はりぼてスケバン

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「そ、そんな！頂けませんよ！払います！いくらですか！？」

「大丈夫だって。」
ニコニコ。
笑っている店員。
しかし、華子はそういうわけにはいかない。
そんなつもりで来たわけではないのだ。

サービスに対し、きちんと対価を払う。
そうでなくてはならないのだ。

「そんなわけには……。」

「じゃあ入学祝いだ。それなら良いだろう？」

「え、えっと……はい。」
それならば断ることは出来ない。
吝かではない。

小さなスプーンでクリームを掬い、自身の口へ運ぶ。
すぐにひんやりとした甘い感覚に華子はつい口角が上がってしまうのであった。

再び一口。
更に一口。
これならば最後まで美味しく食べることが出来るだろう。
華子はパクパクとパフェを食べ進めていった。

パフェを食べている途中、ココアにも口を付けた。
駄目だ。
こんなもの、病みつきになってしまう。

「良かった、気に入ってくれたようだね。」

「あっ……えへへ、そ、その……美味しいです。」
嬉しいやら恥ずかしいやら分からない。
はにかんで見せる華子であった。

「ごゆっくり。」
微笑み、彼は華子から離れていった。

「は、はーい。ありがとうございます。」
熱い。
華子自身は確認出来ない。
しかし、きっと耳は真っ赤になっているに違いない。

それから彼女は自分の世界に浸るようにパフェを頬張った。
もうそろそろ食べ切れる。
それは、そんな時に起きたことであった。


勢い良く開かれる店の扉。
それはここのゆったりと流れる空気に似つかわしくないものであった。

「うわっとと！」
忙しない訪問者。
彼は勢い余って倒れ込んでしまった。

彼が着ている服。
それがこれから起きる事件を予言しているようだった。

黒龍高校の男子用制服。
つまり、華子と同じ高校の生徒であるということだ。

四つん這いになり、必死に店の奥へと進んで行く。
そこは、華子の座っている席であった。

「え？え？え？」
突如現れた四つん這いの男子高校生。
そんな彼の奇行に慌てふためく華子。

「ご、ごめんなさいっす！でもちょっと匿ってほしいっす！」

「か、匿う！？どういうこと！？」
何やら物騒なことを言っている。
更に慌てる華子が声を荒らげる。

「ちょっと失礼するっす！」
彼は立ち上がると、ズイズイと華子の対面の席へ向かう。

「ちょっと！？どういうこと！？説明してよ！」