Campus91

茉莉 佳

文字の大きさ
265 / 300
19 12月のダイアリー

12月のダイアリー 11月16日

しおりを挟む
11月16日(土) 曇り

昨日、小説講座に行けずに、地下街をぶらついていて、夏休みにバイトをしていたファーストフードのお店でヒマを潰していたら、たまたまシフトに入っていた太田君が、『今度休みの合うときに、ドライブに行かない?』って誘ってくれた。
バイトしていた頃、シフトがいっしょだったときは、明るく声かけてきてくれて、『遊びに行こう』って誘ってくれたこともあった。
そのときは断ったけど、悪い人じゃないし、無邪気でノリもよくて話もけっこう合ったから、『新しい彼氏ができれば、川島君のことも忘れられるよ』っていうはるみの言葉を思い出し、思い切って遊びに行ってみることにした。

たまたまお互い今日が空いていたので、さっそくデート。
川島君以外の男の人と、こうやってふたりっきりで会うのなんてはじめてのことなので、ちょっとドキドキ。
海沿いの国道をクルマで走り、途中のカフェでコーヒータイム。
太田君の話は面白い。
話題もわりと豊富だし、まじめな話をしつつジョークもはさんで、わたしを笑わせてくれる。
だけど、表面的な世間話ばっかりで、川島君みたいに、心の奥にまで響いてくる言葉はない。

コーヒーカップを持つとき、太田君はカップの取っ手に指を入れずに、取っ手に指を揃えて持つ。
そんな仕草が、川島君といっしょ。
クルマをバックさせるとき、助手席のヘッドレストに手をかける。
その仕草も、川島君と同じ。
そうやって、彼のちょっとした仕草や口癖を、つい、川島君と較べてしまう。
なにをしているときでも、太田君のうしろに川島君の影がチラチラとかすめてしまって、彼といっしょにいることを、純粋に楽しめない。

そういうのってなんだかいたたまれないし、相手にも失礼だ。
そう思って、途中で『もう帰ろう』と言い出したら、太田君はいきなり不機嫌になって黙り込み、クルマの運転もちょっと荒っぽくなった。
帰り道の途中、暗くなった海辺の公園でクルマを止められたときは、怖かった。
『海を見るだけだよ』って言うけど、太田君がからだを動かして、シートが軋むだけで、からだがすくんでしまう。
幸いなにもされなかったけど、彼とはもう、ふたりだけでは会いたくない。
やっぱり川島君がいい。
川島君でなきゃ、ダメ。

川島君みたいに、『根っこが同じ』って感じられて、その人の言葉にいちいち共感できるのって、なかなかないことなのかもしれない。
そういう風に思えた彼を、あっさりと手放してしまったわたしは、ほんとうにおバカさん。
となりに川島君がいることがすっかり当たり前になっていて、本当は得がたい、かけがえのないものだったってのは、なくしてからじゃないとわからなかった。

太田君と別れて家に帰って、夜が更けてくると、どんどん孤独感が増していき、ポッカリと空いた真っ暗な闇の底に、落ちていくような錯覚に襲われる。

虚しい。
虚しい。

どうしたらこの虚しさ悲しさを、振り払うことができるの?
川島君やみっこがいない淋しさを、忘れることができるの?

いてもたってもいられない気持ち。

つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

皇太子夫妻の歪んだ結婚 

夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。 その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。 本編完結してます。 番外編を更新中です。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

結婚相手は、初恋相手~一途な恋の手ほどき~

馬村 はくあ
ライト文芸
「久しぶりだね、ちとせちゃん」 入社した会社の社長に 息子と結婚するように言われて 「ま、なぶくん……」 指示された家で出迎えてくれたのは ずっとずっと好きだった初恋相手だった。 ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ ちょっぴり照れ屋な新人保険師 鈴野 ちとせ -Chitose Suzuno- × 俺様なイケメン副社長 遊佐 学 -Manabu Yusa- ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 「これからよろくね、ちとせ」 ずっと人生を諦めてたちとせにとって これは好きな人と幸せになれる 大大大チャンス到来! 「結婚したい人ができたら、いつでも離婚してあげるから」 この先には幸せな未来しかないと思っていたのに。 「感謝してるよ、ちとせのおかげで俺の将来も安泰だ」 自分の立場しか考えてなくて いつだってそこに愛はないんだと 覚悟して臨んだ結婚生活 「お前の頭にあいつがいるのが、ムカつく」 「あいつと仲良くするのはやめろ」 「違わねぇんだよ。俺のことだけ見てろよ」 好きじゃないって言うくせに いつだって、強引で、惑わせてくる。 「かわいい、ちとせ」 溺れる日はすぐそこかもしれない ◌⑅◌┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈◌⑅◌ 俺様なイケメン副社長と そんな彼がずっとすきなウブな女の子 愛が本物になる日は……

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

私の守護霊さん

Masa&G
キャラ文芸
大学生活を送る彩音には、誰にも言えない秘密がある。 彼女のそばには、他人には姿の見えない“守護霊さん”がずっと寄り添っていた。 これは——二人で過ごした最後の一年を描く、かけがえのない物語。

訳あり冷徹社長はただの優男でした

あさの紅茶
恋愛
独身喪女の私に、突然お姉ちゃんが子供(2歳)を押し付けてきた いや、待て 育児放棄にも程があるでしょう 音信不通の姉 泣き出す子供 父親は誰だよ 怒り心頭の中、なしくずし的に子育てをすることになった私、橋本美咲(23歳) これはもう、人生詰んだと思った ********** この作品は他のサイトにも掲載しています

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

処理中です...