はりぼてスケバン

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「おい、どうした？」

「い、いえ、失礼しました……それでは、これを頂きます。」

「おう。」

ベンチに座る。
そして、ともにコーヒーを飲む。
まだ肌寒い中、ホットを選んだのは正解であった。
身体の中からポカポカとしてきた。


「……それで？」

「はい？」

「何を悩んでるんだ？」

「ふふふ、単刀直入ですね。」

「……回りくどい方が良かったか？」

「いえ、そちらの方が辰美さんらしくて好きです。」

「なら良かった。それで？」

「……悩んでいる……というより、悩んでいた、というのが正解ですね。」

「お前は少し回りくどいな。」

「あはは、そう……ですね……。では、辰美さんに習って……。」
そう言うと、蝶華は自身の鞄を漁り、封筒を取り出した。

「……。」
それを見ると、辰美の表情が険しくなった。

退学届。
そこにはそう書かれていたのだ。

「……私が辰美さんの側にいると……迷惑になります……。」

「誰がそんなことを言った？」
空気が張り詰める。

もちろん、そんなことは誰も言っていない。
彼女自身がそう思っているだけなのだ。

「……。」

「……お前は良くやってくれている。」

「でも……。」

「お前が辞めたいと言うなら俺は止めない。好きにしろ。……だが、誰かの為にとか下らないことを考えているのならそんなもの破り捨てろ。」

「……辞めたいなんて思ってるわけないじゃないですか！」

「……なら答えは出てるな。」

「でも……でもそれだとっ……！」
他の者からの不満が募っていく。
そうなれば、内部から崩壊していってしまう。
そうならない為にも自身が身を引かなければならないのだ。

「寄越せ。」
彼女から退学届を奪い取る。
そして、それを二つに破り、そのまま投げ捨てた。

「あ、あぁ……。」

「その程度のことを解決出来なければ頭など務まらん。お前は気にするな。……お前は俺の隣に居れば良い。」

「……。」

「返事っ！」

「は、はいっ！」
ビクッ！
つい反射的に言ってしまった。

「それで良い。」
彼女の言葉に満足したのだろう。
辰美の口角が、やや上がったように見える。

「……ご、ご迷惑おかけしました……。」

「あぁ、どんどん迷惑かけてけ。それで、いつか皆の為に動け。」

「……はいっ！」
今度は反射的ではない。
しっかりと彼の言葉を聞き、彼女の気持ちの籠った返事であった。