恋とかできるわけがない 〜ヲタクがJC拾ってもなにもできない件

茉莉 佳

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6th stage

『話たい事がある』とか落ち着かない

「し、栞里ちゃん、ありがとう」

思わずお礼を言う。
『意外』といった顔でぼくを見つめて、栞里ちゃんはクスリと笑った。

「お礼言わなきゃいけないのは、あたしの方なのに。ありがとお兄ちゃん。また助けられちゃった」
「い、いや。ぼくがこんなコスプレなんてさせたから…」
「ううん。楽しかったよ。カメコさんたちがいっぱい集まってきた時は、ちょっと怖かったけど」
「ごっ、ごめん」
「でも、お兄ちゃんが助けに入ってきてくれた時は、ほんと嬉しかった」
「あれは…」

そう言って、ぼくはヨシキの方を見た。
『それもこれもヨシキのおかげだ』と言おうと思ったけど、ヤツはもう、そこにはいなかった。
まあ、いいや。
今日はヨシキにはほんとに世話になった。今度お礼を言わないとな。

「イベントはまもなく終了で~す。まだ着替えのすんでない方は、早く更衣室に入って下さ~い」

スタッフがコスプレイヤー達を急かす声がする。

「じゃあ、もう着替えておいでよ」
「うん。お兄ちゃん、ここで待っててね」
「う、うん」

そう言って振り返りながら、彼女は更衣室に姿を消す。
栞里ちゃんが出てくるのを待ってる間、ぼくはさっきの彼女の言葉を何回も何回も、思い返していた。

『嘘じゃないもん。この人、あたしのカレシだもん!』

じんわりと喜びがこみ上げてくる。
カメコたちから切り抜けるための、口から出まかせの言葉だったとしても、なんか嬉しい。
こんなデブサオタのぼくの事を、『カレシ』とか言ってくれるなんて。



「イベント、楽しかったな。またコスプレしてみたいかも」

ピンクのカットソーにミニのプリーツスカート姿に戻った栞里ちゃんは、『高瀬みくスーパーアイドル服』を抱えて更衣室から出てくると、ぼくの前で息を弾ませて言った。

「え? あんな目に遭ったのに?」
「お兄ちゃんが守ってくれたから、大丈夫だったじゃない。それに、こないだ買ってもらった服も、イベントで着たかったし」
「そうだね」
「また連れてってね」
「いいよ、、、 あ」
「え? なに?」
「いや… なんでも」

そう言えば、、、
栞里ちゃんに買ってあげたロリ服は今、ネットオークションに出品してるんだった。
すでに入札が入ってるから、今さら出品をとり止めるわけにはいかない。

「い、今着てる服も可愛いよ」
苦し紛れにぼくは言った。にこやかにしてた栞里ちゃんは、その言葉にハッとした様に、瞳を見開いた。

“PPPP PPPP PP…”

その時、栞里ちゃんのスマホが鳴った。
反射的にスマホカバーを開いた彼女は、表情を曇らせ、電話には出ずにマナーモードに切り替え、バッグに仕舞った。

、、、気になる。

そうやってシカトするなんて…
誰からの電話なんだろう?
栞里ちゃんはぼくから視線を逸らし、うつむいて言った。

「…この服。キライ」
「えっ? どうして?」
「…」

彼女はなにか考える様に黙り込んだ。
が、ふと顔を上げると、真剣な眼差しでぼくを見つめ、意を決する様に言った。

「お兄ちゃん、、、 話したい事があるの」
「話? いいよ」
「ここじゃ、話せない」
「じ、じゃあ、イベントが終わった後で、どこかのファミレスとかで…」
「お兄ちゃんがいい」
「えっ?」
「お兄ちゃんちで、話したい」
「ぼっ、ぼくんちで?!」
「ダメ?」
「いっ、いいけど…」

いったい栞里ちゃんはなに考えてんだ?
そんなに改まって、いったいなんの話があるんだ?
さっぱりわからない。

だけど、栞里ちゃんがぼくの部屋に来るのは、大歓迎だ。
今日は栞里ちゃんもたくさん話してくれたし、『この人、あたしのカレシだもん!』とか、『お兄ちゃんが守ってくれるから、大丈夫なんじゃない?』とか、好意的な発言が多いと思うし、今までの失敗から、ぼくも学んだ事は多いとはずだ。

なんだか今度こそ、うまくいきそうな気がする。
でも、、、

麗奈ちゃんの時の様に、変なオチはないだろうか、、、?
『ちょっとミノルくんとお話しとかもしたかったし』と、彼女もそう言ってぼくを呼び出したし。

それに、『うまくいく』って言っても…

14歳相手に。
8歳も年の離れた女の子に。
やっぱり恋とかできるわけがない。

つづく
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