はりぼてスケバン

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「……。」
目を逸らす。
せめてもの足掻きだ。

「……あらら、黙っちゃったよ。」
あくまでおどけて見える蝶華。
しかし、それが怒りを誤魔化すものであることなど、対象者でない華子にも分かる。

「……。」
沈黙。

「……ねぇ。」

「む、武蔵野だ……。」
このままではまずい。
そんな空気を感じ取り、言葉を漏らした。

「……は？わざわざ自分がこんな小娘に負けたって触れ回ってるの？そんなわけないでしょ。馬鹿なの？」
低い声で捲し立てる蝶華。
もう怒りを取り繕っていない。

「違う、妹の方だ！」

「妹……？三花？」

「そう、あいつだ！あいつがそこにいる鼬原って奴が立場を奪い取ったって言ってたんだ！」

「……そ、そんな……。」
蝶華達のやり取りに、戸惑いを隠せない華子。

三花が吹聴していた。
そのせいで、こんな事態になってしまったということだ。
彼が言っていることが正しいなら、そういうことになる。

「……それ、本当なの？」
蝶華が華子へ言う。

「そ、それは……。」
言葉が詰まる華子。

「ほら、嘘じゃん。こんなか弱い子が武蔵野に負けるわけないでしょ？」
彼女の情けない姿に蝶華が確信したように言う。

「……。」
蝶華の言葉に皆が静かになる。

彼女の言葉を受け止める白辰の生徒達。
そして、彼女に対して負い目のある華子。

「もし、今すぐにこいつらを退学させろって言うならすぐに動く。」

「そ、そんな……大袈裟だよ……。」
蝶華の言葉に慌てて返す華子。

「……今日はうちの生徒達が申し訳なかった……。日を改めて正式に謝罪しに行くつもり。」
深々と頭を下げる蝶華。

「おい、尾谷！」

「八咫さんに相談なしに勝手なこと言うな！」

彼女の言葉に皆が騒ぎ出す。
しかし、それらを彼女が一蹴する。

「……黙れ。そもそも、お前らが勝手なことをしたからだろ。」
倒れている者達を再び睨む蝶華。

「……。」

「……ってことで、今日はもう帰ってもらって良い？」
華子を見て言う蝶華。

「う、うん。」
そう言い、彼女は頷いた。
彼女自身、一度頭を冷やしたかった為、その提案は願ってもいないことであった。

「ごめん。……こんなことになっちゃったけどさ……。」

「……？」

「……私、鼬原さんのこと嫌いじゃないよ。……後々どうなるか分からないけど……友達になれると……思ってる……。」