はりぼてスケバン

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無視なのか。
それとも聞こえていないのか。
彼女の腕を掴み、止まらない亥玄。
ようやく歩を止めたのは、それから数分後のことであった。


「あ、あぁ……すまん。」
暗い表情。
目が伏せがちな亥玄。

「……だ大丈夫だよ……。私は大丈夫だけど……大丈夫？」

大丈夫。
嘘だ。
声と身体が小さく震えている。
そんな彼女の姿に罪悪感を覚える亥玄。

「本当にすまない……。」

「う、うん……。」

「お前、あいつと仲良いのか？」

「え？う、うん。別の高校に行っちゃったけど、友達だよ？」

「そうか……。」

「……？」

「悪いことは言わない、あいつとは距離を置け。」

「え？」

「あいつ、お前のことを見下してただろ？そういう奴とは関わらない方が良い。」

「え？そ、そうだったかな？」
亥玄の言葉に反論する。
確かに彼には助けてもらった恩義がある。
しかし、それとこれとは別だ。
友人のことを馬鹿にするような言動は控えてもらいたい。
ムッとする華子。

「……お前が気にしていないなら別に良いけどな……。」

「……？」
もしかして……。
仮定の話。
もしもの話だ。
彼は彼なりに気にかけてくれているのだろうか？
亥玄を見つめる華子。

「な、何だよ……。」
彼女の視線に気づき、そっぽを向く亥玄。

その姿は、とても先ほどまでの恐くも頼り甲斐のある姿とはかけ離れたものであった。
どことなく丸雄と似ている。
つまり、可愛らしいものであるということだ。
つい頭を撫でてしまいそうになる。
しかし、身長が高く、物理的に不可能であった為、華子が伸ばした腕はそのまま戻るだけであった。

「その……どうしてそう思ったの？」
彼には彼なりの考えがあるはずだ。

否定するだけでは駄目だ。
理解する必要がある。
彼女なりに導き出したものであった。

彼の考えを聞いてからでも遅くないだろう。
それで自身の気持ちとのすりあわせをすれば良い。

「……。」

「教えてほしい。……駄目？」
真剣な眼差し。
もしかすると、亥玄のことを少しでも分かるかもしれない。
彼を知ることは、この先に必要なことに思えた華子。

「……あまり気分の良いものじゃないぞ？」

「構わないよ。」

彼女の返答で、亥玄が話し始めた。
それは、ある男子の話であった。

二人は友人であった。
しかし、別々の学校へ進んだ二人。