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05 Love Affair
Love Affair 10
「え? どういうこと?」
「恋と愛って、相反する感情だろ。
恋は、相手を独占して、束縛したがる感情だけど、愛は受容して、見返りを求めない。
すごい矛盾してると思わないか?」
「確かに、ほとんど正反対の感情かも」
「だろ。縛りつけて自分のモノにしたいくらいに欲している相手を、その反面で自由にさせてやりたいなんて、葛藤しか生まないじゃないか」
「そうよね~。恋愛って、葛藤の連続だと思うわ」
「その葛藤を乗り切るのって、すごいパワーがいるよな」
「恋って、元気をもらえることもあるけど、反対に、すっごくめんどくさくて、投げ出してしまいたくなることもあるよね。ちょっとしたことで、感情がグラグラ揺らいじゃうというか」
「本能的な欲求を恋。理性を愛とすれば、そのバランスが、乱れる感じだよな」
「右脳とか左脳とかいうじゃない。人間の大脳にも、部位によって役割が違ってて、恋愛状態になると、そのバランスがうまくとれなくなるのかもしれないわね」
「人間の脳は三層構造になっていて、生命維持、感情や記憶、創造力を司る場所が、それぞれ違ってるらしいよ。
『愛』という感情は大脳新皮質の発達した人間独特の理性的な感情で、愛することこそが人が人たる所以かもな。
本能の欲求に流されるだけじゃ、人間的な恋愛とはいえない。
だったらぼくも、恋愛の葛藤を克服しながら、いちばん愛する人と初体験するのを目指すよ。
それこそが愛と恋の両立で、本能の欲求に安易に妥協してドーテー捨てるより、得られる幸福度が高いと思うし」
「ふうん。なんかすごい論理の飛躍」
「はは。自分で言ってて恥ずかしいかも」
「でも、思春期の男子って、『木の節穴にも入れたい年頃』なんていうけど、川島君ってすごい理論的で冷静に見てるんだ」
「いや。そんな葛藤に揺さぶられて、翻弄されてるからこそ、恋愛ってヤツの本質を知りたいだけだよ。
だけどさつきちゃんも、『木の節穴にも入れたい年頃』って、ずいぶん下品な言葉知ってるなぁ。さすが小説家志望」
「ごっ、ごめんなさい。わたし、調子に乗っちゃって」
「いいよいいよ。さつきちゃんはもう、恋愛小説通り越して、ポルノ小説書けるんじゃないか?」
「んもぅ。川島君ったら」
『恋と愛は、相反する感情』か…
理屈っぽいけど、彼の言葉が素直に心に溶け込んでくる。
「そうよね。
人の感情が大脳の別々の場所で生まれてるのなら、それが対立するってことも、ありえるよね。
好きな人には、その人が望むことを自由にしてほしいけど、でも、自分だけを見ててほしいって思う気持ちとか。矛盾する感情が高まると、苦しくて心が引き裂かれそうになるけど、そういうことかぁ。
『どんなに理性的な人でも、ひとたび恋に落ちれば、痴態を晒す』っていうし」
そう言いながらわたしの心の中に、好きな写真に没頭する川島君と、それを応援しながらも、蘭さんに嫉妬する気持ちが渦巻いていた。
だからかな?
つい、そんなことを訊いてしまった。
「川島君は、蘭さんを撮るのが好きなの?」
「え? あ、ああ。えみちゃんは魅力的な女の子だから」
「それって、『好き』って感情に繋がらないの?」
「そりゃ、好きだから撮るわけだけど… それはあくまで、『被写体』としてだよ。恋愛感情とは切り離してる」
「…そう、なんだ」
あの冬の日の放課後。
蘭さんが見せた瞳は、川島君を想っているものに感じられた。
川島君が蘭さんを『モデルとして撮りたい』という気持ちは、頭じゃ納得できても、自分の中の女の部分が、それに対してやっぱり不安を抱いてしまう。
それこそ、愛と恋の葛藤。
だいいち、蘭さんが川島君のことを本当に好きだとすると、今は川島君も恋愛感情を抱いてないとしても、もし彼女から強くアプローチされれば、そのうち蘭さんを好きになるかもしれない。
そんなのは嫌だ。
だけど、川島君には幸せになってもらいたい・・・
「恋ってこんなに苦しいのに、それでも、人を好きにならずにはいられないのね。なんか… 複雑」
そんな言葉が、わたしの口から自然に漏れた。
川島君になら、なんでも安心して話せてしまう。彼はなにか考えている様子だったが、少し間を置いて、訊いてきた。
「さつきちゃんは今、好きな人、いる?」
つづく
「恋と愛って、相反する感情だろ。
恋は、相手を独占して、束縛したがる感情だけど、愛は受容して、見返りを求めない。
すごい矛盾してると思わないか?」
「確かに、ほとんど正反対の感情かも」
「だろ。縛りつけて自分のモノにしたいくらいに欲している相手を、その反面で自由にさせてやりたいなんて、葛藤しか生まないじゃないか」
「そうよね~。恋愛って、葛藤の連続だと思うわ」
「その葛藤を乗り切るのって、すごいパワーがいるよな」
「恋って、元気をもらえることもあるけど、反対に、すっごくめんどくさくて、投げ出してしまいたくなることもあるよね。ちょっとしたことで、感情がグラグラ揺らいじゃうというか」
「本能的な欲求を恋。理性を愛とすれば、そのバランスが、乱れる感じだよな」
「右脳とか左脳とかいうじゃない。人間の大脳にも、部位によって役割が違ってて、恋愛状態になると、そのバランスがうまくとれなくなるのかもしれないわね」
「人間の脳は三層構造になっていて、生命維持、感情や記憶、創造力を司る場所が、それぞれ違ってるらしいよ。
『愛』という感情は大脳新皮質の発達した人間独特の理性的な感情で、愛することこそが人が人たる所以かもな。
本能の欲求に流されるだけじゃ、人間的な恋愛とはいえない。
だったらぼくも、恋愛の葛藤を克服しながら、いちばん愛する人と初体験するのを目指すよ。
それこそが愛と恋の両立で、本能の欲求に安易に妥協してドーテー捨てるより、得られる幸福度が高いと思うし」
「ふうん。なんかすごい論理の飛躍」
「はは。自分で言ってて恥ずかしいかも」
「でも、思春期の男子って、『木の節穴にも入れたい年頃』なんていうけど、川島君ってすごい理論的で冷静に見てるんだ」
「いや。そんな葛藤に揺さぶられて、翻弄されてるからこそ、恋愛ってヤツの本質を知りたいだけだよ。
だけどさつきちゃんも、『木の節穴にも入れたい年頃』って、ずいぶん下品な言葉知ってるなぁ。さすが小説家志望」
「ごっ、ごめんなさい。わたし、調子に乗っちゃって」
「いいよいいよ。さつきちゃんはもう、恋愛小説通り越して、ポルノ小説書けるんじゃないか?」
「んもぅ。川島君ったら」
『恋と愛は、相反する感情』か…
理屈っぽいけど、彼の言葉が素直に心に溶け込んでくる。
「そうよね。
人の感情が大脳の別々の場所で生まれてるのなら、それが対立するってことも、ありえるよね。
好きな人には、その人が望むことを自由にしてほしいけど、でも、自分だけを見ててほしいって思う気持ちとか。矛盾する感情が高まると、苦しくて心が引き裂かれそうになるけど、そういうことかぁ。
『どんなに理性的な人でも、ひとたび恋に落ちれば、痴態を晒す』っていうし」
そう言いながらわたしの心の中に、好きな写真に没頭する川島君と、それを応援しながらも、蘭さんに嫉妬する気持ちが渦巻いていた。
だからかな?
つい、そんなことを訊いてしまった。
「川島君は、蘭さんを撮るのが好きなの?」
「え? あ、ああ。えみちゃんは魅力的な女の子だから」
「それって、『好き』って感情に繋がらないの?」
「そりゃ、好きだから撮るわけだけど… それはあくまで、『被写体』としてだよ。恋愛感情とは切り離してる」
「…そう、なんだ」
あの冬の日の放課後。
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川島君が蘭さんを『モデルとして撮りたい』という気持ちは、頭じゃ納得できても、自分の中の女の部分が、それに対してやっぱり不安を抱いてしまう。
それこそ、愛と恋の葛藤。
だいいち、蘭さんが川島君のことを本当に好きだとすると、今は川島君も恋愛感情を抱いてないとしても、もし彼女から強くアプローチされれば、そのうち蘭さんを好きになるかもしれない。
そんなのは嫌だ。
だけど、川島君には幸せになってもらいたい・・・
「恋ってこんなに苦しいのに、それでも、人を好きにならずにはいられないのね。なんか… 複雑」
そんな言葉が、わたしの口から自然に漏れた。
川島君になら、なんでも安心して話せてしまう。彼はなにか考えている様子だったが、少し間を置いて、訊いてきた。
「さつきちゃんは今、好きな人、いる?」
つづく
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