蟻喜多利奈のありきたりな日常2

あさまる

文字の大きさ
21 / 31
蟻喜多利奈争奪戦に対する防衛準備(上)

3

しおりを挟む
「……はい。」
少し不満げ、と言うより不安そうに美佳絵が答えた。

「ごめんね、二人とも……。絶対に後で話すから……。」

ここまで海部照姉妹が弱々しい姿を見せるのは、珍しい。
それほどに、有鞠が恐ろしい存在なのだろうか?
しかし、それだけではないように思える。

まだ何か隠している。
きっとそうなのだろう。
しかし、それはまだ言えない。

美佳絵と佐多江。
彼女らが微力だと思ったのか。
それとも、信用していないのか。


そして、時は戻り現在。
佐多江はあずさと会うことが出来ていた。
しかし、間もなくクラス毎の朝礼が始まる時間になる。
それほど話すことは出来ないだろう。

「すみません、姐さん。」

「いや、こっちこそごめん。」

謝罪から始まる二人。
何とも悠長なものだ。

「昨日のことなんですけど……。」

「あー……あはは……その……。」

「結局、姐さん達と有鞠……今回はなんで争ってるんですか?」
単刀直入。
先ほどまでののんびりした雰囲気から一変した。

「あー……やっぱり気になる感じ?」
あはは。
苦笑いのあずさ。

「まぁ、事が事ですし……。」

「今まではまぁ……この土地……だね。」

「この……つまり、平盆市?」

「そう。それで、私達が勝った。……それは覚えてるよね?」

「……。」
無言で頷く。
しかし、佐多江が知りたいのはそのことではない。
過去のことではないのだ。

「その時に、奴らの村から流れて来た者達、いたでしょ?」

「ま、まさか……。」

「そう。」
制服の胸ポケットから折りたたまれた紙を取り出す。

彼女がこのことを追及することが分かっていたのだろう。
すぐに取り出しやすい場所が、そこであった。
そして、それを広げると、佐多江の眼前に持っていった。

「……平盆高校、御亭御蔵高校による……合同体育祭実施のお知らせ?」

「うん。きっと、これで向こうが勝ったら……。」

「蟻ちゃんが取られる……ってことですか?」
蟻ちゃん。
利奈のことだ。

「そうだね。」

「な、なるほど……。」
ボソリ。
呟くように佐多江が言う。

利奈がいなくなる。
これは、ある意味ではチャンスなのではないか?
ふと、彼女の脳裏に、そんな言葉が過る。
悪魔である彼女が、脳内の悪魔に惑わされている。
なんと皮肉なことだろう。

「……まぁ、義妹の考えていることも分かるよ。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

せんせいとおばさん

悠生ゆう
恋愛
創作百合 樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。 ※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...