はりぼてスケバン

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未だに後頭部に痛みが残っている。
彼女自身、触れていないから定かではないが、きっとこぶにでもなっているのだろう。
しかし、今伝えて騒ぎにすべきではないだろう。
そう思い、華子は隠しておいた。

「別に、お礼なんて良い。」

「あはは……。」
デジャヴュ。
以前にも似た返事をした動物好きな不良がいた。
彼女の言葉に、そんな彼の姿が脳裏に過る華子であった。

そう言えば、と華子には思うことがあった。
礼は言ったが、自己紹介をしていない。

「あ、えっと、私、鼬原華子。その……まぁ、見ての通り、黒龍高校の生徒……です。」

「尾谷。」

「え？」

「お、尾谷……です。」
ボソリ。
呟くように彼女が言う。

尾谷。
彼女が名乗った名前は聞いたことがあった。
それに、先ほどまでは冷静でなかったのでよく見ることが出来なかったが、彼女の顔は非常に整っており、これまた既視感があった。

「も、もしかしてなんだけど……生徒会長さん……あ、黒龍の生徒会長の姉妹？」
生徒会長とだけ言えば、白辰と区別出来ないだろう。
その為、華子はこのような言い方をしてしまった。

「……うん、そう。私、そっちの生徒会長の……心司の妹。……尾谷蝶華。」
心司の妹。
尾谷蝶華。
改めての名乗り。
それが彼女のフルネームだ。

「あー、なるほど……理解、理解。完全に理解したよ。もうこれ以上にないほどの理解。」
納得。
血は争えない。
顔面偏差値もであるが、不良であるというのも似るものなのだな。
そんなことをしみじみ思う華子であった。

丸雄や亥玄にも言えることだろう。
今は無関係だが、華子の周りにはどうにも無駄に美男美女が集まるようだ。
なぜだろう。
きっと、考えても彼女に答えなど見つけられないだろう。

「……もしかして、あんた何か失礼なことを思ってない？」
ジトっとした目で華子を見る蝶華。
まるで全てを見透かしているような瞳と言動。

「イエ、ナンデモナイデスヨ……。」
驚いた。
彼女は読心術の類を心得ているのだろうか？
焦りから、異常なほどカタコトになってしまう華子であった。

「……まぁ、それは置いといて……。」

「……。」
良かった。
彼女自身が話を逸らしてくれた。

「あいつら、うちの生徒達なんだよね……。だから、謝らなくて良いって言ったの。」

「そ、そうなんだ。」

「それで、あいつらが言ってたのって本当なの？」