【完結】ヒロインの女が死ぬほど嫌いなので悪役令嬢を全うします

当麻リコ

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2.

「……それで? エステルさんは私が誰をいじめたと言っているのです?」
「だからエステル自身を、」

まんまと引っかかって名前を言ったことに気付いて、ハッとした顔をする。
おせーわ馬鹿。

「へぇ。エステルさんがエステルさんをいじめていた人間の証言をご自分でされた、と。結構度胸ありますね。そんな人が果たしていじめられますか?」
「彼女の名前をキミが出した時点で真実だという証拠だ! 心当たりがあるからその名を出したのだろう!」

いやだからおめーが名前言ったんだっての。

「他にも証拠は山ほどある!」
「例えば?」
「彼女の腕につけられた傷だ」
「それを私が付けた証拠は?」
「……ない、が、探せば目撃者がいるはずだ」
「いたとしても私はやっていないので確実に偽証ですけどね。他には?」
「ビリビリに破られたノートや教科書がある!」
「だからそれを私がやったという証拠は?」
「ぐっ……、それはあとから探す!」

そういうの捏造っていうのでは。
要するにいじめられてたっぽい小道具はあるけれどそれを私がやったという確たる証拠はないらしい。
ホントお粗末。
単純馬鹿にもほどがある。
おおかたエステルに泣きつかれて、丸ごと信じてこの暴挙に出たのだろう。

しかもたぶんこんな公の場でぶちまけたのはあの女の誘導に違いない。
あの女、マジでいつか絶対泣かす。

「私を陥れるための強力な証拠とやらはそれでおしまいですの?」
「お嬢、それくらいにしといてやったら?」
「ええ? イヤよ、ようやくちょっと面白くなってきたところなのに」

反論できず涙目のトリスタンに少し溜飲が下がってきたところだと言うのに、従者兼護衛のヨシュアに止められる。
一応身分的には私より下だけど、物心ついた頃から一緒にいるから気安いものだ。

「……まぁいいわ。私がいじめの犯人だと断定できる証拠が出てきたら教えてちょうだいね」

楽しみにしているわ、と優雅に微笑み一礼する。

「あ、そうそう」

思い出して踵を返そうとした足を止める。

「婚約破棄でしたわね。手続きはそちらでどうぞご自由に。あなたと結婚しなくてもこちらには露ほどもダメージはありませんの」

ではごきげんよう。

今度こそ背中を向けて歩き出す。
その少し後ろから、笑いをかみ殺しながらヨシュアがついてくる。

スッキリした気持ちで扉をくぐり、閉まるのと同時にぱちんとヨシュアと手を合わせた。

「いえーい」
「お見事」
「ようやくあいつに関わる時間を削ることが出来るわね」
「いやホントしんどそうだったもんねお嬢」
「退屈この上なかったわ」
「あいつとの会話中いっつも頭の中で金勘定してたでしょ」
「バレてた?」

舌を出し肩を竦める。

ヨシュアが楽しそうに声を上げて笑った。
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