47 / 77
6th stage
『話たい事がある』とか落ち着かない
しおりを挟む
「し、栞里ちゃん、ありがとう」
思わずお礼を言う。
『意外』といった顔でぼくを見つめて、栞里ちゃんはクスリと笑った。
「お礼言わなきゃいけないのは、あたしの方なのに。ありがとお兄ちゃん。また助けられちゃった」
「い、いや。ぼくがこんなコスプレなんてさせたから…」
「ううん。楽しかったよ。カメコさんたちがいっぱい集まってきた時は、ちょっと怖かったけど」
「ごっ、ごめん」
「でも、お兄ちゃんが助けに入ってきてくれた時は、ほんと嬉しかった」
「あれは…」
そう言って、ぼくはヨシキの方を見た。
『それもこれもヨシキのおかげだ』と言おうと思ったけど、ヤツはもう、そこにはいなかった。
まあ、いいや。
今日はヨシキにはほんとに世話になった。今度お礼を言わないとな。
「イベントはまもなく終了で~す。まだ着替えのすんでない方は、早く更衣室に入って下さ~い」
スタッフがコスプレイヤー達を急かす声がする。
「じゃあ、もう着替えておいでよ」
「うん。お兄ちゃん、ここで待っててね」
「う、うん」
そう言って振り返りながら、彼女は更衣室に姿を消す。
栞里ちゃんが出てくるのを待ってる間、ぼくはさっきの彼女の言葉を何回も何回も、思い返していた。
『嘘じゃないもん。この人、あたしのカレシだもん!』
じんわりと喜びがこみ上げてくる。
カメコたちから切り抜けるための、口から出まかせの言葉だったとしても、なんか嬉しい。
こんなデブサオタのぼくの事を、『カレシ』とか言ってくれるなんて。
「イベント、楽しかったな。またコスプレしてみたいかも」
ピンクのカットソーにミニのプリーツスカート姿に戻った栞里ちゃんは、『高瀬みくスーパーアイドル服』を抱えて更衣室から出てくると、ぼくの前で息を弾ませて言った。
「え? あんな目に遭ったのに?」
「お兄ちゃんが守ってくれたから、大丈夫だったじゃない。それに、こないだ買ってもらった服も、イベントで着たかったし」
「そうだね」
「また連れてってね」
「いいよ、、、 あ」
「え? なに?」
「いや… なんでも」
そう言えば、、、
栞里ちゃんに買ってあげたロリ服は今、ネットオークションに出品してるんだった。
すでに入札が入ってるから、今さら出品をとり止めるわけにはいかない。
「い、今着てる服も可愛いよ」
苦し紛れにぼくは言った。にこやかにしてた栞里ちゃんは、その言葉にハッとした様に、瞳を見開いた。
“PPPP PPPP PP…”
その時、栞里ちゃんのスマホが鳴った。
反射的にスマホカバーを開いた彼女は、表情を曇らせ、電話には出ずにマナーモードに切り替え、バッグに仕舞った。
、、、気になる。
そうやってシカトするなんて…
誰からの電話なんだろう?
栞里ちゃんはぼくから視線を逸らし、うつむいて言った。
「…この服。キライ」
「えっ? どうして?」
「…」
彼女はなにか考える様に黙り込んだ。
が、ふと顔を上げると、真剣な眼差しでぼくを見つめ、意を決する様に言った。
「お兄ちゃん、、、 話したい事があるの」
「話? いいよ」
「ここじゃ、話せない」
「じ、じゃあ、イベントが終わった後で、どこかのファミレスとかで…」
「お兄ちゃん家がいい」
「えっ?」
「お兄ちゃんちで、話したい」
「ぼっ、ぼくんちで?!」
「ダメ?」
「いっ、いいけど…」
いったい栞里ちゃんはなに考えてんだ?
そんなに改まって、いったいなんの話があるんだ?
さっぱりわからない。
だけど、栞里ちゃんがぼくの部屋に来るのは、大歓迎だ。
今日は栞里ちゃんもたくさん話してくれたし、『この人、あたしのカレシだもん!』とか、『お兄ちゃんが守ってくれるから、大丈夫なんじゃない?』とか、好意的な発言が多いと思うし、今までの失敗から、ぼくも学んだ事は多いとはずだ。
なんだか今度こそ、うまくいきそうな気がする。
でも、、、
麗奈ちゃんの時の様に、変なオチはないだろうか、、、?
『ちょっとミノルくんとお話しとかもしたかったし』と、彼女もそう言ってぼくを呼び出したし。
それに、『うまくいく』って言っても…
14歳相手に。
8歳も年の離れた女の子に。
やっぱり恋とかできるわけがない。
つづく
思わずお礼を言う。
『意外』といった顔でぼくを見つめて、栞里ちゃんはクスリと笑った。
「お礼言わなきゃいけないのは、あたしの方なのに。ありがとお兄ちゃん。また助けられちゃった」
「い、いや。ぼくがこんなコスプレなんてさせたから…」
「ううん。楽しかったよ。カメコさんたちがいっぱい集まってきた時は、ちょっと怖かったけど」
「ごっ、ごめん」
「でも、お兄ちゃんが助けに入ってきてくれた時は、ほんと嬉しかった」
「あれは…」
そう言って、ぼくはヨシキの方を見た。
『それもこれもヨシキのおかげだ』と言おうと思ったけど、ヤツはもう、そこにはいなかった。
まあ、いいや。
今日はヨシキにはほんとに世話になった。今度お礼を言わないとな。
「イベントはまもなく終了で~す。まだ着替えのすんでない方は、早く更衣室に入って下さ~い」
スタッフがコスプレイヤー達を急かす声がする。
「じゃあ、もう着替えておいでよ」
「うん。お兄ちゃん、ここで待っててね」
「う、うん」
そう言って振り返りながら、彼女は更衣室に姿を消す。
栞里ちゃんが出てくるのを待ってる間、ぼくはさっきの彼女の言葉を何回も何回も、思い返していた。
『嘘じゃないもん。この人、あたしのカレシだもん!』
じんわりと喜びがこみ上げてくる。
カメコたちから切り抜けるための、口から出まかせの言葉だったとしても、なんか嬉しい。
こんなデブサオタのぼくの事を、『カレシ』とか言ってくれるなんて。
「イベント、楽しかったな。またコスプレしてみたいかも」
ピンクのカットソーにミニのプリーツスカート姿に戻った栞里ちゃんは、『高瀬みくスーパーアイドル服』を抱えて更衣室から出てくると、ぼくの前で息を弾ませて言った。
「え? あんな目に遭ったのに?」
「お兄ちゃんが守ってくれたから、大丈夫だったじゃない。それに、こないだ買ってもらった服も、イベントで着たかったし」
「そうだね」
「また連れてってね」
「いいよ、、、 あ」
「え? なに?」
「いや… なんでも」
そう言えば、、、
栞里ちゃんに買ってあげたロリ服は今、ネットオークションに出品してるんだった。
すでに入札が入ってるから、今さら出品をとり止めるわけにはいかない。
「い、今着てる服も可愛いよ」
苦し紛れにぼくは言った。にこやかにしてた栞里ちゃんは、その言葉にハッとした様に、瞳を見開いた。
“PPPP PPPP PP…”
その時、栞里ちゃんのスマホが鳴った。
反射的にスマホカバーを開いた彼女は、表情を曇らせ、電話には出ずにマナーモードに切り替え、バッグに仕舞った。
、、、気になる。
そうやってシカトするなんて…
誰からの電話なんだろう?
栞里ちゃんはぼくから視線を逸らし、うつむいて言った。
「…この服。キライ」
「えっ? どうして?」
「…」
彼女はなにか考える様に黙り込んだ。
が、ふと顔を上げると、真剣な眼差しでぼくを見つめ、意を決する様に言った。
「お兄ちゃん、、、 話したい事があるの」
「話? いいよ」
「ここじゃ、話せない」
「じ、じゃあ、イベントが終わった後で、どこかのファミレスとかで…」
「お兄ちゃん家がいい」
「えっ?」
「お兄ちゃんちで、話したい」
「ぼっ、ぼくんちで?!」
「ダメ?」
「いっ、いいけど…」
いったい栞里ちゃんはなに考えてんだ?
そんなに改まって、いったいなんの話があるんだ?
さっぱりわからない。
だけど、栞里ちゃんがぼくの部屋に来るのは、大歓迎だ。
今日は栞里ちゃんもたくさん話してくれたし、『この人、あたしのカレシだもん!』とか、『お兄ちゃんが守ってくれるから、大丈夫なんじゃない?』とか、好意的な発言が多いと思うし、今までの失敗から、ぼくも学んだ事は多いとはずだ。
なんだか今度こそ、うまくいきそうな気がする。
でも、、、
麗奈ちゃんの時の様に、変なオチはないだろうか、、、?
『ちょっとミノルくんとお話しとかもしたかったし』と、彼女もそう言ってぼくを呼び出したし。
それに、『うまくいく』って言っても…
14歳相手に。
8歳も年の離れた女の子に。
やっぱり恋とかできるわけがない。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる