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「浮気はわたしの方だったのかもしれません」
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「わたし、みっこさんに謝らなくちゃいけないことがあるんです」
「謝る?」
「レッスンを増やしてもらったのも、モデル事務所に入れてもらったのも、『コスプレでバカにされたくない』って気持ちがあって。
うまくなれるならって打算で、みっこさんの好意を利用してしまったんです」
「そっか…」
「申し訳ありません」
「でも結果的に、凛子ちゃんのスキルは短期間に大きくアップしたし、レッスンもモデルのお仕事も、がんばれたでしょ」
「それはそうですけど、、」
「不純なモチベーションでもいいわよ。結果が伴っていればね」
「す、すみません」
「それに… あたしも凛子ちゃんに、謝らなきゃいけないこともあるし、おあいこね」
「え? みっこさんが? なにをですか?」
「まあ… それは機会があったら話すわよ。それより続き、聞かせて」
「でも、気になります。いったいなにを謝まるって…」
「つまり凛子ちゃんは、自分が今してることが、本当に正しいと思ってやってることなのか、わからなくなってきたってわけね」
質問を遮るように、みっこさんは強引に話題を変えた。しかたなくわたしも、自分の話に戻る。
「ええ、そうなんです。そうやって、大きな迷いを抱えているうちに、モデルやってることやヨシキさんと無断外泊したこと、モデル事務所の許諾証偽造の件なんかが親バレして、さらに追いつめられてしまって、、、」
「それは凛子ちゃんに、お灸を据える意味もあったんだけどね」
「わかっています。あれからわたしも少しは心を入れ替えて、自分の目標も見えてきたと思ったんですが、まだまだ迷いが多くって。ヨシキさんには意地ばかり張って、自分を見失って」
「ヨシキくんとは、卒業するまでは恋愛禁止ってことにしたんでしょ?」
「ええ。条件付きでつきあいは許してもらえましたけど、わたしは受験勉強とモデルの掛け持ちでいっぱいいっぱいで、ヨシキさんのことまで考える余裕がなくなってて。
わたし、絶対にモデルになりたいし、そのためには志望校に必ず受からなきゃって思うと、なんか焦ってきて。たまにヨシキさんと会ってもケンカばかりでギスギスして」
「そしたらヨシキくん、桃李さんっていう癒し系の女の子と、ちゃっかり浮気してたのね」
「はい、、、
いえ。もしかしたら違うかも。
その子とは、わたしとつきあいはじめる前から関係があったんだから、浮気はわたしの方だったのかもしれません」
「浮気、かぁ… せつないなぁ、そういうの」
大きくため息をついたみっこさんは、揺らめく暖炉の炎をじっとみつめる。
まるで、くすぶっていた過去の記憶に火がついたみたい。
しばらく口を噤んでいた彼女は、顔を上げて言った。
「まったく、男って勝手よね。
凛子ちゃんといても癒されないから、その子の方に走っちゃうなんて」
「そうなんですけど、、、
今考えれば、ヨシキさんに意地張ってコスプレ頑張ったりしなきゃ、わたしたちの仲も、おかしくならなかったのかもしれません」
「ターニングポイント。かぁ…」
「ターニングポイント?」
「恋愛ってそうやって、どこかでターニングポイントを迎えるものかもしれない。
リアルではそれがいつなのか、わからない。
だけど、時が経って振り返ってみれば、『あの時がそうだったのかもしれない』って気がつくの。そのときにはもう、ふたり別々の道を歩んでて、もとには戻れない。なんか、哀しいわね」
「…」
「ふふ。高校の頃、つきあってた彼の口癖だったのよ。それ」
「みっこさんの、高校時代の彼ですか」
「ごめんね。こんな運命論みたいな話ししちゃって。でも、今の凛子ちゃんって、高校生の頃のあたしみたいなんだもの。なんか、感情移入しちゃった」
「みっこさんも高校の頃は、恋愛や進路で悩んだりしたんですか?」
「もがき苦しんでたわよ」
そう言ってみっこさんは、ニッコリ微笑んだ。
つづく
「謝る?」
「レッスンを増やしてもらったのも、モデル事務所に入れてもらったのも、『コスプレでバカにされたくない』って気持ちがあって。
うまくなれるならって打算で、みっこさんの好意を利用してしまったんです」
「そっか…」
「申し訳ありません」
「でも結果的に、凛子ちゃんのスキルは短期間に大きくアップしたし、レッスンもモデルのお仕事も、がんばれたでしょ」
「それはそうですけど、、」
「不純なモチベーションでもいいわよ。結果が伴っていればね」
「す、すみません」
「それに… あたしも凛子ちゃんに、謝らなきゃいけないこともあるし、おあいこね」
「え? みっこさんが? なにをですか?」
「まあ… それは機会があったら話すわよ。それより続き、聞かせて」
「でも、気になります。いったいなにを謝まるって…」
「つまり凛子ちゃんは、自分が今してることが、本当に正しいと思ってやってることなのか、わからなくなってきたってわけね」
質問を遮るように、みっこさんは強引に話題を変えた。しかたなくわたしも、自分の話に戻る。
「ええ、そうなんです。そうやって、大きな迷いを抱えているうちに、モデルやってることやヨシキさんと無断外泊したこと、モデル事務所の許諾証偽造の件なんかが親バレして、さらに追いつめられてしまって、、、」
「それは凛子ちゃんに、お灸を据える意味もあったんだけどね」
「わかっています。あれからわたしも少しは心を入れ替えて、自分の目標も見えてきたと思ったんですが、まだまだ迷いが多くって。ヨシキさんには意地ばかり張って、自分を見失って」
「ヨシキくんとは、卒業するまでは恋愛禁止ってことにしたんでしょ?」
「ええ。条件付きでつきあいは許してもらえましたけど、わたしは受験勉強とモデルの掛け持ちでいっぱいいっぱいで、ヨシキさんのことまで考える余裕がなくなってて。
わたし、絶対にモデルになりたいし、そのためには志望校に必ず受からなきゃって思うと、なんか焦ってきて。たまにヨシキさんと会ってもケンカばかりでギスギスして」
「そしたらヨシキくん、桃李さんっていう癒し系の女の子と、ちゃっかり浮気してたのね」
「はい、、、
いえ。もしかしたら違うかも。
その子とは、わたしとつきあいはじめる前から関係があったんだから、浮気はわたしの方だったのかもしれません」
「浮気、かぁ… せつないなぁ、そういうの」
大きくため息をついたみっこさんは、揺らめく暖炉の炎をじっとみつめる。
まるで、くすぶっていた過去の記憶に火がついたみたい。
しばらく口を噤んでいた彼女は、顔を上げて言った。
「まったく、男って勝手よね。
凛子ちゃんといても癒されないから、その子の方に走っちゃうなんて」
「そうなんですけど、、、
今考えれば、ヨシキさんに意地張ってコスプレ頑張ったりしなきゃ、わたしたちの仲も、おかしくならなかったのかもしれません」
「ターニングポイント。かぁ…」
「ターニングポイント?」
「恋愛ってそうやって、どこかでターニングポイントを迎えるものかもしれない。
リアルではそれがいつなのか、わからない。
だけど、時が経って振り返ってみれば、『あの時がそうだったのかもしれない』って気がつくの。そのときにはもう、ふたり別々の道を歩んでて、もとには戻れない。なんか、哀しいわね」
「…」
「ふふ。高校の頃、つきあってた彼の口癖だったのよ。それ」
「みっこさんの、高校時代の彼ですか」
「ごめんね。こんな運命論みたいな話ししちゃって。でも、今の凛子ちゃんって、高校生の頃のあたしみたいなんだもの。なんか、感情移入しちゃった」
「みっこさんも高校の頃は、恋愛や進路で悩んだりしたんですか?」
「もがき苦しんでたわよ」
そう言ってみっこさんは、ニッコリ微笑んだ。
つづく
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