蟻喜多利奈のありきたりな日常2

宣戦布告

4

正面から見たわけではない。
しかし、彼女らは皆同じ服を着ていたのが分かった。
それに、どこのかは分からないが、学校の制服であるように見えた。

利奈の見知った者達。
そして、知らない者達。

「……え？て、天菜お姉ちゃんと花府井先輩？」

そこにいたのは、天菜と梨居菜。
そして、彼女らと同世代の少女達であった。

「……これ、あいつらよね？」
窓の吹き飛んで来た方向。
つまり、利奈の部屋を睨む天菜。

「そう……でしょうね……。機械と……何でしょう
？見たことのない生命体ですね。何でしょうか？」
彼女と同じ方を見て梨居菜が呟く。

「うーん、よく分かんないけど……。」

「私達皆で行けば……。」

「勝てるんじゃないかなー？」

そっくりな見た目。
それぞれ左右に結ばれたサイドテール。
そんな彼女らが交互に話す。

「全くですわ！わざわざ何時間もバスや電車に揺られたのですもの！そうでなければなりませんわ！」

「……でも、返り討ちにあって……ただ恥を晒すだけになるかもしれません……。」

「もー！壱姉は怒り過ぎー！麗姉は悲観過ぎー！何とかなるってー！」
ケラケラと笑い、前者二人に言う。

「……利奈ちゃん、安心してね。」

「……え、え？」

「これから、私達が利奈ちゃんを助け出すから！」
天菜の決意。
それは確固たるものであった。


数日後。
夏休みが開けた。
それでも尚、その暑さを引き摺っている。

窓の外では相変わらず蝉が大合唱している。
平盆高校の生徒会室。

「これはマズイ……。」
机に項垂れ泣き言を漏らす者。
生徒会長である、海部照蜜柑だ。

エアコンの冷房がしっかり効いている。
それなのに、蜜柑の頬を、汗が伝った。

「……で？生徒会長様はどうするの？」
蜜柑とは対照的。
着崩した制服で、二人がけソファーに寝転び質問する。
蜜柑の妹であるあずさだ。
不安げな彼女とは違い、どこかこの状況を楽しんでいるようにも見えた。

胸元には熊のぬいぐるみ。
夏休みの間に蜜柑に買ってもらったものだ。
その見た目に反して彼女はそれを四六時中持ち歩いて校内にも持ち込んでいた。

「……あずさ、あんたね……他人事みたいに言ってるけど……そんな悠長にしてられないよ？」
ノソリ。
起き上がり、姿勢を正しくする蜜柑。

「うん？姉様、それどういうこと？」
それはどういうことだろう？
あずさの中で、少し興味が出て来た。