Campus91

茉莉 佳

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20 Lucky Lips

Lucky Lips 9

『本当にさつきは、彼と別れてしまったままで、いいの?!』

みっこの声が、頭のなかをグルグル回る。

『心を開いて、それを望めば、いつかは再会できて、願いもかなう』

彼女はそう言った。
わたし、どうしてなにもしないんだろう?
こんなにまで差し伸べてくれる川島君の手を、どうして掴むことができないんだろう?
このまま別れてしまえば、きっと一生、後悔する。
昨日も明日も、関係ない。
今、この一瞬だけ、勇気がほしい。


「雪が… 降ってた」

届くか届かないかの、消えてしまいそうな声。
それが今のわたしの精いっぱいだった。
だけど川島君は背中を向けたまま、立ち止まった。

「海に、雪が降ってて、空が低くて重たくて、凍えるくらい寒くて、わたし、押し潰されそうだった」

川島君は、動かない。

「わたし、ずっと待ってた。
そんな海を見ながら… 川島君が来るのを。
でも、川島君、来なかった。
わたし、悲しくて、悲しくて…
自分から別れを言ったくせに、ほんとは別れたくなかったなんて、そんな勝手なこと、川島君に言えなくて…
ううん。
ほんとは怖かった。
川島君がもう、わたしのこと、嫌いになってるって、思い知るのが…
だってわたし、今でも川島君のこと… 好きだから…」
「…」
「だから… 行かないで」
「…さつきちゃん!」

川島君はわたしを振り返り、懐かしい声でそう言うと、駆けよってわたしをぎゅっと抱きしめた。

「ぼくだって、さつきちゃんが好きだよ。ずっと!」
「川島君… 好き…」

すれ違う人が驚いて振り向く。
だけどわたしたちは、そんな人目もはばからず、空港のロビーの真ん中で、しっかりと抱きあった。

「さつきちゃんとの記念日。遅くなったけどやろうな」
「…ん」
「今までの約束も、みんなそのままでいいだろ?」
「…ん」
「今日も、新しい記念日にしような」
「…ん」

川島君の大きな胸の中に包まれて、彼のやさしい言葉に、わたしは何度もうなずくだけだった。
以前にもまして、幸せだった。
それは、別れている間に、本当に幸せなことがなんなのか、お互い知ることができたからかもしれない。



「実はみっこから、手紙が来たんだ」
「手紙?」

お互いの気持ちがようやく落ち着くと、川島君はポケットから一枚の便箋を取り出して、わたしに見せた。


   22日の11時半頃、福岡空港のインフォメーションに来て下さい。
   さつきのことがまだ好きなら、絶対に。
   あたしの最後のわがまま、聞いて下さい。


薄紫の便箋には三行だけ、そう書いてあった。
川島君はそれをポケットに仕舞いながら、これまでのいきさつを打ち明けはじめた。

「実はみっことは、あれから何度か、連絡をとっていたんだよ」
「え?」

つづく
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