はりぼてスケバン

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後で振り返れば、気をつけるべきだったと後悔し、反省も出来る。
しかし、少なくともその時には彼女らはそんなことは考えもつかなかった。

油断。
環境への適応。
それが大きな原因であった。


通学路を歩く二人。
華子と丸雄だ。
いつもなら、丸雄の運転する自転車で二人は帰っていただろう。
しかし、今日は少しの空腹を感じ、コンビニで何かを買って帰ることとなった。

買ったアイスを頬張りながら進む二人。
自転車に跨がらず、引いている。


鈍痛。
一瞬にして、隣り合って話していた華子の姿がなくなる。
そして、丸雄の目の前には雲一つない青空が広がった。

何が何だか分からない。
しかし、一つだけ確実なことがあった。
後頭部への激痛。
そのせいで、自身が倒れてしまった。

「っ！？藤柴君！」
華子の叫び声。
しかし、彼には届かない。

ぼやける意識。
その中で、彼が発したのは、自身に対する防衛の言葉ではなかった。

「鼬原さん、逃げてっ！」
果たしてはっきりこのように言葉に出来たか分からない。
しかし、彼は確実に彼女をこの場から遠ざけようとした。

身体は動かない。
それならば、と咄嗟に出来たのは、そう叫ぶことであった。

今ではすっかり慣れてしまった彼女への姐さんという呼び方。
しかし、この時はそんなものは出なかった。

後悔。
心司から聞かされていた。
黒龍高校と白辰高校は、いつ抗争になってもおかしくない。

後悔。
以前の権力者、双葉の妹である三花。
横柄な彼女のプライドをへし折り、野放しにしていた。

後悔。
少しでも強ければ、こんな情けない姿を晒さず、自身が彼女を助ける盾となれたはず。

どれもこれも時すでに遅い。
手遅れ。
しかし、だからこそ今出来ることをしなければならない。


「鼬原さん！逃げてっ！」
再度の叫び。
果たして彼女に届いたか分からない。
丸雄はこの声を発し、目を瞑り意識が飛んでしまった。

華子には、一瞬何が起きたか分からなかった。
目の前にいた丸雄。
彼が突然倒れたのだ。

「っ！？ふ、藤柴君！」
彼の名前を呼ぶ。
それは言うというには乱暴で、叫ぶという表現の方が正しいだろう。

身体が動かない。
助けるべきか。
逃げるべきべきか。

選択肢ならある。
しかし、どれも選ぶことも出来ない。

駄目だ。
腰が抜けてしまい、座り込んでしまった華子。