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蛍蝉と有鞠一族
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利奈達がたどり着いたのは、森の入り口。
そこにはすでに、利奈達を待っている者がいた。
「ふう……ようやく着いた。」
「うん。」
「我が主、利奈様……お待ちしておりました。」
利奈達へ向けられた落ち着いた声。
深々と、二人に頭を下げる人物。
利奈は、彼女とは初対面ではない。
そのはずだ。
しかし、数年会っていない為、確証が持てない。
だからこそ、不安そうに口を開く。
「え、えっと……違ってたらすみません……。花府井先輩……ですよね?」
「はい、お久しぶりです、利奈様。」
「ど、どうもです……。」
良かった。
合っていた。
自身の記憶力に内心感謝する利奈であった。
「天菜様にも負けず劣らず、相変わらずの美しさ……感服致します。」
花府井。
利奈にそう呼ばれた彼女がまた深々と頭を下げる。
決して皮肉などではないだろう。
しかし、それはそうと、随分と無茶なお世辞だな。
彼女の言葉を聞く利奈は、内心そう思った。
天菜のように大人びた女性だ。
花府井梨居菜。
それが、彼女の名前だ。
天菜を見た後では驚くことはない。
しかし、それでもこれほどの田舎にそぐわない美人であることには違いなかった。
だから、そんな彼女から美しいと言われても嫌味しか聞こえない。
しかし、彼女のことだ、きっと他意はない。
そのはずだ。
「りい、その呼び方は止めてって言ってるでしょ?」
呆れた様子で梨居菜へ言う天菜。
不満。
まさにそれを体現したような表情だ。
りい。
天菜が呼ぶ彼女のニックネームだ。
「……は、はい。承知致しました、我が主。」
オロオロ。
目が泳ぐ。
やってしまった。
露骨に焦る梨居菜。
「うん、分かってないね。」
ニコッ。
笑いながら返す天菜であった。
笑顔。
しかし、目が笑っていない。
「あっ……は、はい……。えっと……あ、有鞠さん。」
「……あ、あはは……。」
二人のやりとりを、ただ苦笑いで見るしか出来ない利奈であった。
「そ、それでは……我が主……改め有鞠さんと利奈様、参りましょう。」
「うん。」
「……私も出来れば様は止めてほしいです……。」
やや遅れて言ってしまったことを自責しつつ、利奈が言う。
「わ、分かりました……利奈……さん。」
梨居菜はぎこちないながら、利奈の要求を飲んだ。
歩き出す三人。
わくわくする利奈と比較的冷静な天菜と梨居菜。
そこにはすでに、利奈達を待っている者がいた。
「ふう……ようやく着いた。」
「うん。」
「我が主、利奈様……お待ちしておりました。」
利奈達へ向けられた落ち着いた声。
深々と、二人に頭を下げる人物。
利奈は、彼女とは初対面ではない。
そのはずだ。
しかし、数年会っていない為、確証が持てない。
だからこそ、不安そうに口を開く。
「え、えっと……違ってたらすみません……。花府井先輩……ですよね?」
「はい、お久しぶりです、利奈様。」
「ど、どうもです……。」
良かった。
合っていた。
自身の記憶力に内心感謝する利奈であった。
「天菜様にも負けず劣らず、相変わらずの美しさ……感服致します。」
花府井。
利奈にそう呼ばれた彼女がまた深々と頭を下げる。
決して皮肉などではないだろう。
しかし、それはそうと、随分と無茶なお世辞だな。
彼女の言葉を聞く利奈は、内心そう思った。
天菜のように大人びた女性だ。
花府井梨居菜。
それが、彼女の名前だ。
天菜を見た後では驚くことはない。
しかし、それでもこれほどの田舎にそぐわない美人であることには違いなかった。
だから、そんな彼女から美しいと言われても嫌味しか聞こえない。
しかし、彼女のことだ、きっと他意はない。
そのはずだ。
「りい、その呼び方は止めてって言ってるでしょ?」
呆れた様子で梨居菜へ言う天菜。
不満。
まさにそれを体現したような表情だ。
りい。
天菜が呼ぶ彼女のニックネームだ。
「……は、はい。承知致しました、我が主。」
オロオロ。
目が泳ぐ。
やってしまった。
露骨に焦る梨居菜。
「うん、分かってないね。」
ニコッ。
笑いながら返す天菜であった。
笑顔。
しかし、目が笑っていない。
「あっ……は、はい……。えっと……あ、有鞠さん。」
「……あ、あはは……。」
二人のやりとりを、ただ苦笑いで見るしか出来ない利奈であった。
「そ、それでは……我が主……改め有鞠さんと利奈様、参りましょう。」
「うん。」
「……私も出来れば様は止めてほしいです……。」
やや遅れて言ってしまったことを自責しつつ、利奈が言う。
「わ、分かりました……利奈……さん。」
梨居菜はぎこちないながら、利奈の要求を飲んだ。
歩き出す三人。
わくわくする利奈と比較的冷静な天菜と梨居菜。
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