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05 Love Affair
Love Affair 11
「さつきちゃんは今、好きな人とか、いる?」
「え、わたし?」
とたんに頬が熱くなり、心臓の鼓動が速くなってくる。
好きな人から直接、そんなこと聞かれるなんて。
「わたし、そりゃ、い、いるけど…」
「…そうなんだ」
「でも、やっぱり、自分が傷つくのが怖いのかなぁ。『見てるだけでいい』とか『友達のままでいい』とか、つい受け身になってしまうのよ」
『友達のままでいいっていうのは、さつきの臆病のいいわけだと思う』
そんなみっこの言葉を、つい、思い出す。
「友達からも指摘されたことなんだけど、傷つくのを怖がっているうちは、本当の恋はできないのかもしれない」
「…そうだな。『失恋は人生最大の危機』っていうし。傷つくことを恐れずに相手に踏み込んでいくって、すごく勇気のいることだな」
そう言った川島君を、わたしは思わず見つめた。
彼もわたしを見ている。
じっとわたしを見つめる瞳。
そらせない。
その瞳の中に、吸い込まれてしまいそうな錯覚さえおぼえる。
それは、すべてを許してくれそうな、優しさをたたえていた。
わたし、今が勇気を出すときなの?
川島君の心の扉は、今、わたしに向かって開かれている気がする。
そのなかに、まっすぐ飛び込んでいっていいの?
「か、川島君こそ、好きな人。いるの?」
語尾が震える。
手にしている紅茶の冷めたカップが、かすかにカチカチと鳴って波紋を作っている。
「ぼく? ぼくが好きな人は…」
川島君の瞳に一瞬、躊躇いの色がよぎった。
しまった!
こんなこと、訊くんじゃなかった。
わたしの幻想は、またたく間に崩れていく。
『心の扉が開かれている』なんて、ただのわたしの思い込み…
『川島君になら、なんでも安心して話せそう』なんてのはただの錯覚で、ふたりの間にはやっぱり、越えられない壁がある。
もしかして川島君は、わたしが彼を好きなのをもう気づいていて、でもその気持ちに応えられないから、どう返事しようかと迷っているのかもしれない。
ふたりは、ただの友達。
これ以上、川島君の世界に入り込むのは、お互いのためによくない。
蘭さんみたいな魅力も色気も、わたしにはないし、ぽっちゃりしててあんなにスタイルよくないし。
容姿からして、川島君の好みじゃないし、恋人なんて望むのが、間違い。
「あ。無理に言わなくていいの。でも頑張ってね。わたし、応援してるから」
川島君の返事も待たず、わたしは明るく軽く、その場を取り繕った。
「…はは。ありがとう。じゃあ、頑張ってみようかな」
そういって、川島君は力なく微笑んだ。
眠れない。
さっきまでのいろんな会話が、頭の中を何度もぐるぐるかけ回って、スパークしている。
川島君といろんな話ができたのはいいんだけど、わたしのキャパをオーバーフローしちゃったみたいで、溢れだした彼に関する情報が渦を巻いて押し寄せて、わたしを翻弄している。何度も寝返りを打ちながら、思いあまってわたしはみっこに電話した。
もう夜中の12時を過ぎているというのに、みっこはわたしの話を真剣に聞いてくれた。
「さつきって、ドジよね~」
「え? なにが?」
「その流れだったら絶対、あなたに告白しようとしたのよ。なんで引いちゃったのよ。せっかく大チャンスだったのに」
「そ、そんな…」
「チャンスの女神は前髪しかないのよ。次こそは絶対掴んでよね」
彼女と話していると、勇気がわいてくる。
『次のチャンスに、川島君に自分の思いを告げる』っていう決心がついた頃には、時計の針はもう2時を回っていた。
つづく
「え、わたし?」
とたんに頬が熱くなり、心臓の鼓動が速くなってくる。
好きな人から直接、そんなこと聞かれるなんて。
「わたし、そりゃ、い、いるけど…」
「…そうなんだ」
「でも、やっぱり、自分が傷つくのが怖いのかなぁ。『見てるだけでいい』とか『友達のままでいい』とか、つい受け身になってしまうのよ」
『友達のままでいいっていうのは、さつきの臆病のいいわけだと思う』
そんなみっこの言葉を、つい、思い出す。
「友達からも指摘されたことなんだけど、傷つくのを怖がっているうちは、本当の恋はできないのかもしれない」
「…そうだな。『失恋は人生最大の危機』っていうし。傷つくことを恐れずに相手に踏み込んでいくって、すごく勇気のいることだな」
そう言った川島君を、わたしは思わず見つめた。
彼もわたしを見ている。
じっとわたしを見つめる瞳。
そらせない。
その瞳の中に、吸い込まれてしまいそうな錯覚さえおぼえる。
それは、すべてを許してくれそうな、優しさをたたえていた。
わたし、今が勇気を出すときなの?
川島君の心の扉は、今、わたしに向かって開かれている気がする。
そのなかに、まっすぐ飛び込んでいっていいの?
「か、川島君こそ、好きな人。いるの?」
語尾が震える。
手にしている紅茶の冷めたカップが、かすかにカチカチと鳴って波紋を作っている。
「ぼく? ぼくが好きな人は…」
川島君の瞳に一瞬、躊躇いの色がよぎった。
しまった!
こんなこと、訊くんじゃなかった。
わたしの幻想は、またたく間に崩れていく。
『心の扉が開かれている』なんて、ただのわたしの思い込み…
『川島君になら、なんでも安心して話せそう』なんてのはただの錯覚で、ふたりの間にはやっぱり、越えられない壁がある。
もしかして川島君は、わたしが彼を好きなのをもう気づいていて、でもその気持ちに応えられないから、どう返事しようかと迷っているのかもしれない。
ふたりは、ただの友達。
これ以上、川島君の世界に入り込むのは、お互いのためによくない。
蘭さんみたいな魅力も色気も、わたしにはないし、ぽっちゃりしててあんなにスタイルよくないし。
容姿からして、川島君の好みじゃないし、恋人なんて望むのが、間違い。
「あ。無理に言わなくていいの。でも頑張ってね。わたし、応援してるから」
川島君の返事も待たず、わたしは明るく軽く、その場を取り繕った。
「…はは。ありがとう。じゃあ、頑張ってみようかな」
そういって、川島君は力なく微笑んだ。
眠れない。
さっきまでのいろんな会話が、頭の中を何度もぐるぐるかけ回って、スパークしている。
川島君といろんな話ができたのはいいんだけど、わたしのキャパをオーバーフローしちゃったみたいで、溢れだした彼に関する情報が渦を巻いて押し寄せて、わたしを翻弄している。何度も寝返りを打ちながら、思いあまってわたしはみっこに電話した。
もう夜中の12時を過ぎているというのに、みっこはわたしの話を真剣に聞いてくれた。
「さつきって、ドジよね~」
「え? なにが?」
「その流れだったら絶対、あなたに告白しようとしたのよ。なんで引いちゃったのよ。せっかく大チャンスだったのに」
「そ、そんな…」
「チャンスの女神は前髪しかないのよ。次こそは絶対掴んでよね」
彼女と話していると、勇気がわいてくる。
『次のチャンスに、川島君に自分の思いを告げる』っていう決心がついた頃には、時計の針はもう2時を回っていた。
つづく
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