時代遅れと馬鹿にされた錬金術で王国を救ったら、元婚約者が土下座してきました

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第三章

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ガレスの研究室は、王宮の最奥部にあった。
三階建ての古い塔の最上階。錬金術が全盛期だった時代に建てられた、歴史ある場所。
部屋は薬草と古文書の匂いで満ちていた。

「秘薬『浄魂の雫(ピュリフィカ・アニマエ)』」

ガレスは、ガラスケースに収められた古い羊皮紙を取り出した。

「これは五百年前、【真理の目】の継承者だった錬金術師エリクス・ヴァロンが調合した秘薬だ。あらゆる毒と呪いを浄化する、究極の治癒薬と語り継がれてきた」

羊皮紙には、複雑な図式と文字が記されていた。
けれど――

「処方の核心部分が欠損している」

ガレスが指さした部分は、まるで何かに侵食されたように、文字が消えていた。

「五百年の歳月で劣化したのか、それとも意図的に隠されたのか。そのせいで誰も再現できなくなったんだ」
「見せてください」

私は羊皮紙を手に取った。
【真理の目】を発動させる。
金色の光が羊皮紙を包み込むと、欠損した文字が光の中で浮かび上がった。
温度設定、手順の詳細、魔力の注入パターン、そして最も重要な、素材の調合比率。
全てが明らかになった。

「……今なら書けますよ。完全な処方」

ガレスが息を呑んだ。

「本物だ。君は本当に【真理の目】の継承者だったんだな!」

彼は急いで羊皮紙とペンを取り出した。

「すぐに書きだしてくれ。必要な素材は王家の宝物庫にある。私の権限で出せる」

私は震える手で、失われた処方を書き記していった。
魔銀鉱――純度99%以上のもの、5グラム
月光草――満月の夜に採取したもの、花弁10枚
竜の涙――古竜のもの、1滴
精製水――魔力で浄化したもの、100ミリリットル
そして、調合手順。
温度管理、攪拌の速度、魔力の注入タイミング――全てが精密に計算されていた。
一つでも間違えれば、薬は毒に変わる。

「完璧だ」

ガレスは処方箋を手に取り、震える指で文字を追った。

「五百年間、誰も解けなかった謎が、今、解けた」

彼は目に涙を浮かべていた。

「リーア、君は……君は錬金術の未来だ」

だが、その時だった。
扉が勢いよく開かれ、クラウスが数名の宮廷魔術師を伴って現れた。

「待て、ガレス! 何をしている!」

クラウスの顔は怒りに歪んでいた。

「宝物庫の素材を使うだと? この小娘に? 正気か!」

エリーゼも現れた。

「ガレス様、どうかお考え直しを。リーアに宝物庫の素材を使わせるなんて、ばかばかしいですわ」

彼女の声は優雅だったが、その目は冷たかった。

「この者は、婚約を破棄されたばかりの、恨みを持った女ですのよ。何か企んでいるに違いありません」
「黙りなさい」

ガレスの声は、これまでになく厳しかった。

「リーアには【真理の目】がある。彼女だけが、秘薬を作れる」
「【真理の目】だと?」

クラウスが嘲笑した。

「伝説を信じろというのか。次は竜が現れるとでも言うつもりか」

宮廷魔術師たちもせせら笑った。
なんて憎らしい。

「お前が真理の目を持つというのなら、証明してみせろよ。リーア」

クラウスが一歩近づいた。

「今ここで、その力とやらを見せてみろ。できないなら、お前は最低最悪の詐欺師だ」

私は深呼吸をした。
もう力を隠す必要はない。
近くにあった未精製の薬草――毒性のある植物で、通常は数時間かけて精製する必要がある――を手に取った。
【真理の目】を発動させる。
金色の光が薬草を包み込む。

分解――
薬草の分子構造が見える。毒性を持つ成分と、治癒効果を持つ成分が複雑に絡み合っている。

精製――
毒性成分を分離し、治癒成分だけを抽出する。

再構成――
最適な形に組み直す。

宮廷魔術師たちがざわめき始める。
彼らはこんな精製、見たこともないのだろう。

わずか三秒で、完璧な治癒薬が完成していた。
透明な液体が、小瓶の中で淡く輝いている。
宮廷魔術師の一人――初老の男性で、魔術薬学の権威として知られる人物――が、震える手でそれを受け取った。
彼は試験用の魔術具にできたばかりの治癒薬を一滴たらし、薬を分析した。

「これは……純度が、99.8%……」

彼の声が震えた。

「こんな短時間で、しかも触媒も魔法陣も使わずに……不可能だ。理論的に不可能なはずだ!」

クラウスとエリーゼの顔から、血の気が引いていく。
分かったでしょう。
これが私の力よ。

「リーアの力は本物だ」

ガレスが断言した。

「今すぐ宝物庫を開けろ。異論は認めない」

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