はりぼてスケバン弐

あさまる

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通学路。
夕日に染まるそこを歩くのは、秋姫であった。

華子が黒龍高校の番長。
その事実があまりにも衝撃的過ぎて、考えもしなかった。
しかし、今なら様々な可能性を考えることが出来る。

偽物の可能性。
所謂影武者というやつだ。

なぜ彼女がそんなことをしているのか分からない。
脅されたのか、それとも何らかの恩恵を受けてのことなのか。
いくらでも考えうる可能性はある。

もう一つの可能性。
入学してすぐ、黒龍高校内の有力者に近づいたのだろう。

虎の威を借る狐。
媚でも売り、その力で黒龍の生徒達を従わせているのだろう。

その地味さで隠れているが、彼女は秋姫も嫉妬してしまうようなポテンシャルを持っている。
それに彼女自身が気づき、所謂高校デビューでもして彼らを手玉に取っているのだろう。

どちらにせよ喧嘩などしたことのない華子が番長などあり得ない。
やはり、彼女とその取り巻きの言葉は嘘だったのだ。


「なんだ、やっぱりあれって嘘なんじゃん……。華子ってば、本当に浅はかなんだから……。」
フフフ。
つい笑みが溢れてしまう。

自己解決。
確証など一切ない。
しかし、秋姫にとって、それが真実であった。

嘘偽り。
しかし、それでも彼女は今もなお青春を謳歌している。

不安がなくなった。
そして、その代わりに別の感情がそこへと入り込んで来た。

怒りだ。
彼女に対する怒りであった。
しかし、だからといって、どうするということはない。
いや、どうすることも出来ないのだ。

相手は仮にも黒龍高校の番長。
下手なことをしようものなら報復に何をされるか分かったものではない。

苛立ちが徐々に落ち着いていく。
そして、代わりに訪れるのは自己嫌悪であった。


ある日。
徐々に暗くなりつつある通学路。
それは、彼女の心を表しているようであった。

考えないようにしよう。
そう思えば思うほどに考えてしまう。
どんどん坩堝に嵌まっていってしまう。

自身よりも下だと思っていた華子。
そんな彼女が青春を謳歌している。

対して、今の自分はどうだろう?
自問自答する秋姫。
そんな答えなど分かりきっている。

憂鬱。
俯きながら歩を進める。

ため息。
一体何度目だろうか。

不幸だ。
不運だ。
自身の運命を恨む秋姫。

そんな彼女へ近寄る影。
それは、真っ直ぐに向かって来る。
目的はもちろん、秋姫だ。
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