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第1巻 ― 再生の残り火
第13章:必要な旅立ち
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数日後。
森を抜ける朝の光が差し込み始めたころ、ネリアは胸を弾ませて目を覚ました。
(やっとこの日だ。
はやく来てほしい。
はやく、まなびたい。)
彼女は急いで着替え、部屋を出た。
両親の寝室の前を通る。
まだ眠っている。
エルドランの荒い鼾だけが静けさを破っていた。
ネリアはそのまま台所へ向かう。
「はぁ……ちいさいって、ほんとにたいへん。
うえのたな、とどかない……。
でもママはおこさない。
きのうもパパとおそくまで、はなしてたもん。」
小さく呟く。
彼女は卓に座り、籠の果実を一つ取り、かじりながら待った。
やがて一刻ほどが過ぎ、両親の寝室から物音がし始める。
ほどなくゼフィラが寝間着姿で出てきた。
「ネリア、もう起きているの?
まだ早すぎるわよ。
どれくらい前から?」
目をこすりながら尋ねる。
「ち……ちがうの。
ちょっとだけ、おなかすいただけ。」
ネリアは答えた。
ゼフィラは歩み寄り、娘の頭頂に口づける。
「もっと上手に嘘をつけるようにならないとね。」
ため息をつく。
「何か作ってあげる。
お父さんを起こしてきて。」
ネリアは椅子から降り、忍び足で寝室へ向かう。
鼾は相変わらず響いている。
音を立てぬよう近づき、身をかがめ――勢いよく飛びついた。
エルドランは跳ね起き、ネリアを落としかける。
だが反射的に抱き止めた。
ネリアは声を上げて笑う。
彼は彼女を膝に座らせ、目をこすり、何度も瞬きをした。
「パパ、ママが、はやくおきてって。」
ネリアはぴょんと跳ねる。
「まったく……お前の母さんは魔女だな。
娘を使って拷問とは。」
欠伸をかみ殺す。
「魔女ですって?」
壁にもたれていたゼフィラが言う。
「今日はかわいい娘はいないわよ。
どれだけ魔女か、思い知らせてあげましょうか。
ネリア、牛乳よ。」
ネリアはすぐに降り、母のもとへ。
二人は卓へ戻る。
湯気立つ牛乳が彼女の体をゆるめる。
ゼフィラは小さな菓子を並べた。
「ママ、はちみつのやつ、ほしい。
おねがい。」
首を傾げ、唇をきゅっと結び、甘える目を向ける。
ゼフィラは大きく息を吐き、立ち上がる。
戸棚から〈黄金の月〉を取り出した。
先ほど届かなかった菓子だ。
「また作らなきゃね。
食いしん坊さん。
その顔がいつも通じると思わないことよ。
お父さんほど単純じゃないわ。」
卓に置く。
ネリアは〈黄金の月〉を牛乳に浸す。
そこへエルドランが来て、隣に座った。
「俺には牛乳はないのか?
たまには子供に戻りたいものだ。
俺も甘やかしてくれ。」
からかう。
「まあ、王子様。
口移しで食べさせましょうか?
雛のように。」
ゼフィラは返す。
「ネリアを着替えさせるわ。
もうすぐ来るはずよ。」
彼女は手を差し出す。
ネリアは椅子から降り、頬をふくらませたまま最後の一口を噛む。
ゼフィラは軽い上着に柔らかな上衣を重ね、厚手の脚衣を履かせ、長い裙と高い靴を履かせた。
「言うことをよく聞いて、ウェンズワースから離れないこと。
思っていたほど彼を知らなかったとしても、一人でいるより安全よ。」
真剣な声だった。
「うん。
きをつける。
やくそく。」
ネリアは答える。
ちょうどその時、戸口の小さな鈴が鳴った。
エルドランが開け、ウェンズワースを迎え入れる。
「座れ。
すぐ来る。
何か飲むか。」
冷ややかな口調。
ウェンズワースは腰を下ろし、ため息をつく。
エルドランは小瓶を取り出し、二つの杯に注いだ。
一つを差し出し、自分も口をつける。
「まだ受け入れられないか。
娘が俺を選んだこと。
だが忘れるな。
お前にはある。
俺にはないものが。
剣を教えられるのは、お前だ。」
ウェンズワースは言う。
「剣で思い出した。
三歳の祝いに作ったやつを渡そう。
扱い方を教えてやってくれ。
認めたくはないが、魔法はお前の方が詳しい。」
エルドランはネリアの部屋へ向かった。
廊下へ出たところで、ゼフィラとネリアが戻ってくる。
ネリアは手を振った。
卓にはプルネルの香りが漂う。
「本当に直らないわね。
苛立つとすぐ酒。
強いのが救いだけれど。」
ゼフィラは鼻をしかめる。
「責められはせん。
嘘をついた男に娘を預けるのだ。
何も感じぬ親の方が異常だ。」
ウェンズワースは杯を置いた。
「言い方がいつも真っ直ぐすぎるのよ。
たまに戸惑うわ。」
ゼフィラは小さく息をついた。
エルドランは台所へ戻り、まっすぐウェンズワースのもとへ歩み寄ると、剣を包んだ布を差し出した。
結び目を解き、布を外し、ネリアに贈られた刃を露わにする。
数秒それを見つめてから、卓の上に置いた。
「これはまた、たいした贈り物だな。
鋼を強化し、大量のマナを受け入れられるようにするエルフのルーン刻印。
そう簡単に手に入る代物ではない。
かなりの値がしたのではないか。」
ウェンズワースは剣を収めながら言った。
「いや、そうでもない。
村の鍛冶屋がくれたんだ。
見たときはやり過ぎだと言ったが、聞き入れなかった。
だが……今となっては、あの子が使えるのか分からない。」
ゼフィラが説明する。
「だからお前に預ける。
使えるかどうか見極められるのはお前だ。
強化の理屈は分かるが、暴走した時……俺では対処できるか自信がない。」
エルドランが続けた。
ウェンズワースは杯を空け、椅子から立ち上がる。
エルドランとゼフィラを見た。
「では行く。
人目のない場所まで離れねばならん。
無事に返す。
信じてくれ。
少なくとも……可能な限りはな。」
笑いながら言った。
ネリアは椅子から降り、両親のもとへ向かう。
一人ずつ抱きしめた。
「言ったこと、忘れないで。
彼から離れないのよ。」
ゼフィラは抱擁を解きながら言う。
彼女も立ち上がり、小さな袋を差し出した。
ネリアが中を見ると、着替えが入っている。
ゼフィラは戸口まで付き添い、外套を着せ、口づけた。
そして背筋を伸ばし、ウェンズワースを見る。
「必ず守って。
あなたほどの魔導士ではないけれど、娘を託すの。
冗談では済まないわ。」
冷ややかな静けさを帯びた声だった。
ウェンズワースは扉を開け、ネリアに外へ出るよう合図する。
続いて外に出て、ゼフィラとエルドランへ向き直った。
「何度でも言うが、問題ない。
心配はいらん。
何かあれば、すぐ知らせる。」
そう言ってからネリアを見る。
「行くぞ。
道は長い。」
ネリアは満面の笑みを向け、歩き出す。
門を抜ける前に振り返り、大きく手を振った。
エルドランとゼフィラは姿が見えなくなるまで立ち尽くしていた。
「しばらく、長く感じるだろうな。
どうしてこうも、ことごとく狂う。」
エルドランは寂しげに言う。
「分かっていたはずよ。
あれほど可愛くて、小さな魅力の使い方まで覚えてしまった子が、普通でいられるわけがない。
あの子は成長する。
止められない。
だから、できる限り支えるしかないの。」
ゼフィラは答えた。
「分かっている……。
だが、もう少しだけ、あのままでいてほしい。」
エルドランは言った。
ゼフィラは家の中へ戻る。
エルドランは戸口に立ち、虚ろな目で庭を見つめ続けた。
数分後、咳払いが彼の注意を引く。
廊下の角から、ゼフィラが顔を出し、微笑んでいる。
「変えられないことよ。
でも、久しぶりに二人きり。
少し楽しんだらどう?
もう気を遣う必要はないでしょう。」
ウインクした。
彼女は腰を揺らしながら廊下を進む。
それを見て、エルドランは間の抜けた笑みを浮かべた。
「話を逸らすのが早いな、我が妻よ。
その魔女の力で欲を煽るとは……まったく、恐ろしい。」
家の中へ入る。
「認めなさい。
この身体には逆らえないのでしょう。
温めてくれないと、凍えてしまうわ。」
囁きながら近づく。
エルドランは何も言わず、ゼフィラの頬に手を添えて口づける。
そのまま抱き上げ、寝室へ向かった。
一方その頃、ネリアとウェンズワースは小さな馬車で既に道を進んでいた。
「それで、どこへ行くの?
数日でも離れられるの、楽しみ。
やっと普通に話せる。
子供らしく振る舞っているか考えなくていい。」
ネリアは弾んだ声で言う。
「気持ちは分かる。
だが正直、奇妙でもある。
その小さな身体で、淀みなく話されるとな。
慣れんものだ。」
ウェンズワースは答えた。
「隠すの、大変だった。
最初は本当に苦労した。
頭の中ははっきりしているから、何度も普通に話しそうになった。
でも失敗しても、気づかれてはいないと思う。」
ネリアは説明する。
「そうだろう。
お前はあの二人の娘だ。
それは変わらん。
たとえ我らがこの地の者でなくとも、身体は確かに親から生まれたもの――」
ウェンズワースが言いかける。
「だめ。
そこまで。
両親がそういうことしてるところ、想像したくない。
分かってるけど、知りたくない。」
ネリアは顔をしかめて遮った。
ウェンズワースはその言葉に笑い出し、手綱を鋭く打って速度を上げる。
景色は数刻にわたり流れ去り、話題は世界のことへと移っていった。
ネリアは抑えていた好奇心を、ようやく解き放っていた。
森を抜ける朝の光が差し込み始めたころ、ネリアは胸を弾ませて目を覚ました。
(やっとこの日だ。
はやく来てほしい。
はやく、まなびたい。)
彼女は急いで着替え、部屋を出た。
両親の寝室の前を通る。
まだ眠っている。
エルドランの荒い鼾だけが静けさを破っていた。
ネリアはそのまま台所へ向かう。
「はぁ……ちいさいって、ほんとにたいへん。
うえのたな、とどかない……。
でもママはおこさない。
きのうもパパとおそくまで、はなしてたもん。」
小さく呟く。
彼女は卓に座り、籠の果実を一つ取り、かじりながら待った。
やがて一刻ほどが過ぎ、両親の寝室から物音がし始める。
ほどなくゼフィラが寝間着姿で出てきた。
「ネリア、もう起きているの?
まだ早すぎるわよ。
どれくらい前から?」
目をこすりながら尋ねる。
「ち……ちがうの。
ちょっとだけ、おなかすいただけ。」
ネリアは答えた。
ゼフィラは歩み寄り、娘の頭頂に口づける。
「もっと上手に嘘をつけるようにならないとね。」
ため息をつく。
「何か作ってあげる。
お父さんを起こしてきて。」
ネリアは椅子から降り、忍び足で寝室へ向かう。
鼾は相変わらず響いている。
音を立てぬよう近づき、身をかがめ――勢いよく飛びついた。
エルドランは跳ね起き、ネリアを落としかける。
だが反射的に抱き止めた。
ネリアは声を上げて笑う。
彼は彼女を膝に座らせ、目をこすり、何度も瞬きをした。
「パパ、ママが、はやくおきてって。」
ネリアはぴょんと跳ねる。
「まったく……お前の母さんは魔女だな。
娘を使って拷問とは。」
欠伸をかみ殺す。
「魔女ですって?」
壁にもたれていたゼフィラが言う。
「今日はかわいい娘はいないわよ。
どれだけ魔女か、思い知らせてあげましょうか。
ネリア、牛乳よ。」
ネリアはすぐに降り、母のもとへ。
二人は卓へ戻る。
湯気立つ牛乳が彼女の体をゆるめる。
ゼフィラは小さな菓子を並べた。
「ママ、はちみつのやつ、ほしい。
おねがい。」
首を傾げ、唇をきゅっと結び、甘える目を向ける。
ゼフィラは大きく息を吐き、立ち上がる。
戸棚から〈黄金の月〉を取り出した。
先ほど届かなかった菓子だ。
「また作らなきゃね。
食いしん坊さん。
その顔がいつも通じると思わないことよ。
お父さんほど単純じゃないわ。」
卓に置く。
ネリアは〈黄金の月〉を牛乳に浸す。
そこへエルドランが来て、隣に座った。
「俺には牛乳はないのか?
たまには子供に戻りたいものだ。
俺も甘やかしてくれ。」
からかう。
「まあ、王子様。
口移しで食べさせましょうか?
雛のように。」
ゼフィラは返す。
「ネリアを着替えさせるわ。
もうすぐ来るはずよ。」
彼女は手を差し出す。
ネリアは椅子から降り、頬をふくらませたまま最後の一口を噛む。
ゼフィラは軽い上着に柔らかな上衣を重ね、厚手の脚衣を履かせ、長い裙と高い靴を履かせた。
「言うことをよく聞いて、ウェンズワースから離れないこと。
思っていたほど彼を知らなかったとしても、一人でいるより安全よ。」
真剣な声だった。
「うん。
きをつける。
やくそく。」
ネリアは答える。
ちょうどその時、戸口の小さな鈴が鳴った。
エルドランが開け、ウェンズワースを迎え入れる。
「座れ。
すぐ来る。
何か飲むか。」
冷ややかな口調。
ウェンズワースは腰を下ろし、ため息をつく。
エルドランは小瓶を取り出し、二つの杯に注いだ。
一つを差し出し、自分も口をつける。
「まだ受け入れられないか。
娘が俺を選んだこと。
だが忘れるな。
お前にはある。
俺にはないものが。
剣を教えられるのは、お前だ。」
ウェンズワースは言う。
「剣で思い出した。
三歳の祝いに作ったやつを渡そう。
扱い方を教えてやってくれ。
認めたくはないが、魔法はお前の方が詳しい。」
エルドランはネリアの部屋へ向かった。
廊下へ出たところで、ゼフィラとネリアが戻ってくる。
ネリアは手を振った。
卓にはプルネルの香りが漂う。
「本当に直らないわね。
苛立つとすぐ酒。
強いのが救いだけれど。」
ゼフィラは鼻をしかめる。
「責められはせん。
嘘をついた男に娘を預けるのだ。
何も感じぬ親の方が異常だ。」
ウェンズワースは杯を置いた。
「言い方がいつも真っ直ぐすぎるのよ。
たまに戸惑うわ。」
ゼフィラは小さく息をついた。
エルドランは台所へ戻り、まっすぐウェンズワースのもとへ歩み寄ると、剣を包んだ布を差し出した。
結び目を解き、布を外し、ネリアに贈られた刃を露わにする。
数秒それを見つめてから、卓の上に置いた。
「これはまた、たいした贈り物だな。
鋼を強化し、大量のマナを受け入れられるようにするエルフのルーン刻印。
そう簡単に手に入る代物ではない。
かなりの値がしたのではないか。」
ウェンズワースは剣を収めながら言った。
「いや、そうでもない。
村の鍛冶屋がくれたんだ。
見たときはやり過ぎだと言ったが、聞き入れなかった。
だが……今となっては、あの子が使えるのか分からない。」
ゼフィラが説明する。
「だからお前に預ける。
使えるかどうか見極められるのはお前だ。
強化の理屈は分かるが、暴走した時……俺では対処できるか自信がない。」
エルドランが続けた。
ウェンズワースは杯を空け、椅子から立ち上がる。
エルドランとゼフィラを見た。
「では行く。
人目のない場所まで離れねばならん。
無事に返す。
信じてくれ。
少なくとも……可能な限りはな。」
笑いながら言った。
ネリアは椅子から降り、両親のもとへ向かう。
一人ずつ抱きしめた。
「言ったこと、忘れないで。
彼から離れないのよ。」
ゼフィラは抱擁を解きながら言う。
彼女も立ち上がり、小さな袋を差し出した。
ネリアが中を見ると、着替えが入っている。
ゼフィラは戸口まで付き添い、外套を着せ、口づけた。
そして背筋を伸ばし、ウェンズワースを見る。
「必ず守って。
あなたほどの魔導士ではないけれど、娘を託すの。
冗談では済まないわ。」
冷ややかな静けさを帯びた声だった。
ウェンズワースは扉を開け、ネリアに外へ出るよう合図する。
続いて外に出て、ゼフィラとエルドランへ向き直った。
「何度でも言うが、問題ない。
心配はいらん。
何かあれば、すぐ知らせる。」
そう言ってからネリアを見る。
「行くぞ。
道は長い。」
ネリアは満面の笑みを向け、歩き出す。
門を抜ける前に振り返り、大きく手を振った。
エルドランとゼフィラは姿が見えなくなるまで立ち尽くしていた。
「しばらく、長く感じるだろうな。
どうしてこうも、ことごとく狂う。」
エルドランは寂しげに言う。
「分かっていたはずよ。
あれほど可愛くて、小さな魅力の使い方まで覚えてしまった子が、普通でいられるわけがない。
あの子は成長する。
止められない。
だから、できる限り支えるしかないの。」
ゼフィラは答えた。
「分かっている……。
だが、もう少しだけ、あのままでいてほしい。」
エルドランは言った。
ゼフィラは家の中へ戻る。
エルドランは戸口に立ち、虚ろな目で庭を見つめ続けた。
数分後、咳払いが彼の注意を引く。
廊下の角から、ゼフィラが顔を出し、微笑んでいる。
「変えられないことよ。
でも、久しぶりに二人きり。
少し楽しんだらどう?
もう気を遣う必要はないでしょう。」
ウインクした。
彼女は腰を揺らしながら廊下を進む。
それを見て、エルドランは間の抜けた笑みを浮かべた。
「話を逸らすのが早いな、我が妻よ。
その魔女の力で欲を煽るとは……まったく、恐ろしい。」
家の中へ入る。
「認めなさい。
この身体には逆らえないのでしょう。
温めてくれないと、凍えてしまうわ。」
囁きながら近づく。
エルドランは何も言わず、ゼフィラの頬に手を添えて口づける。
そのまま抱き上げ、寝室へ向かった。
一方その頃、ネリアとウェンズワースは小さな馬車で既に道を進んでいた。
「それで、どこへ行くの?
数日でも離れられるの、楽しみ。
やっと普通に話せる。
子供らしく振る舞っているか考えなくていい。」
ネリアは弾んだ声で言う。
「気持ちは分かる。
だが正直、奇妙でもある。
その小さな身体で、淀みなく話されるとな。
慣れんものだ。」
ウェンズワースは答えた。
「隠すの、大変だった。
最初は本当に苦労した。
頭の中ははっきりしているから、何度も普通に話しそうになった。
でも失敗しても、気づかれてはいないと思う。」
ネリアは説明する。
「そうだろう。
お前はあの二人の娘だ。
それは変わらん。
たとえ我らがこの地の者でなくとも、身体は確かに親から生まれたもの――」
ウェンズワースが言いかける。
「だめ。
そこまで。
両親がそういうことしてるところ、想像したくない。
分かってるけど、知りたくない。」
ネリアは顔をしかめて遮った。
ウェンズワースはその言葉に笑い出し、手綱を鋭く打って速度を上げる。
景色は数刻にわたり流れ去り、話題は世界のことへと移っていった。
ネリアは抑えていた好奇心を、ようやく解き放っていた。
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