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きっとどこにもマリア様はいない
その終
しおりを挟むそれからの奏は、メイに隠れるようにして日嗣に会いに行った。
一緒に煙草を吸い、キスをし、互いに汚れていく。
結果的に、メイと奏は今までのように付き合うことができなくなり、どこかよそよそしくなった。帰り道を一人で歩くことも多くなった。
煙を燻らせながら、奏は星を眺める。
こんなことしたって、何の意味もないかもしれない。日嗣先輩はメイに手を出さないなんて一言も約束していない。
ただ、自分が体のいい玩具を彼女に差し出しているだけなのだ。
恋は盲目というが、今の自分には何が見えているのだろう。
都合のいい自己犠牲精神と自己満足に奏は苦笑するしかなかった。
もはや手詰まりで何もすることができず、遅延性の毒が回り、すべてが手遅れになるのをただじっと待つことしかできなかった。
メイのためと思っていたことはすべて空回りに終わるであろうと、奏は空に向かって漏らす。
吐いた煙は天へと昇って行き、いつしか薄れて消えた。
「や、奏ちゃんよ、今日もいるんだ」
長い髪を揺らしながら、日嗣がこちらへやってきた。
ふらふらと闇にまぎれるように歩き、奏の隣へくると、同じように壁にもたれかかる。
「最近、彼女と一緒に帰ってないじゃん?」
「別に、先輩には関係ないですよ」
隣で灯るライターを見ながら、奏はつぶやく。うまくいっていないことは否定できないため、奏は息をはーっと吐いた。
メイとの関係は自ら壊したようなものだ。何を言っても取り繕えない。
黙りこくり、何も話さない奏を見て、日嗣は意地悪く笑う。
「それが関係ないこともないんだよなぁ」
「どういうことですか?」
「どういうもこういうもさ、ラブレター、貰っちゃってさ」
胸元からピンク色のかわいらしい封筒を取り出す。その端っこのほうには、几帳面な文字で空澄メイと書いてあって、それがまぎれもない彼女からのものだということを奏は認めざるをえなかった。
「ほとんど話したこともないのにね、こんなのくれちゃってさ。 恋って怖いね。 それに今時期ラブレターなんてさ」
空に透かしながら、日嗣はそれを眺めた。
のどから手が出るほど欲しいそれが、目の前にあり、それが自分のものではないということが、奏には耐えられなかった。
許されるなら、今すぐそれを燃やしたい。ポケットの中のライターであぶって、なかったことにしたい。
そんな衝動が奏の中を駆け巡る。
奏は日嗣の手に、そのラブレターに触れるように手を伸ばした。
ゆっくりと日嗣の手をさすりながら、その指と指とを絡ませる。
はらりと落ちるラブレターを尻目に、奏は日嗣へと迫る。
「ねぇ、先輩。 私、今夜一人なんですよ」
了
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