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第1章 魔術学院編

第7話 皇女陥落計画

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 実技訓練が終わった後、へとへとで部屋―セレスの家に帰る。

 セレスと俺の部屋に入ると、ベッドの上で大の字になる。

 今日の実技訓練はさんざんだったな。

 一応、念のためにセレスに、魔術の威力を万分の一に抑えてって言っといたが、別の意味で裏切られた。

 


 実技訓練に入り、俺らは訓練場に集合する。

 本日は中級魔術―火の壁ファイアウォールを使ってみましょうってなって、みんな張り切って詠唱を唱える。

 ちなみに実技訓練の評価は成績の大部分を占めているから、みんな集中して取り組んでいる。

 俺はしばらくじっとして、みんなの様子をうかがっていた。

 実技訓練は一年生の4つのクラスの合同訓練だが、それぞれのクラスの練習内容が異なるから、今回は俺のクラスーラファエルの練習風景だけを見ることにした。

 俺のクラスの名前がラファエルだと教えてくれたのもエリルで、多分、マリア教師は嫌がらせして教えてくれなかったのだろう。

 とりあえず、一番すごい人を見つけて、その人より少しだけ上手く火の壁ファイアウォールを発動させるという算段だ。

 上手に立ち回らないと、下手に目立って疑われてしまうかもしれないからな。

 案の定、平民の4人はいとも容易く火の壁ファイアウォールを発動させて、目の前に立派な火でできた壁を作り上げた。

 よく見てみたら、その中には、俺が食堂で助けた女の子―レイナの姿があった。彼女のファイアウォールはほかの3人より分厚く、頭一つ抜きん出ている。

 彼女はちらちらとこっちを見てきたから、俺は手を振ってみたが、彼女はすぐに目をそらした。

 ちょっとショック。

 生意気なラーちゃん、可憐なアイリスと情報屋のエリルもさすがといったところか、見事に火の壁ファイアウォールを発動させ、密度の高い火の壁を顕現させた。

 ほかの生徒は火の壁ファイアウォール自体を発動させられなかったり、できたとしても火の塊としか言えないようなものだったり。

 よし、この中で一番厚い火の壁ファイアウォールより少しだけ立派なやつを作ろう。

 思念同調リンクを通して、セレスに呼びかける。

『セレス、俺のイメージした火の壁ファイアウォールは伝わったかな』

『はい~』

『じゃ、頼むよ』

火の壁ファイアウォール

 見事に期待を裏切られた。悪い方向に。

 円形の火の壁が現れて、俺を囲む形で燃え上がっていた。なんも見えないから厚さは分からない。一言で言えば熱い。

 火に囲まれて、周りは見えないが、声が聞こえてくる。

「さすがフィリ様、素敵です」

 アイリスは絶賛。

「フィリってすごいな」

 エリルは感心。

「フィリ様! さすが私の英雄です!」

 レイナはわけ分からないことを口走る。

「ふーん、私より目立つとはいい度胸ね。ゴキブリのくせに」

 ラーちゃんは罵倒。

「「「うわー」」」

 ほかの生徒も感嘆の声を漏らす。

 大丈夫、俺は寛大な男だ。これにはきっとセレスなりの理由があるだろう。一応理由を聞いておくか。

『セレス、これってなに?』

火の壁ファイアウォールだよ?』

『いや、なんでこんな形になった?』

『絶対防御みたいな~』

 うん、俺が間違っていた。寛大という言葉を俺の辞書から削除しよう。

『今すぐ火の壁ファイアウォールを消せ!』

『えっ?』

 それはこっちのセリフだ!

『いいから消せ!』

『はい……』

 火の壁ファイアウォールが消えたとたん、レイナは走ってきて、俺に抱き着いてきた。

「フィリ様!」

 あれ、なんかイメージが変わったな。俺が助けたときは怯えてて人見知りで遠慮がちって感じだったはずだが。だれが彼女を変えたんだ?

「なにをしているのですか?」

 アイリスがそういうと、レイナは怯えた様子で渋々俺から離れる。

 気のせいか、アイリスの声は氷みたいに冷たい。

 いや、気のせいだろう。天使が生まれ変わったようなアイリスがそんな声を出すわけないじゃない? 俺ってば、神経質なんだから。

「フィリ、これで評価はきっとSだろうね!」

 エリルの言葉に続いて、クラスのみんなが俺に拍手を送った。ラーちゃんとその取り巻き以外はね。

 やっぱりエリートだと尊敬されるのか。なんか俺のマリエス学院に対するイメージと違うな。なんか、こう、もっと陰湿な嫉妬が飛び交っている感じだと思ってた。

火の壁ファイアウォールじゃありません。評価はDです」

 担任で実技訓練担当のマリア教師はさりげなくそう告げた。

 D!? 下から2番目の評価じゃないか!

 不正だ! どう考えても不正評価だ! まあ、俺が言えることじゃないけどな。

 にしても、このままマリア教師をほっておけば、学院首席になる目標が達成できなくなる。手を打たないと。



 セレスはスケスケの白いネグリジェにセクシーな黒い下着の姿でベッドの上に上がって、俺の上に乗った。

 軽いから、まあいいか。

「なあ、セレス、ラーちゃん、いや、ティエリア皇女にキスしたいから、どこかに拉致って、おとなしくさせてくれないか?」

 俺がそういうとたん、セレスはばかなの? と言わんばかりの顔をして真剣な目で俺を見つめた。

「ばかなの?」

 訂正しよう。言わんばかりではなく、こいつ、口に出して言ったよ。

「えっ? 皇女を俺のS級魔術で惚れさせといて損はないだろう。むしろ俺の地位の向上につながるし」

「そういうことじゃない」

「えっ? どういうこと?」

「考えてみて? もしそんな強引な方法でキスしたら、どうなると思う?」

「セレスみたいに甘えてくる?」

「ばかなの?」

 ばかなの? って二回も言われたよ。泣くよ? セレスのくせに。

「なにが言いたいんだよ!」

 ばかばかって言われて、少しむかついた。

「もしそんなことしたら、ティエリア皇女はご主人様への愛情と恐怖の間で揺れ動いて、最悪、ご主人様を傷つけてしまう行動に出ることだってありえる」

「そ、そんなもんなのか」

 思わず身構える。

「それだけ矛盾した感情は人をおかしくさせてしまうものなの」

 セレスよ、いいこと言ってるけど、さりげなく俺の手を取り、自分の太もものところに持っていくのをやめてくれる?

 てか、俺のキスって万能じゃないのかよ。なんかへこむな。

「はあ」

 ため息が自然に口からこぼれた。

 それを見て、セレスはいつもの表情に戻った。

「勘違いしないで~ 強引な手段はダメって言ってるだけで、キスしちゃダメなんて言ってないよ~」

「それってどういうこと?」

「うちにいい作戦がある~」

「作戦?」

「任せて~」

 そして、セレスは俺に『皇女陥落計画』を語りだした。

 一通り聞いて、俺の頭に一つの考えが浮かんだ。

 こいつは策士だ! 天性の策士だ! 結婚詐欺とかやってそう!



 日が暮れたあと、俺はセレスに言われた通り、男子寮の向かいの教師寮に向かった。

 フェルト教師に寮を案内されたときに、困ったときはいつでも教師寮においでくださいと言われたので、俺は堂々と教師寮の中に入った。

 今夜の警備当番でうたた寝している教師を捕まえて、そっと話しかける。

「すみません。本日の授業で分からないことがあるので、マリア先生を呼んでいただけませんか?」

「勉強熱心ですね。分かりました。呼びに行くので、少しここで待っててください」

 よかった。話の分かる教師で。

 大丈夫、いくらでも待つよ。俺は我慢のできる男だから。

 しばらくしたら、マリア教師が出てきた。彼女を見て、俺は軽く引いた。

 マリア教師の服はパジャマというより、露出の多いドレスみたいだ。この年にもなって、これはないわ。

「あなたでしたか。 こんな時間に何の用?」

 マリア教師はイライラを隠そうともせず、不快そうな顔で俺に聞いてきた。

「すみません。授業の内容に関して考えても分からないことがあって、居ても立っても居られないので、尋ねにきました」

「はあ、そうですか。どこが分からないの?」

「それは、魔術を実演してみせたいので、ちょっとついてきていただけますか?」

 仮にも教師で俺の担任だから、嫌々ながらもマリア教師は俺についてきた。

「なにをするつもり? こんな暗いところに連れてきて……」

 人気のないところまでマリア教師を誘導したら、マリア教師は文句を言いだした。

 その隙に、俺はすかさずマリア教師の唇に自分の唇を重ねた。年増だから、舌を口の中に入れるのはちょっと嫌だから、俺はそのまま口を離した。

 すると、マリア教師の様子が一瞬で変わった。

 顔を真っ赤にして、内腿を擦り合わせていた。

「どうしたんですか? 先生」

 わざとらしく聞く。

「お、お願いがあるの」

「なんですか? 先生」

「私の服を脱ぐの手伝ってほしい」

 なるほど、奴隷願望のセレスと違って、こいつは欲求不満か。

「分かりました」

 そして、俺はマリア教師の服をはがして、また軽く引いた。

 てっきり色気のないベージュの下着をつけてると思ったら、フリル満載の白い下着だった。

「マリア先生、この下着はなんですか?」

「仕方ないじゃない? 今日はフィアンセと会っていたから」

 なるほど、俺の予想通りデートだったのか。フィアンセがいるのに、よくも俺にこんなことを頼めるな。どんだけ欲求不満なんだよ。

 俺はマリア教師の下着を観察していると、マリア教師はもう欲望に耐えられず、手を自分の股間を触りだして恥ずかしそうにしていた。

 あり。全然ありだ! 照れているマリア教師はかなり可愛い。もともと顔が端正だから、もじもじしていると余計俺の欲望を刺激してくる。

 年増って言っても、年齢は二十代後半だから、いける! もちろん、情報のソースはエリルだ。

 俺は我慢できずに、マリア教師の下着に手を付け、人生初めての青〇を体験した。

 ごめん、我慢って言葉も俺の辞書から削除しといて。
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