【完結】追放令嬢は海賊生活を謳歌する

当麻リコ

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84.海賊島、再び

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三日ほどでようやく身の回りのことができるようになって、退院することになった。
もちろんまだ完治はしていないが、お尋ね者の身の上でもあるし、なにより闇医者に近いこの病院の主にさっさと出て行けと追い出されてしまったのだ。

歩けると言う私の意見を無視してウィルは私を担ぎ上げ、その雑な運び方がなんだか懐かしくて笑ってしまった。

「もっと丁寧に運んでよね人攫い」
「もう俺のもんだっての」

船に降ろされて文句を言うと、シレっと言い返されて笑い合う。

体調のせいで思うようには動けなかったが、ようやくいつもの日常が戻ってきたのが嬉しかった。

船は一路海賊島を目指して進み、船内で毎日リハビリに励むうちに徐々に体力が戻っていった。
胸を貫いた銃弾はキレイに貫通し、急所をギリギリ避けていたために後遺症も残らないらしい。
船に残る傷跡は悲惨なものだったが、それも海賊島の造船所でピカピカに生まれ変わることだろう。

航行中は平穏で、大したトラブルもなくのんびりと進んだ。

アルは何もなかったみたいに私に話しかけてくれて、たまに冗談みたいに口説いてくる。
でもそれはいつもウィルがいる目の前でのことで、キレるウィルに楽しそうに笑うあたり、たぶんからかって遊んでいるのだろう。

一度二人で話す機会があった時にアルが教えてくれた。
ウィルは私の意識が戻る前に病院でアルと話をしたらしい。
内容は教えてくれなかったけれど、二人で楽しそうに喧嘩したり笑ったりしているのを見ていると、大丈夫なのだと思えた。

ウィルとの距離感は以前とさほど変わらず、やっぱり夢だったのかと錯覚しそうになる。
けれどいつもの夜間訪問時に、試しに好きよと言うと額にキスを返してくれる。
それだけでだいぶ舞い上がってしまう安い女だ。

抱く抱かないの話はどこにいってしまったのだろうと首を傾げることもあるが、ウィルがその気にならないのならばしょうがない。

ウィルに気持ちが伝わって、気持ちを返してもらえるというだけでかなり幸せな日々だった。

徐々に実感を得て、怪我も順調に良くなってきたところで海賊島に辿り着いた。



久しぶりの他海賊団との交流は騒がしく、昼間だと言うのに広場でみな酒瓶を片手にお祭り騒ぎだった。
船員たちは皆好き勝手に散らばって派手に飲みまくり、私も顔見知りの間を渡り歩いてハイペースで飲んだ。
海軍とドンパチを繰り広げたことや私が死にかけたことはいつの間にか広まっていて、前回知り合った人たちに物凄く心配されてしまった。

夕方になると、私たちの上陸を知りラナが駆けつけてくれた。
抱擁を交わし、聞かれるままに傷の具合を説明する。
彼女は私の服をあちこちめくって傷の状態を確かめながら、傷跡がなるべく残らないようにと様々なアドバイスをくれた。

「怪我しちまうのはしょうがないけどねぇ、なるべく綺麗にしときなよ」
「うん、気を付ける。ラナってすごい綺麗な身体してるもんね」
「うふ。まぁね。いつ何があるかわかんないからさぁ」

色気たっぷりに微笑まれて思わず赤面してしまう。
女から見ても十分に魅力的な女性なのだ。その艶やかさは衰えることを知らない。

「今日だってメンテナンスバッチリ。だから今夜あんたの船長借りていい?」

ラナが無邪気に聞いてくる。
海賊島に来るたびラナとそういうことをしていたのだろうから、彼女にとっては普通の質問なのだろう。

本当はすごく嫌だけど、私が大怪我をしたせいで前回の上陸でウィルは色街に行けていない。たぶんすごく溜まってるだろうし、私に食指が動かない以上はしょうがないことかなと、無理に笑顔を作った。

「どうぞどうぞ、ぴぇっ」

答えた瞬間に後ろ頭をパコンと引っ叩かれて妙な声が出る。

「どうぞじゃねぇ」

背後からウィルが出現してびくりと身体が強張った。

「おまえも分かってて聞くな」
「あはは。ウィルがどういう反応するか見たくて」

二人の会話がよく分からず首を傾げていると、ラナが意味深に笑みを深めた。

「目がね。ずっとレーナを追ってるから。独占欲まみれの」
「えっ」
「うるせぇほっとけ」
「前もなかなかアレだったけど、今は完全にやばいやつだわ」
「どういうことですか前ってなんですかやばいって何がですか」

なんだか重大な秘密を教えられているような気がして思いきり詰め寄ってしまう。
ラナはケラケラと笑って、ウィルは迷惑そうに顔を歪めた。

「いいからもうおまえこいつと喋んな。淫乱が移る」
「ちょっとウィル失礼よ⁉」
「別にあんた限定なら淫乱でもいいんじゃないの?」

ウィルの失言を気にした様子もなくラナが言う。

「ばぁかそういうのは自分で仕込むからいいんだろうが」
「へえっ?!」

ニヤニヤ笑いながらウィルが言って、私の腰を抱いて密着した。
動揺のあまり変な声を上げた私に、ラナが噴き出した。

「あー出た出た。周囲に所有者アピールですか」
「ったりめーだ。やらしい目でこいつ見やがってみんな殺すぞ」

据わった目で周囲見回しながらウィルが言う。
たぶん、ウィルもラナも見た目じゃ分からないけれど相当に酔っている。

「ま、しょうがないんじゃん? 随分色気出たもん。これでまだやってないんでしょ?」
「うん。やりたすぎて死にそう」

ため息をつきながら私の頭に頬を乗せて体重を掛けてくる。
会話の内容にアワアワしているのは私だけで、二人は大人な会話を私越しに繰り広げた。

「身体気遣ってってやつ? まったく殊勝になったもんだ」
「そう。純愛なんだ。かわいいだろ」
「いやめちゃくちゃ気持ち悪いわ」

私を抱きしめながら言うウィルに、ラナが言葉通りに心底気持ち悪そうに顔を歪めた。

「あの、なんていうかすごく居た堪れない気持ちなんですけど」

ウィルに巻き付かれて硬直したままなんとか発言をすると、二人がドッと笑い声をあげてようやく私を解放してくれた。

どうやら私は酒の肴にされたらしい。
セットでからかうなんて、まったくひどい人たちだ。
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