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19 12月のダイアリー
12月のダイアリー 11月16日
11月16日(土) 曇り
昨日、小説講座に行けずに、地下街をぶらついていて、夏休みにバイトをしていたファーストフードのお店でヒマを潰していたら、たまたまシフトに入っていた太田君が、『今度休みの合うときに、ドライブに行かない?』って誘ってくれた。
バイトしていた頃、シフトがいっしょだったときは、明るく声かけてきてくれて、『遊びに行こう』って誘ってくれたこともあった。
そのときは断ったけど、悪い人じゃないし、無邪気でノリもよくて話もけっこう合ったから、『新しい彼氏ができれば、川島君のことも忘れられるよ』っていうはるみの言葉を思い出し、思い切って遊びに行ってみることにした。
たまたまお互い今日が空いていたので、さっそくデート。
川島君以外の男の人と、こうやってふたりっきりで会うのなんてはじめてのことなので、ちょっとドキドキ。
海沿いの国道をクルマで走り、途中のカフェでコーヒータイム。
太田君の話は面白い。
話題もわりと豊富だし、まじめな話をしつつジョークもはさんで、わたしを笑わせてくれる。
だけど、表面的な世間話ばっかりで、川島君みたいに、心の奥にまで響いてくる言葉はない。
コーヒーカップを持つとき、太田君はカップの取っ手に指を入れずに、取っ手に指を揃えて持つ。
そんな仕草が、川島君といっしょ。
クルマをバックさせるとき、助手席のヘッドレストに手をかける。
その仕草も、川島君と同じ。
そうやって、彼のちょっとした仕草や口癖を、つい、川島君と較べてしまう。
なにをしているときでも、太田君のうしろに川島君の影がチラチラとかすめてしまって、彼といっしょにいることを、純粋に楽しめない。
そういうのってなんだかいたたまれないし、相手にも失礼だ。
そう思って、途中で『もう帰ろう』と言い出したら、太田君はいきなり不機嫌になって黙り込み、クルマの運転もちょっと荒っぽくなった。
帰り道の途中、暗くなった海辺の公園でクルマを止められたときは、怖かった。
『海を見るだけだよ』って言うけど、太田君がからだを動かして、シートが軋むだけで、からだがすくんでしまう。
幸いなにもされなかったけど、彼とはもう、ふたりだけでは会いたくない。
やっぱり川島君がいい。
川島君でなきゃ、ダメ。
川島君みたいに、『根っこが同じ』って感じられて、その人の言葉にいちいち共感できるのって、なかなかないことなのかもしれない。
そういう風に思えた彼を、あっさりと手放してしまったわたしは、ほんとうにおバカさん。
となりに川島君がいることがすっかり当たり前になっていて、本当は得がたい、かけがえのないものだったってのは、失してからじゃないとわからなかった。
太田君と別れて家に帰って、夜が更けてくると、どんどん孤独感が増していき、ポッカリと空いた真っ暗な闇の底に、落ちていくような錯覚に襲われる。
虚しい。
虚しい。
どうしたらこの虚しさ悲しさを、振り払うことができるの?
川島君やみっこがいない淋しさを、忘れることができるの?
いてもたってもいられない気持ち。
つづく
昨日、小説講座に行けずに、地下街をぶらついていて、夏休みにバイトをしていたファーストフードのお店でヒマを潰していたら、たまたまシフトに入っていた太田君が、『今度休みの合うときに、ドライブに行かない?』って誘ってくれた。
バイトしていた頃、シフトがいっしょだったときは、明るく声かけてきてくれて、『遊びに行こう』って誘ってくれたこともあった。
そのときは断ったけど、悪い人じゃないし、無邪気でノリもよくて話もけっこう合ったから、『新しい彼氏ができれば、川島君のことも忘れられるよ』っていうはるみの言葉を思い出し、思い切って遊びに行ってみることにした。
たまたまお互い今日が空いていたので、さっそくデート。
川島君以外の男の人と、こうやってふたりっきりで会うのなんてはじめてのことなので、ちょっとドキドキ。
海沿いの国道をクルマで走り、途中のカフェでコーヒータイム。
太田君の話は面白い。
話題もわりと豊富だし、まじめな話をしつつジョークもはさんで、わたしを笑わせてくれる。
だけど、表面的な世間話ばっかりで、川島君みたいに、心の奥にまで響いてくる言葉はない。
コーヒーカップを持つとき、太田君はカップの取っ手に指を入れずに、取っ手に指を揃えて持つ。
そんな仕草が、川島君といっしょ。
クルマをバックさせるとき、助手席のヘッドレストに手をかける。
その仕草も、川島君と同じ。
そうやって、彼のちょっとした仕草や口癖を、つい、川島君と較べてしまう。
なにをしているときでも、太田君のうしろに川島君の影がチラチラとかすめてしまって、彼といっしょにいることを、純粋に楽しめない。
そういうのってなんだかいたたまれないし、相手にも失礼だ。
そう思って、途中で『もう帰ろう』と言い出したら、太田君はいきなり不機嫌になって黙り込み、クルマの運転もちょっと荒っぽくなった。
帰り道の途中、暗くなった海辺の公園でクルマを止められたときは、怖かった。
『海を見るだけだよ』って言うけど、太田君がからだを動かして、シートが軋むだけで、からだがすくんでしまう。
幸いなにもされなかったけど、彼とはもう、ふたりだけでは会いたくない。
やっぱり川島君がいい。
川島君でなきゃ、ダメ。
川島君みたいに、『根っこが同じ』って感じられて、その人の言葉にいちいち共感できるのって、なかなかないことなのかもしれない。
そういう風に思えた彼を、あっさりと手放してしまったわたしは、ほんとうにおバカさん。
となりに川島君がいることがすっかり当たり前になっていて、本当は得がたい、かけがえのないものだったってのは、失してからじゃないとわからなかった。
太田君と別れて家に帰って、夜が更けてくると、どんどん孤独感が増していき、ポッカリと空いた真っ暗な闇の底に、落ちていくような錯覚に襲われる。
虚しい。
虚しい。
どうしたらこの虚しさ悲しさを、振り払うことができるの?
川島君やみっこがいない淋しさを、忘れることができるの?
いてもたってもいられない気持ち。
つづく
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