蟻喜多利奈のありきたりな日常2

宣戦布告

5

「これの意味、本当に分かってるの！？」
あずさの寝ている方へと一枚のプリントを示す。
さながら某時代劇で印籠を見せつけるような勢いのあるものだ。

「……？」
何々？
ノソノソと起き上がり、マジマジとそれを見る。

あずさの目が、右へ左へ動く。
徐々にその意味が分かると、彼女の顔が真っ青になっていった。

「やっと分かった？」

「なっ！？ななななななんじゃこりゃあー！？」
某刑事ドラマの自身の腹部から出血した刑事のように叫ぶあずさ。
その声は、室外の廊下を歩く生徒の耳にも届き、腰を抜かしている者もいた。

「もう……うるさっ……。」

「で、でも！これ、なんで……！その……！」

「……だから言ったでしょ？あんたも他人事じゃないの。」

「……わ、分かった……。みかえるや、我が義妹を呼んで来る。」

「えぇ、お願い。」

あずさの言う二人。
みかえるは、天枝美佳絵。
そして、我が義妹とは、愛熊佐多江のことだ。

二人とも、利奈のクラスメイトである。
ちなみに、あずさと佐多江は義理の姉妹などではない。
両者同意の上でそのような呼び方をしているだけだ。


あずさが二人を呼びに行ったことにより、蜜柑は一人になった。
そして、自身の手にあるプリントを見る。

「……ただでさえうちは正体の分からないのがいて大変なのに……。」

平盆高校、御亭御蔵高校による合同体育祭実施のお知らせ。
そこには、そう記されていた。