【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

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24.血塗れの戦場

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外に出て、惨憺たる有様に声を失う。

日は沈んでいたが、月が冴え冴えと輝いて、船上の様子は明らかだ。

そこら中血まみれで、なんなら死体だらけでもあった。
死んでいると判断したのは、呻き声がどこからもしなかったからだ。

「げっ、レーナ!」
「おい誰だ連れてきたの」

船員たちは私に気付くと、死体を運んだり甲板の血を洗い流す作業を止めて、惨状から目隠しをするように私の周りに集まった。

「どうした、足りない材料でもあったか?」
「一緒に探してやるよ。ホラ、戻ろう」

安心させるためにだろう、優しい口調で船内に戻るようにあの手この手で促す。
けれどその姿は皆一様に赤黒いまだら模様で、逆効果でしかない。

「あっ、アラン! 馬鹿おまえこんなとこにレーナ連れてくんなよ!」
「いや、だって、レーナ、足、はっやい……」

私の後ろから出てきたアランが息を切らせながら弁明する。
この惨状に少しも動揺を見せていない。慣れた光景なのだろう。
敵襲の知らせがあった時からこうなることを知っていた。だから私を止めたのだ。

「アランは悪くない。私が勝手に……」

そこまで言って言葉に詰まる。

何を言えばいいのかわからなかった。
これだけのことをした人たちだというのに、表情には私への心配がありありと浮かんでいて、少し頭が混乱した。

「……何が、あったの」

なんとかそれだけ口にすると、みんなが困ったような顔をして視線を交わし合った。

「あー……どっかの海賊がいきなり突っ込んできてなぁ」
「勝手に接舷して乗り込んで来たもんだから……」
「なんていうかこう、応戦? したみたいな?」

言いづらそうに、それぞれが短く言ってセリフを継いでいく。
さすがに嘘をつこうとする人はいないらしい。目の前の現状が、それを許さなかった。

「みんな、ころしたの」
「いやだってな? 遺恨を残すと後々やりづらくなるし、」
「好きでやってるわけじゃないんだぜ? いやほんとに」

私の言葉にみんなが慌てる。
責めるつもりはなかったが、そう聞こえてしまったのかもしれない。

仕方のないことだとは理解している。
ルール無用の海上では、やらなきゃやられてしまうのだ。
過剰防衛なんて言葉はこの世界に存在しない。
彼らの言う通り、中途半端に慈悲を掛けて追い返せば手痛い仕返しが待ちうけている。


「お嬢様にゃきつい光景だろ」

少し離れたところから声が聞こえた。
ゆるゆると視線を向けると、ウィルが立っていた。
誰よりも夥しい量の返り血を浴びて、月光の下で獰猛に笑う。

それは異様なほどの存在感だった。
毎晩私の部屋で、他愛のない話をしていく男とはまるで別人に見える。

きっとこちらこそが本性なのだろう。

何が平和な日々だ、ここは海賊船だというのに。

すっかり警戒心を解いた愚かな小娘に、思い知らせるようにウィルが笑みを深くする。

「腰が抜けたなら部屋まで運んでやろうか、お姫様」

服が血で汚れちまうがな、とわざとらしく嘲るように言って近づく。

「……結構よ」

キッと睨みつけてくるりと背を向ける。

戦闘訓練をしていても、本物の戦場は初めてだ。
衝撃も強かったし、足が竦んだのも否定しない。
だがそれで動けなくなるほどやわな鍛え方をしてきてはいないつもりだ。

強がりも多分にあったが、しっかりとした足取りで船内へと戻る。


閉まりかけの扉の向こうから、愉快そうに笑う声が背中に刺さった。
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