「彼女はレイヤーの美咲麗奈さん。普段はエロゲーのコスが多いけど、最近はボカロメインでやってるよ」
「…こんにちは」
少し構える様に、梗夜さんはお辞儀した。
ふたりの方を振り向くと、麗奈ちゃんは花の様に可愛らしい笑顔を向けて、明るく親しげな調子で言った。
「美月梗夜さんね。こんにちは。よろしくねw」
「よろしく。美咲さん」
「麗奈でいいよ」
「ありがとうございます」
「梗夜さんっていくつ? いつからコスプレしてるの?」
「17歳です。コスプレははじめたばかりで、まだわからない事が多くて」
「そう。なにか困った事があったらあたしに相談してね。力になるから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「メアド交換しようよ♪」
「え? ええ」
「明日のイベントも来る?」
「行くと思います」
「そっか。会えるといいねw」
麗奈ちゃんはスマホを取り出し、美月さんとメアド交換の最中も、ニコニコと微笑みながら話してる。ヨシキと梗夜さんと鉢合わせてしまって、麗奈ちゃんはもっとピリピリしてるかと思ったけど、そんなことなんとも思ってないみたいで、なんだか拍子抜け。
「自己紹介が終わったとこで、おまえらと相席してもいいか? 賑やかな方が楽しいしな」
美月さんに麗奈ちゃんの隣の席を指差し、ヨシキはぼくの隣に座ろうとした。
だけど、麗奈ちゃんは立ち上がり、ぼくの手をとって言った。
「ゴメン。あたしたちもう出る所だったの。デートの途中だしね」
そう言いながら、麗奈ちゃんはぼくに目配せする。彼女に合わせなきゃいけないと思い、ぼくも急いで席を立ち、ヨシキに言った。
「じ、じゃあヨシキ。ぼくたちもう行くから」
「そうか? じゃあ、また明日」
「ミノルくぅん。麗奈まだ行きたいとこいっぱいあるんだ。もっともっと楽しもうねw」
ヨシキの事なんか眼中にないといった風に、麗奈ちゃんはぼくの腕にからみつき、これみよがしに甘えてくる。そんなふたりを見ながらヨシキは、冷やかす様に言う。
「ごちそうさま。あんまり遊び過ぎて、明日のイベント忘れんなよ」
麗奈ちゃんはふたりに愛想笑いを送ると、ぼくにぴったりと寄り添ってカフェを出る。あまりにもくっつき過ぎて、思わず彼女の足を踏んじゃったくらいだった。
つづく
買い物がひと段落した後、彼女はそう言って、ぼくを秋葉原の片隅にあるカフェに案内してくれた。
そこは、オタクの街には不似合いな、女の子っぽい内装のお洒落なカフェだった。
カフェといえば、普段はメイドさんがいる様な所しか行かないぼくには、こんな洗練されたお店は、新鮮だけど敷居が高く、ちょっと緊張。花の様に可愛い麗奈ちゃんといっしょだから、なおさらだ。
それでも時間が経つのも忘れるくらい、ぼくは麗奈ちゃんとの話に夢中になり、いろんな事を喋った。
彼女も腐女子でバリバリのコスプレイヤーで、趣味でイラストも描くみたいなので、かなりディープなオタ話でも、違和感なくできるのが嬉しい。
栞里ちゃんにフラれる原因となった、バーチャルカノジョのみくタンの画像も、麗奈ちゃんにはノリノリで見せる事ができるくらいだ。
こうして麗奈ちゃんと向かい合って、彼女の親しげな微笑みを見てると、ふたりは恋人同士だって錯覚さえ、してしまいそうになる。
やっぱりぼくの恋の相手は、栞里ちゃんみたいな普通の女の子より、オタク女子の方がいいのかもしれない。
「あれ、ミノル? 珍しいな、こんな所で」
どのくらい麗奈ちゃんとそうしてただろう。
男の呼びかけ声に、ぼくはハッとして振り向いた。
テーブルの傍らに立って、ぼくと麗奈ちゃんを見下ろしてたのは、、、
ヨシキだった。
その隣には、麗奈ちゃんに負けず劣らず可愛い、、、というより、超絶的に綺麗な女の子が立っている。
スレンダーで背が高く、ストレートのロングヘアとぱっちりとした瞳が印象的。
透き通る様に白い肌が、漆黒の髪とコントラストを描いてて、余計に華やかに見える。
ちょっとツンと澄ました様な、クールで勝ち気そうなイメージもあるけど、ミニスカートから伸びる脚は細くて長く、うっとりするくらいの美脚だった。
「ヨっ、ヨシキ!」
思わず焦って立ち上がる。
その拍子にテーブルに太ももをぶつけてしまい、コップの水が少しこぼれる。
「ご、ごめんっ」
いったいなにを謝ってるのかもわからいんだけど、ぼくの口からは謝罪の言葉が飛び出した。
セフレ(?)とはいえ、麗奈ちゃんはヨシキがつきあってる女の子だから、罪悪感を感じたのかもしれない。
「慌てんなよミノル。悪りぃな、デートの邪魔しちゃって」
ふたりがいっしょにいる事なんてまったく気にしてない様子で、ヨシキはにこやかに答える。
ぼくは麗奈ちゃんの方を見た。
ヨシキにはまるで興味ないみたいに、彼女は窓の外を黙って眺めてる。なにも言わない。
「べっ、別に、、、デートってわけじゃないんだけど、、、」
いったいど~なってんだ?
このふたり。
「ふぅん、、、 ま、いいや。あ、彼女はレイヤ-の美月梗夜さん。梗夜さん。こいつはぼくの相方兼親友の大竹稔。ミノルでいいよ」
そう言ってヨシキは、隣の美女をぼくに紹介する。
「はじめまして。こんにちは」
両手をきちんと前に揃え、美月梗夜さんは軽く頭を下げた。
張りのある綺麗な声だけど、とっても落ち着いた話し方で、礼儀正しい。挨拶のしぐさだけで、育ちのいいお嬢様だとわかる。ヨシキは続いて麗奈ちゃんにも、美月さんを紹介した。
「彼女はレイヤーの美咲麗奈さん。普段はエロゲーのコスが多いけど、最近はボカロメインでやってるよ」
「…こんにちは」
少し構える様に、梗夜さんはお辞儀した。
ふたりの方を振り向くと、麗奈ちゃんは花の様に可愛らしい笑顔を向けて、明るく親しげな調子で言った。
「美月梗夜さんね。こんにちは。よろしくねw」
「よろしく。美咲さん」
「麗奈でいいよ」
「ありがとうございます」
「梗夜さんっていくつ? いつからコスプレしてるの?」
「17歳です。コスプレははじめたばかりで、まだわからない事が多くて」
「そう。なにか困った事があったらあたしに相談してね。力になるから」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
「メアド交換しようよ♪」
「え? ええ」
「明日のイベントも来る?」
「行くと思います」
「そっか。会えるといいねw」
麗奈ちゃんはスマホを取り出し、美月さんとメアド交換の最中も、ニコニコと微笑みながら話してる。ヨシキと梗夜さんと鉢合わせてしまって、麗奈ちゃんはもっとピリピリしてるかと思ったけど、そんなことなんとも思ってないみたいで、なんだか拍子抜け。
「自己紹介が終わったとこで、おまえらと相席してもいいか? 賑やかな方が楽しいしな」
美月さんに麗奈ちゃんの隣の席を指差し、ヨシキはぼくの隣に座ろうとした。
だけど、麗奈ちゃんは立ち上がり、ぼくの手をとって言った。
「ゴメン。あたしたちもう出る所だったの。デートの途中だしね」
そう言いながら、麗奈ちゃんはぼくに目配せする。彼女に合わせなきゃいけないと思い、ぼくも急いで席を立ち、ヨシキに言った。
「じ、じゃあヨシキ。ぼくたちもう行くから」
「そうか? じゃあ、また明日」
「ミノルくぅん。麗奈まだ行きたいとこいっぱいあるんだ。もっともっと楽しもうねw」
ヨシキの事なんか眼中にないといった風に、麗奈ちゃんはぼくの腕にからみつき、これみよがしに甘えてくる。そんなふたりを見ながらヨシキは、冷やかす様に言う。
「ごちそうさま。あんまり遊び過ぎて、明日のイベント忘れんなよ」
麗奈ちゃんはふたりに愛想笑いを送ると、ぼくにぴったりと寄り添ってカフェを出る。あまりにもくっつき過ぎて、思わず彼女の足を踏んじゃったくらいだった。
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