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第七話
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試験場の空気は汗と土の匂いで満ちていた。私は他の受験者たちに紛れ、剣術試験の順番を待った。周囲の男たちは皆、がっしりとした体格で、筋肉が服の上からでも分かるほどだった。
心臓が早鐘を打った。手のひらに汗が滲む。
剣を握る指先が震えていた。私は深く息を吸い、密かに結界魔術を起動させた。身体を包む薄い膜のような結界。筋力を補強し、動きを軽くする魔力の補助。魔法陣は私の内側で静かに輝き、外からは一切見えない。
「次! エリアス・ハート!」
審査官の声が響いた。私は剣を構えて前に出た。
木剣を相手に振り下ろす。基本的な型の連続。剣術の訓練は幼い頃から受けていた。侯爵令嬢としての嗜みとして、父が雇った剣術師範に習っていた。だが、男性たちのような力強さはない。
結界が私の腕を補強した。刃が空気を切り裂く音が鋭くなる。
審査官が記録用紙に何かを書き込んだ。表情からは何も読み取れない。
次は馬術試験だった。広い訓練場に馬が並んでいた。私は黒い雌馬に近づき、鞍に足をかけた。馬の背に跨る。手綱を握る。
「障害物コースを三周! スタート!」
私は馬腹を蹴った。馬が駆け出す。風が顔を叩いた。障害物の丸太を飛び越える。体が宙に浮く感覚。着地の衝撃が腰に響いた。
結界が私の体幹を支えた。バランスを崩しそうになる度に、魔力が姿勢を補正する。
二周目。息が上がり始めた。喉が焼けるように渇く。だが止まるわけにはいかない。
三周目。視界が滲んだ。汗が目に入る。私は必死に手綱を握り、最後の障害物を越えた。
ゴール。
私は馬から降りて、膝に手をついた。呼吸が荒い。心臓が胸の中で暴れている。
だが、まだ終わりではなかった。
最後は体力測定。腕立て伏せ、懸垂、持久走。
審査官が笛を吹いた。
腕立て伏せ。肘を曲げて体を下ろす。腕が震えた。結界が筋肉を支える。五十回。私の限界に近かった。
懸垂。鉄棒にぶら下がる。腕の力だけで体を引き上げる。結界の補助がなければ、五回も持たなかっただろう。二十回目で力尽きた。地面に降りて、手のひらを見た。擦り傷ができていた。
持久走。訓練場を何周も走る。足が重い。肺が悲鳴を上げる。
周囲の受験者たちは、まだ余裕がありそうだった。男性の体力。私には決して敵わない壁。
だが、諦めなかった。
結界が私の足を軽くした。呼吸を整えた。一歩、また一歩。ゴールまで走り続けた。
試験が終わった時、私は地面に倒れ込みそうになった。だが踏みとどまった。男として、騎士として、弱みは見せられない。
審査官が「全員、お疲れ様。合格者は明日発表する」と告げた。
私は他の受験者たちと共に、試験場を後にした。
更衣室に戻る途中、後ろから男たちの声が聞こえてきた。
「いやあ、疲れたな! 試験が終わったら酒場に行かないか?」
「ああ、昨夜の酒場の娘は最高だったぞ。胸が大きくて、腰つきも良くて......」
「俺は次の給料で娼館へ行く。あそこの新しい娘が評判らしい」
笑い声。下品な冗談。
私は顔が熱くなるのを感じた。耳まで真っ赤になっているはずだった。
前を向いたまま、黙って歩き続けた。
男装している以上、仲間として扱われる。こういう会話も日常になるのだろう。
慣れることができるだろうか。
私は唇を噛んだ。騎士になるには、まだ越えなければならない壁が多すぎる。
心臓が早鐘を打った。手のひらに汗が滲む。
剣を握る指先が震えていた。私は深く息を吸い、密かに結界魔術を起動させた。身体を包む薄い膜のような結界。筋力を補強し、動きを軽くする魔力の補助。魔法陣は私の内側で静かに輝き、外からは一切見えない。
「次! エリアス・ハート!」
審査官の声が響いた。私は剣を構えて前に出た。
木剣を相手に振り下ろす。基本的な型の連続。剣術の訓練は幼い頃から受けていた。侯爵令嬢としての嗜みとして、父が雇った剣術師範に習っていた。だが、男性たちのような力強さはない。
結界が私の腕を補強した。刃が空気を切り裂く音が鋭くなる。
審査官が記録用紙に何かを書き込んだ。表情からは何も読み取れない。
次は馬術試験だった。広い訓練場に馬が並んでいた。私は黒い雌馬に近づき、鞍に足をかけた。馬の背に跨る。手綱を握る。
「障害物コースを三周! スタート!」
私は馬腹を蹴った。馬が駆け出す。風が顔を叩いた。障害物の丸太を飛び越える。体が宙に浮く感覚。着地の衝撃が腰に響いた。
結界が私の体幹を支えた。バランスを崩しそうになる度に、魔力が姿勢を補正する。
二周目。息が上がり始めた。喉が焼けるように渇く。だが止まるわけにはいかない。
三周目。視界が滲んだ。汗が目に入る。私は必死に手綱を握り、最後の障害物を越えた。
ゴール。
私は馬から降りて、膝に手をついた。呼吸が荒い。心臓が胸の中で暴れている。
だが、まだ終わりではなかった。
最後は体力測定。腕立て伏せ、懸垂、持久走。
審査官が笛を吹いた。
腕立て伏せ。肘を曲げて体を下ろす。腕が震えた。結界が筋肉を支える。五十回。私の限界に近かった。
懸垂。鉄棒にぶら下がる。腕の力だけで体を引き上げる。結界の補助がなければ、五回も持たなかっただろう。二十回目で力尽きた。地面に降りて、手のひらを見た。擦り傷ができていた。
持久走。訓練場を何周も走る。足が重い。肺が悲鳴を上げる。
周囲の受験者たちは、まだ余裕がありそうだった。男性の体力。私には決して敵わない壁。
だが、諦めなかった。
結界が私の足を軽くした。呼吸を整えた。一歩、また一歩。ゴールまで走り続けた。
試験が終わった時、私は地面に倒れ込みそうになった。だが踏みとどまった。男として、騎士として、弱みは見せられない。
審査官が「全員、お疲れ様。合格者は明日発表する」と告げた。
私は他の受験者たちと共に、試験場を後にした。
更衣室に戻る途中、後ろから男たちの声が聞こえてきた。
「いやあ、疲れたな! 試験が終わったら酒場に行かないか?」
「ああ、昨夜の酒場の娘は最高だったぞ。胸が大きくて、腰つきも良くて......」
「俺は次の給料で娼館へ行く。あそこの新しい娘が評判らしい」
笑い声。下品な冗談。
私は顔が熱くなるのを感じた。耳まで真っ赤になっているはずだった。
前を向いたまま、黙って歩き続けた。
男装している以上、仲間として扱われる。こういう会話も日常になるのだろう。
慣れることができるだろうか。
私は唇を噛んだ。騎士になるには、まだ越えなければならない壁が多すぎる。
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