蟻喜多利奈のありきたりな日常2

あさまる

文字の大きさ
12 / 31
蛍蝉と有鞠一族

3

しおりを挟む
きっと、本来ならば、暇つぶしとして一過性の話題となるのがやっとだろう。
しかし、そうはならなかった。
それはなぜなのか。

有鞠天菜。
彼女は村神とよばれ、村の人々から慕われている。
そして、そう呼ばれるに至る逸話が存在していた。

村を襲う自然災害。
そんな危機を予知し、未然に防ぐ方法を村人達へ伝えていた。
最初は皆、信じなかった。
しかし、度重なる彼女の予知は全て的中し、その超自然的な力を信じるものは徐々に増えていった。
そして、いつしか皆が信じるようになった。
最終的に、彼女は村の守り神、村神と呼ばれるようになったのだ。

今年。
そして、今日。
この村中で蛍蝉が一斉に飛び立つ。
そう広めたのが、この場にいる天菜であったのだ。
その中でもここは、皆が知らない天菜達だけの秘密の場所なのだった。
故意に皆には伝えなかったのだ。


「……凄い綺麗。」
ボソリ。
利奈の思考が彼女の口からノンフィルターで漏れ出る。

綺麗。
それは、紛れもない事実であった。
様々な表現方法がある。
しかし、どれも適切ではない。
具体的ではなく、抽象的なものとなるが、それが的確なものであった。

「……利奈ちゃん?」

「うん?」

「これを……この景色、見れて良かった?」

「うん!最高だよ!」
それは、嘘偽りのない利奈の本心だ。

「そっか……良かった……。」

「えぇ、良かったです。」

利奈の返答に満足したのだろう。
天菜と梨居菜は微笑んだ。


「……さて、いくら夏といってもこのままじゃ風邪になっちゃうから戻ろっか。」
どれくらい時間が経ったのだろう。
そんな時、天菜が口を開いた。

「うん、そうだね。」

「はい、参りましょう。」

二人も彼女に賛同し、歩き出した。
元来た道を歩き、帰って行く。

行きに一度通ったということもあり、ずんずんと進む利奈。
そして、そんな彼女の後に着いて行く二人。

前を歩く彼女の後ろ姿に見惚れる天菜が口を開く。
「りい?」

「はい。」

「……やっぱり、私……利奈のこと……取り戻したい……。」

「はい。」

やりとりをしていくうちに利奈との距離が空いていく。
それほど会話に集中してしまっていたのだ。

「協力してほしい……。」

「はい。」

「……人を集めて。」

両者の間の空気が変わる。
張り詰めた緊張感。
背筋が自然と伸びるようなひんやりとする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...