はりぼてスケバン弐

あさまる

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ある日の休日~閑静な住宅街にて起こる惨劇~

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「……た、辰美さん、辰美さん。」
こそこそ。
一方で、蝶華は辰美へ声をかけていた。

「……?」
辰美はそれに反応し、無言で彼女を見る。
その手には未だ飲みかけのチューハイ。

違和感があった。
それは、これから起こる惨劇の気配を感じていたからだろう。

背筋を伝う冷や汗。
そんな不安を拭い去る為、彼は更にそれを飲んでいってしまった。

「辰美さんは、その……やっぱり料理が出来る女子の方が良いですか?」

「……え?あ、あぁ。多分そうじゃないか?」
なぜだか身体が暑い。
それに、思考が上手く回らず、蝶華の話が入ってこない。
適当に肯定する辰美であった。

話し半分な彼の言葉。
それを真に受けてしまった。

「っ!?は、華子さん!」
彼の言葉を聞くや否や、華子の元へ向かう蝶華。

「うわっ!?どうしたの?」

「りょ、料理!料理を教えて下さい!」

「え、あ、うん、良いよ。」
彼女の押しの強さにたじろぐ華子。
以前、三花対策の特訓に付き合ってもらった恩がある。
断る理由などなかった。

「あ、ありがとう、華子さん!」
歓喜余って抱きつく蝶華。

「あはは、大袈裟だなー、恩返しだよ、恩返し!」

「感謝してもしきれないよ、本当にありがとう、華子さん!」

「大丈夫、大丈夫!……そうだ、この際だから思い切って呼び捨てにしようよ!私もするからさ!」

「……う、うん……えっと、は、華……子……。」

「うん、蝶華!」

微笑みと、満面の笑み。
未成年飲酒ということを知らなければ微笑ましい場面だろう。


飲食が続く。
そして、冒頭に戻る。

他の者達は唸り声を上げ、床に伏している。
そんな中、華子と蝶華は異様なテンションで会話をしている。

「もー、皆お昼寝するのー?私まだ眠くないよー!」
飲酒。

「あはは、辰美さん、疲れてたからねー、そっちの二人も華子を守る為に頑張ってたみたいだしー!」
飲酒。

「そっかー、なら寝かせて上げよー!」
更に飲酒。

「そうだねー。」
更に飲酒。

空き缶がどんどん積み上がっていく。
それに比例するように彼女らもフラフラとしてきた。
その不安定さは、思考の緩みにも直結するものであった。


「恋話!」
思いつきだ。
きっと、華子の脳を介さず脊髄反射で出たものだろう。

「え?」

「恋話がしたい!」
バンバン!
床を叩きながら鼻息荒い華子が言う。
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