はりぼてスケバン弐

あさまる

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「……え?いきなりですね。」
本当にその通りだ。
突然の質問に、戸惑う華子。
その意図が全く分からなかったのだ。

「いや、ごめんね、深い意味はないよ。鼬原さん、授業態度も理解度も他の生徒よりもずば抜けて良いからさ、他の高校でも十分通用出来たと思うから……。」

「あ、あはは……ありがとうございます。」
苦笑いする華子。
ここまで言っていいものだろうか。
これは聞かなかったことにしておいた方が良いだろう。

「それで?」

「え?」

「ほら、教えてよ、ここだけの内緒にするからさ。」

「あ、あはは……。」
駄目だ。
笑って誤魔化すことが出来なかった。

華子は彼女自身の過去を話した。
病弱で、授業もろくに受けれなかった。
友人も、秋姫しかおらず、たまに登校出来ても楽しくなく、ネガティブであったこと。
全て話した。

「そ、そっか……なんか意外だなぁ……。」

「そうですか?」

「今の鼬原さん、明るいし皆の中心だし……。」

「え?そ、そんな……まぁ、それほどでもありますけど……。」
えへへ。
急に褒めてもらい、ふにゃふにゃと表情が緩む華子。

気分が良い。
それが、彼女の足元を掬う形になってしまう。

「いやいや、凄いよ、鼬原さん!」

「え?そ、そうですか?へへへ……そんな褒めても何にも出て来ないですよー?……あっ、ポケットに飴あったから食べます?」
更に表情が緩む。
これ以上にないほどだ。

「いやいや、大丈夫だよ。いやー、本当に凄いっ!凄いよ、鼬原さん!そんな鼬原さんにお願いがあるんだけど……。」

「えー?もう、仕方ないですねー、良いですよ?何ですか?」

これが良くなかった。
了承するにしても、その内容を聞いてからにすべきであったのだ。
しかし、この言葉を後悔することになると、今の彼女が知るわけがなかった。

「ほら、あなたの取り巻きで、藤柴君いるでしょ?」

「もう!先生、取り巻きじゃなくて友達ですよ!」

「ごめん、ごめん。その友達についてなんだけどね?」

「え?はい。」
丸雄がどうしたのだろう?
彼女の次の言葉を待つ。

「他の大半の生徒はもう手遅れだから諦めがつくんだけどね?」

「手遅れ。諦め。」
衝撃の事実に、単語を反芻してしまう華子。

「彼に関しては補習と小テストをすればなんとかなるんだよね。」

「補習。小テスト。」
未だに続く反芻。
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