59 / 77
9th stage
美少女の流す涙は汚くなんかない
しおりを挟む
「うん。お兄ちゃんは、そうじゃなかった。ずっと優しかった。
あたしの事ちゃんと考えてくれて、エッチしようとはしなかった。それがすっごく嬉しかったの」
「え?」
「この人、『他の男とは違うな』って、思ったの」
「…」
「あたし、バカだった。
お兄ちゃんと原宿で別れて、なんだかムシャクシャしてて、他の男に拾われて、ホテル行って、それが自分の事しか考えてない最低の自己中男で、、、 その時やっとはじめて、お兄ちゃんのいい所に気がついた」
「…」
ぼくを見つめる栞里ちゃんの瞳から、涙が一粒、こぼれ落ちた。
思いを巡らす様に黙ってた彼女は、唇を震わせながら、ようやくひと言、つぶやいた。
「…戻りたい」
「え?」
「家出する前に戻って、もう一度、やり直したい」
「…」
「あたし… バカだった」
「…」
「ビッチになんか、なるんじゃなかった」
「…」
「汚れたくなかった」
「…」
「綺麗なからだで、お兄ちゃんと出会いたかった」
「…」
「お兄ちゃんに、あたしのバージン、あげたかった」
「…」
「……」
栞里ちゃんの瞳からは、どんどん涙が溢れてきて、それ以上言葉をつなげられない。
ぼくも感激で喉が詰まって、なにも言えない。
『バージンあげたい』なんて、、、
なんて嬉しい言葉なんだろう。
そりゃ、栞里ちゃんはもうバージンじゃない。
だけど、そんなのはもう、どうでもいい。
その気持ちだけで、じゅうぶんすぎる。
思わず栞里ちゃんを抱きしめる。
両腕のなかにすっぽりと収まった、柔らかくて暖かなからだを感じながら、何回も繰り返す。
「汚れてなんかない! 汚れてなんかない! 栞里ちゃんは汚れてなんかないよ! すっごい綺麗だよ! 今の栞里ちゃんが、ぼくは好きなんだよ!! ちっとも汚なくなんかないよ!!!」
家出もせず、バージンのままの栞里ちゃんと、どこかで出会ったとしたら、、、
ぼくは彼女の事を『すっごい可愛い子だなぁ』と思って振り向くだろうけど、きっと彼女はぼくの存在さえ気づかず、ただすれ違うだけだったに違いない。
そしてぼくも、栞里ちゃんの事はすぐに忘れて、今までと同じヲタ生活に戻っていく事だろう。
過去があるから、人は現在がある。
どんな過去を栞里ちゃんが背負ってたとしても、その道程があるからこそ、今、こうして彼女が、ぼくの腕のなかにいるんだ!
何百万分の一かの選択肢の末に、こうして栞里ちゃんと出会えたんだ。
それは、ギャルゲーよりも選択肢が多いのに、攻略本もマニュアルもないゲーム。
なのにこうして、恋ができた!
だからぼくは、栞里ちゃんの過去を否定したりできないし、むしろ感謝しなきゃいけないんだ!
ふたりはベッドの上で、いつまでも抱き合ってた。
もちろんぼくは、栞里ちゃんをこうやって抱きしめてても、エッチに持ち込むってわけじゃなかった。
そりゃあ、こんなに可愛くて、華奢で、それでいて、ふくよかな触り心地で、しかもすっごくいい匂いを漂わせてて、その香りが本能中枢をグジャグジャにかき回してるのに、ムラムラこないわけがない。
だけど、『彼女を守る』とか宣言しちゃって、彼女からも『エッチしようとしなかったのが嬉しい』なんて言われてしまい、なんだかタイミングを逃したみたいだ。
栞里ちゃんの言う様に、やっぱり男って、エッチの事しか考えてないのかもしれない。
ぼくだって、例外じゃない、、、orz
やっぱりぼくって、間抜けでヘタレ。
まあ、こうして栞里ちゃんとつきあえたんだから、それでもいいか、、、
「お兄ちゃん。ずっと、ここにいさせてくれる?」
しばらくして顔を上げ、涙で赤く腫らした目で見つめながら、栞里ちゃんは含む様な笑みを浮かべ、ぼくに訊いた。
「あたし、お兄ちゃんのお嫁さんになる。だから一生、ここにいていい?」
「ぇ、、、 えええ~~~~っ???」
「ダメ?」
「そっ、そんな事ないけど、、、」
いきなりなんて事言うんだ!
つづく
あたしの事ちゃんと考えてくれて、エッチしようとはしなかった。それがすっごく嬉しかったの」
「え?」
「この人、『他の男とは違うな』って、思ったの」
「…」
「あたし、バカだった。
お兄ちゃんと原宿で別れて、なんだかムシャクシャしてて、他の男に拾われて、ホテル行って、それが自分の事しか考えてない最低の自己中男で、、、 その時やっとはじめて、お兄ちゃんのいい所に気がついた」
「…」
ぼくを見つめる栞里ちゃんの瞳から、涙が一粒、こぼれ落ちた。
思いを巡らす様に黙ってた彼女は、唇を震わせながら、ようやくひと言、つぶやいた。
「…戻りたい」
「え?」
「家出する前に戻って、もう一度、やり直したい」
「…」
「あたし… バカだった」
「…」
「ビッチになんか、なるんじゃなかった」
「…」
「汚れたくなかった」
「…」
「綺麗なからだで、お兄ちゃんと出会いたかった」
「…」
「お兄ちゃんに、あたしのバージン、あげたかった」
「…」
「……」
栞里ちゃんの瞳からは、どんどん涙が溢れてきて、それ以上言葉をつなげられない。
ぼくも感激で喉が詰まって、なにも言えない。
『バージンあげたい』なんて、、、
なんて嬉しい言葉なんだろう。
そりゃ、栞里ちゃんはもうバージンじゃない。
だけど、そんなのはもう、どうでもいい。
その気持ちだけで、じゅうぶんすぎる。
思わず栞里ちゃんを抱きしめる。
両腕のなかにすっぽりと収まった、柔らかくて暖かなからだを感じながら、何回も繰り返す。
「汚れてなんかない! 汚れてなんかない! 栞里ちゃんは汚れてなんかないよ! すっごい綺麗だよ! 今の栞里ちゃんが、ぼくは好きなんだよ!! ちっとも汚なくなんかないよ!!!」
家出もせず、バージンのままの栞里ちゃんと、どこかで出会ったとしたら、、、
ぼくは彼女の事を『すっごい可愛い子だなぁ』と思って振り向くだろうけど、きっと彼女はぼくの存在さえ気づかず、ただすれ違うだけだったに違いない。
そしてぼくも、栞里ちゃんの事はすぐに忘れて、今までと同じヲタ生活に戻っていく事だろう。
過去があるから、人は現在がある。
どんな過去を栞里ちゃんが背負ってたとしても、その道程があるからこそ、今、こうして彼女が、ぼくの腕のなかにいるんだ!
何百万分の一かの選択肢の末に、こうして栞里ちゃんと出会えたんだ。
それは、ギャルゲーよりも選択肢が多いのに、攻略本もマニュアルもないゲーム。
なのにこうして、恋ができた!
だからぼくは、栞里ちゃんの過去を否定したりできないし、むしろ感謝しなきゃいけないんだ!
ふたりはベッドの上で、いつまでも抱き合ってた。
もちろんぼくは、栞里ちゃんをこうやって抱きしめてても、エッチに持ち込むってわけじゃなかった。
そりゃあ、こんなに可愛くて、華奢で、それでいて、ふくよかな触り心地で、しかもすっごくいい匂いを漂わせてて、その香りが本能中枢をグジャグジャにかき回してるのに、ムラムラこないわけがない。
だけど、『彼女を守る』とか宣言しちゃって、彼女からも『エッチしようとしなかったのが嬉しい』なんて言われてしまい、なんだかタイミングを逃したみたいだ。
栞里ちゃんの言う様に、やっぱり男って、エッチの事しか考えてないのかもしれない。
ぼくだって、例外じゃない、、、orz
やっぱりぼくって、間抜けでヘタレ。
まあ、こうして栞里ちゃんとつきあえたんだから、それでもいいか、、、
「お兄ちゃん。ずっと、ここにいさせてくれる?」
しばらくして顔を上げ、涙で赤く腫らした目で見つめながら、栞里ちゃんは含む様な笑みを浮かべ、ぼくに訊いた。
「あたし、お兄ちゃんのお嫁さんになる。だから一生、ここにいていい?」
「ぇ、、、 えええ~~~~っ???」
「ダメ?」
「そっ、そんな事ないけど、、、」
いきなりなんて事言うんだ!
つづく
0
あなたにおすすめの小説
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
神は激怒した
まる
ファンタジー
おのれえええぇえぇぇぇ……人間どもめぇ。
めっちゃ面倒な事ばっかりして余計な仕事を増やしてくる人間に神様がキレました。
ふわっとした設定ですのでご了承下さいm(_ _)m
世界の設定やら背景はふわふわですので、ん?と思う部分が出てくるかもしれませんがいい感じに個人で補完していただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる