264 / 300
19 12月のダイアリー
12月のダイアリー 11月15日
しおりを挟む
11月15日(金) 晴れ
『もうなにも感じない』って…
そんなの嘘。
自分の日記に嘘を書かなくても…
そんな強がりを書かなくても…
どうかしてる。
本当は…
日が経つにつれ、川島君やみっこともう会えない苦しみ、虚しさが、どんどん増してくる。
今になって、すごく後悔している。
わたし、なんてバカなこと、しちゃったんだろう。
みっこにとって、あんなショックな事件があった直後、身も心もだれかに頼りたくなるのは、当たり前のこと。
ましてや、ずっと好きだった川島君が助けてにきてくれたのだから、みっこはほんとに嬉しかったに違いない。
今、冷静になって振り返ってみると、例え川島君を好きになっても、みっこはわたしとの友情を第一に考えてくれていた気がする。
彼女はそれまで、完璧と言っていいくらい、川島君に対する想いを抑え込んでいた。
三人で由布院にバカンスに行ったときだって、みっこはわたしと川島君の邪魔にならないよう、気を遣っていたし、東京や長崎で、川島君と何度もふたりっきりで会っていても、彼に自分の気持ちをまったく気づかせなかったみたいだった。
わたしが川島君とケンカしているときでさえも、いろんな話をしてくれて、さりげなく仲をとりもってくれたくらいだ。
そうやって川島君への想いを抑えながらも、やっぱり溢れてくる気持ちはどうしようもなかったみたいで、時々わたしに、自分の恋心の断片を、気づかれないように打ち明けて、気を紛らしていたんだと思う。
『好きになっちゃいけない人』を好きになり、友情と恋愛の板挟みで、みっこはとっても苦しんでいたのかもしれない。
そんなみっこが、あれほどの事件でうっかり見せた失態を、わたしは執拗に責めすぎて、追い詰めてしまった。
彼女の友情は、本物だった。
『嘘で塗り固めた友情』、なんて罵ってしまったけど、その嘘は、わたしとの友情を守るための、ギリギリの選択だったのだと思う。
あの夜。
みっこが『藤村さんのことが好き』って、わたしに嘘をついた夜…
わたしがあげたケーキを食べながら、みっこは大粒の涙をポロポロとこぼして、
『あなたのこと、一生忘れない。一生親友でいたいから』
って、うわごとのようにつぶやいていた。
それはきっと、
『親友の恋人を好きになってしまった』
『親友のわたしに嘘をついてしまった』
という、二重の罪悪感で、心が押し潰されそうになっていて、そんな重荷に必死で立ち向かおうとしていたからこそ、出た言葉なんだと思う。
すべての真実が明らかになった今、あのときの森田美湖の言葉と涙の意味は、そうとしか思えない。
今日は小説講座の日。
わたしは勇気を出して九州文化センターに行った。
川島君に会ったら、みっこのようにニッコリ微笑みかけて、
『こないだはごめんね。もう恋人に戻れなくても、友達でもいいから、これからも繋がっていてね』
って、明るく言うつもりだった。
1階のロビーに入りかけたところで、遠くに川島君の後ろ姿を見つけた。
その瞬間、からだが凍りつき、足に根が生えたように動かなくなり、そのまま立ちすくんで一歩も先に進めなかった。
無意識のうちに、彼に見つからないよう、じりじりと下がっていき、気がつけばわたしは、地下街を彷徨っていた。
もう、川島君の顔をまともに見ることは、できない。
小説家になりたかった。
でも、小説講座には、もう行けない。
わたしの夢も、もう諦めるしかないのかもしれない。
つづく
『もうなにも感じない』って…
そんなの嘘。
自分の日記に嘘を書かなくても…
そんな強がりを書かなくても…
どうかしてる。
本当は…
日が経つにつれ、川島君やみっこともう会えない苦しみ、虚しさが、どんどん増してくる。
今になって、すごく後悔している。
わたし、なんてバカなこと、しちゃったんだろう。
みっこにとって、あんなショックな事件があった直後、身も心もだれかに頼りたくなるのは、当たり前のこと。
ましてや、ずっと好きだった川島君が助けてにきてくれたのだから、みっこはほんとに嬉しかったに違いない。
今、冷静になって振り返ってみると、例え川島君を好きになっても、みっこはわたしとの友情を第一に考えてくれていた気がする。
彼女はそれまで、完璧と言っていいくらい、川島君に対する想いを抑え込んでいた。
三人で由布院にバカンスに行ったときだって、みっこはわたしと川島君の邪魔にならないよう、気を遣っていたし、東京や長崎で、川島君と何度もふたりっきりで会っていても、彼に自分の気持ちをまったく気づかせなかったみたいだった。
わたしが川島君とケンカしているときでさえも、いろんな話をしてくれて、さりげなく仲をとりもってくれたくらいだ。
そうやって川島君への想いを抑えながらも、やっぱり溢れてくる気持ちはどうしようもなかったみたいで、時々わたしに、自分の恋心の断片を、気づかれないように打ち明けて、気を紛らしていたんだと思う。
『好きになっちゃいけない人』を好きになり、友情と恋愛の板挟みで、みっこはとっても苦しんでいたのかもしれない。
そんなみっこが、あれほどの事件でうっかり見せた失態を、わたしは執拗に責めすぎて、追い詰めてしまった。
彼女の友情は、本物だった。
『嘘で塗り固めた友情』、なんて罵ってしまったけど、その嘘は、わたしとの友情を守るための、ギリギリの選択だったのだと思う。
あの夜。
みっこが『藤村さんのことが好き』って、わたしに嘘をついた夜…
わたしがあげたケーキを食べながら、みっこは大粒の涙をポロポロとこぼして、
『あなたのこと、一生忘れない。一生親友でいたいから』
って、うわごとのようにつぶやいていた。
それはきっと、
『親友の恋人を好きになってしまった』
『親友のわたしに嘘をついてしまった』
という、二重の罪悪感で、心が押し潰されそうになっていて、そんな重荷に必死で立ち向かおうとしていたからこそ、出た言葉なんだと思う。
すべての真実が明らかになった今、あのときの森田美湖の言葉と涙の意味は、そうとしか思えない。
今日は小説講座の日。
わたしは勇気を出して九州文化センターに行った。
川島君に会ったら、みっこのようにニッコリ微笑みかけて、
『こないだはごめんね。もう恋人に戻れなくても、友達でもいいから、これからも繋がっていてね』
って、明るく言うつもりだった。
1階のロビーに入りかけたところで、遠くに川島君の後ろ姿を見つけた。
その瞬間、からだが凍りつき、足に根が生えたように動かなくなり、そのまま立ちすくんで一歩も先に進めなかった。
無意識のうちに、彼に見つからないよう、じりじりと下がっていき、気がつけばわたしは、地下街を彷徨っていた。
もう、川島君の顔をまともに見ることは、できない。
小説家になりたかった。
でも、小説講座には、もう行けない。
わたしの夢も、もう諦めるしかないのかもしれない。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳主婦のカレンはインスタグラムで20歳大学生の晴人と知り合う。親密な関係となった3度目のデートのときに、晴人が実は17歳の高校2年生だと知る。
カレンと晴人はその後、どうなる?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~
馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」
入社した会社の社長に
息子と結婚するように言われて
「ま、なぶくん……」
指示された家で出迎えてくれたのは
ずっとずっと好きだった初恋相手だった。
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
ちょっぴり照れ屋な新人保険師
鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno-
×
俺様なイケメン副社長
遊佐 学 -Manabu Yusa-
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
「これからよろくね、ちとせ」
ずっと人生を諦めてたちとせにとって
これは好きな人と幸せになれる
大大大チャンス到来!
「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」
この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。
「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」
自分の立場しか考えてなくて
いつだってそこに愛はないんだと
覚悟して臨んだ結婚生活
「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」
「あいつと仲良くするのはやめろ」
「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」
好きじゃないって言うくせに
いつだって、強引で、惑わせてくる。
「かわいい、ちとせ」
溺れる日はすぐそこかもしれない
◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌
俺様なイケメン副社長と
そんな彼がずっとすきなウブな女の子
愛が本物になる日は……
私の守護霊さん
Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。
彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。
これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。
訳あり冷徹社長はただの優男でした
あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた
いや、待て
育児放棄にも程があるでしょう
音信不通の姉
泣き出す子供
父親は誰だよ
怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳)
これはもう、人生詰んだと思った
**********
この作品は他のサイトにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる