師匠の嫉妬で才能を奪われた薬師見習いの私、牢獄で本物の力を取り戻す

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「セシリア、こっちの患者を頼むわ!」

ミレイユの声に、わたしは駆け寄った。
靴音が石の床に響く。
ベッドには、顔色の悪い中年男性が横たわっていた。
荒い息を吐き、額には大粒の汗が浮かんでいた。

「熱が下がらないの」

わたしは額に手を当てた。灼熱だった。皮膚が焼けるように熱い。

「解熱の薬を......」
「もう投与したわ。でも効かないの」

ミレイユは唇を噛み、拳を握り締めた。
どうして。わたしたちの薬が効かないなんて。

「セシリア」

エリザ様の声が響いた。振り返ると、薬師長は腕を組んで立っている。

「この患者たちに投与する薬を、貴女が調合しなさい」
「わたしが、ですか?」

声が上ずった。周囲の見習いたちの視線が、一斉にわたしに集まる。

「そうよ。見習いといえども、三年も修行したのだから。できるでしょう?」

エリザ様の目には、冷たい光があった。まるで、獲物を見つめる鷹のような目だった。

「はい、やってみます」

わたしは調合室に向かい、必死で薬を作った。
エリザ様から教わった処方箋通りに、薬草を煮詰め、粉末を混ぜ、錠剤にする。
乳鉢で薬草をすり潰す音が、静かな部屋に響いた。汗が額を伝い、手のひらが湿る。
何度も確認して、患者たちに投与した。

しかし。

「容態が、悪化している!」
「呼吸が苦しそうだ!」

薬を投与した患者たちの症状が、さらに悪くなっていった。
男性は喉を掻きむしり、女性は体を丸めて苦しみ始めた。

「セシリア、貴女何をしたの!」

ミレイユが叫ぶ。青ざめた顔で、わたしの肩を掴んだ。

「わ、わたしは、処方箋通りに......」

声が震えた。指先が冷たくなり、膝が笑う。

「貴女の薬のせいで、患者が死にかけてるのよ!」

頭が真っ白になった。視界が揺れ、耳鳴りがする。
そこへエリザ様が現れた。高い踵の靴音が、床を打つ。

「セシリア。貴女は重大なミスを犯したわね」
「で、でも、処方箋通りに......」
「いいえ。調合の過程で、明らかな誤りがあったわ。貴女の未熟さが、患者たちを危険に晒した」

エリザ様は羊皮紙を広げ、わたしの前に突きつけた。

「そんな......」
「証拠もある。この調合記録を見なさい」

エリザ様が突きつけた羊皮紙には、確かにわたしの筆跡で、誤った分量が記されていた。
インクの色も、わたしが使っているものと同じだ。

でも、わたしはこんな風には書かない。
この数字は、わたしが書いたものじゃない!

「これは......」
「言い訳は無用よ。明日、宮廷会議で報告します」

エリザ様は踵を返し、白い薬師服を翻して去っていった。
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