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室内に彼と二人きりになってしまった華子。
何か話すべきなのだろう。
いや、違う。
話題を探るのではない。
今は早急に感謝を伝えるべきなのだ。
「あ、あの……。」
「なんであんた、あいつらにやられてたの?」
「……え?」
口を開いた華子。
しかし、彼が言葉を被せてしまった。
それに困惑の声を上げてしまう。
「まさか、あのままやり返さないつもりだったのか?」
「……。」
やり返す?
出来るわけがない。
そんなことをすれば、もっと酷いことになりかねないだろう。
無言の華子。
「いや、何でもない。」
彼女の返答とも言えないそれが期待外れだったのだろう。
早々に話題を終わらそうとする。
そして、踵を返し、廊下へ出ようとする。
「あ、あの!……こ、鯉崎……君?」
三花は彼のことを確かそう呼んでいたはずだ。
そして、彼女は呼び捨てにしていた。
つまり、同級生なのだろう。
そんな考えで彼を呼び止める。
「……?」
「あ、あの……助けてくれてありがとう……。」
「別に……お前の為じゃない。」
お手本のようなツンデレな台詞。
しかし、それは本心であった。
彼は華子のことなどどうでも良かったのだ。
それだけ言うと、今度こそその場を去るのであった。
「それ、多分鯉崎亥玄っすね。確か、出身は春中っすね。」
「藤柴君、知ってるの?」
「もちろんっすよ!」
時は進み、放課後。
人通りの多い正門ではなく、裏門から出た華子。
そんな彼女を見つけ、すぐに近寄ったのは丸雄であった。
どうやら今日も授業は受けていないようであった。
徒歩のままの華子と、彼女の隣を自転車を引きながら歩く丸雄。
彼女は早速、昼休みに出会った鯉崎という男子生徒について聞くのであった。
「へー、もしかして有名なの?」
どうやら
何の気なしに聞いてみた。
「……双葉さんも鯉崎も知らないなんて……逆に姐さん何知ってるんすか……。鯉崎なんて俺らの代で一番の有名人で、中学の頃から他校でも知られてたんっすよ?」
哀れみの瞳を向ける丸雄。
「……な、なによ、もうっ。」
なぜだか呆れられてしまった。
少し腹が立ち、彼にチョップする華子であった。
「姐さん、本当に変わってるっすよね。」
ヘラヘラと笑う丸雄。
「うるさいよ、馬鹿っ。……後、姐さんって言わないで。」
彼の言葉に再度のチョップ。
何か話すべきなのだろう。
いや、違う。
話題を探るのではない。
今は早急に感謝を伝えるべきなのだ。
「あ、あの……。」
「なんであんた、あいつらにやられてたの?」
「……え?」
口を開いた華子。
しかし、彼が言葉を被せてしまった。
それに困惑の声を上げてしまう。
「まさか、あのままやり返さないつもりだったのか?」
「……。」
やり返す?
出来るわけがない。
そんなことをすれば、もっと酷いことになりかねないだろう。
無言の華子。
「いや、何でもない。」
彼女の返答とも言えないそれが期待外れだったのだろう。
早々に話題を終わらそうとする。
そして、踵を返し、廊下へ出ようとする。
「あ、あの!……こ、鯉崎……君?」
三花は彼のことを確かそう呼んでいたはずだ。
そして、彼女は呼び捨てにしていた。
つまり、同級生なのだろう。
そんな考えで彼を呼び止める。
「……?」
「あ、あの……助けてくれてありがとう……。」
「別に……お前の為じゃない。」
お手本のようなツンデレな台詞。
しかし、それは本心であった。
彼は華子のことなどどうでも良かったのだ。
それだけ言うと、今度こそその場を去るのであった。
「それ、多分鯉崎亥玄っすね。確か、出身は春中っすね。」
「藤柴君、知ってるの?」
「もちろんっすよ!」
時は進み、放課後。
人通りの多い正門ではなく、裏門から出た華子。
そんな彼女を見つけ、すぐに近寄ったのは丸雄であった。
どうやら今日も授業は受けていないようであった。
徒歩のままの華子と、彼女の隣を自転車を引きながら歩く丸雄。
彼女は早速、昼休みに出会った鯉崎という男子生徒について聞くのであった。
「へー、もしかして有名なの?」
どうやら
何の気なしに聞いてみた。
「……双葉さんも鯉崎も知らないなんて……逆に姐さん何知ってるんすか……。鯉崎なんて俺らの代で一番の有名人で、中学の頃から他校でも知られてたんっすよ?」
哀れみの瞳を向ける丸雄。
「……な、なによ、もうっ。」
なぜだか呆れられてしまった。
少し腹が立ち、彼にチョップする華子であった。
「姐さん、本当に変わってるっすよね。」
ヘラヘラと笑う丸雄。
「うるさいよ、馬鹿っ。……後、姐さんって言わないで。」
彼の言葉に再度のチョップ。
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