はりぼてスケバン

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「余計な助言かもしれないが……早く呼んだ方が良いんじゃないか？」

「……あ。」
そうだ。
丸雄はどこだ？
辺りを見渡す華子。


そこにいたのは横たわる丸雄の姿。
とても自力で起き上がれそうにない。

「藤柴君っ！」
彼の元へ向かう華子。
依然として上手く身体に力が入らず、四つん這いになり、無様な格好を晒していた。
しかし、今の彼女はそんなことを気にしていられなかった。

「……うぁ……うぅ……。」
近くで見ると、その痛々しい姿に、一瞬目を背けてしまう。
微かに呼吸音が聞こえた。

「ふ、藤柴君！」
良かった。
生きてる。
その安堵と、酷い怪我に震える。
肩を揺らし、彼の名前を再度呼び掛ける。

「馬鹿！頭を揺らすな！」
彼女を止める亥玄。

「ふ、藤柴君が……藤柴君がっ！」

「落ち着けって！」

「……で、でも……どうしよう……どうしよう……！」
亥玄の声が届いている。
しかし、華子は依然として焦っている。

「救急車、呼んでないんだろ？」

「あ、あぁ……。」
震える手で携帯電話を探す。
背負っていたスクールバッグを開ける。
いつもならどうとということのないそんな動作も覚束ない。

「……もう良い。後は俺がやっておく。」
呆れた声の亥玄。

端から期待はしていなかった。
それでも、このような状況にあまりにも不慣れ過ぎる。
彼女は不良文化に一切関わりがなかったようだ。
つまり、限りなく双葉を倒した者に関する情報を持っていないということになるだろう。


何も出来なかった。
亥玄が来てくれなかったら今頃どうなっていたか。
それを考えるだけで背筋がゾッとする。

少しして、遠くから聞こえるサイレン。
亥玄が呼んだ救急車だ。

手際良く運ばれていく丸雄。
その際、救命士がボソリと呟いた言葉が華子の耳に残ってしまった。

「最近は大人しくなったと思ったんだがな……不良は不良のままか……。」

「……っ！」
駄目だ。
反論出来なかった。
救急車を見送る頃には立ち上がることの出来た華子。
下唇を噛み、痛みに耐えていた。


「……俺らも行くぞ。」

「う、うん。」
どうやら亥玄は彼女のことを待っていてくれたようだ。
それは華子自身も分かった。

歩き出す華子。
そして、亥玄は彼女の隣を歩くのだった。

疑問。
なぜ彼は隣を歩くのだろう？
彼の家もこちらの方向なのだろうか？