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第1章 魔術学院編
第19話 蹴りたくなる客人
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魔術師協会からA級魔術師認定状を貰って、俺は正式にA級魔術師になった。
帝国臣民は一律E級魔術師として見なされているが、D級以上になると、認定状が必要になってくる。帝国では、魔術師協会から発行される認定状を受け取って初めて正式にその階級の魔術師として認定される仕組みになっている。
だから、認定状を持っている俺は晴れてA級魔術師となったわけだ。
A級魔術師になってからというもの、クラスメイトの視線を毎日ふんだんに浴びることになった。
「フィリ様だ!」
「あの『隕石』の破壊者を倒したんだよね……」
「うちのクラスにこんな天才がいるとやる気なくしちゃうよ~」
「そうだけど、負けないように頑張るしかないよ」
「セロ・アフィミスより強いならS級魔術師に認定されてもおかしくないのに」
やれやれ、困った子羊どもよ。
そもそも、S級魔術師になるには、皇帝陛下直接のお許しを得るかS級魔術師昇級試験に合格でもしないと、いくら魔術師協会といっても、認定書を発行することができない。
もちろん、エリルからの情報だ。
そして、ある日、朝教室に入ったとき、マリア教師はすでに教室の中にいた。
珍しいな。いつまギリギリに教室に入ってくるあのマリア教師だよ? 明日クラスの女子は全員ノーパンで登校してくるのかな。
「フィリさん、お客人です」
「客人ですか」
少し戸惑って、俺は聞き返した。
「はい、貴賓室で待っているので」
「はあ」
俺は腑に落ちないまま、学院の三階に上がったら、そこには一人の教師が立っていて、俺を貴賓室に案内してくれた。
とりあえず、ノックしようか。
トントンとドアを叩く。
返事がない。ただのドアのようだ。
そりゃそうだよな。
やばい、セレスのあのセリフがうつっちゃった。恥ずかしい。穴があったら入れたいわ。
あとでセレスにお仕置きしよう……
でも、返事もしないとは大したものだな。皇族か、それとも公爵?
ゆっくりとドアを開けて、貴賓室に入り、そこに座る人物を確認する。
だが、そこに座っているのは俺の一番見たくない人間だった。父―ラスマ・シュバルージェ伯爵だ。
伯爵のくせに、よくも返事をしなかったな!
「フィリ、よく来てくれたよ」
なれなれしく、ラスマ伯爵が俺に声をかける。
おいおい、伯爵の分際で馴れ馴れしすぎやしないか? 俺は侯爵家の人間だぞ?
「何か用ですか?」
ラスマ伯爵は驚いた顔で俺を見つめる。なぜだ?
「変わったね、フィリ」
「変わってませんよ、ラスマ伯爵」
「お父さまとは呼んでくれないか」
「あれ、シュバルージェの名前を名乗るなと言ったのはラスマ伯爵ではありませんでしたか?」
「そうだけども」
「俺には授業があるんです。用がなかったら帰ってもいいですか?」
「ま、待って」
「はい?」
「A級魔術師になったらしいな」
「そうですが?」
「今まで私を騙したな。魔術を使えないふりをして」
「はあ」
騙したも何も、ほんとに使えなかったんだから。てか、言い方悪いな。まるで俺が犯罪者みたいじゃないか。
「家に戻ってきてくれないか?」
一瞬耳を疑った。これが俺を馬車から蹴り落とした人間の言葉だとは思えなかったからだ。
こいつの教育のせいで、俺は幼いころから野心というものを叩きこまれた。小さいときから、ことあるごとに、俺に帝国の頂点を目指せと言ってきたのはこいつだ。
おかげで、呪いみたいに、帝国の頂点を目指したいという気持ちが俺の心から離れない。
それが俺自身のものなのか、それともこいつの影響なのか、今でも分からない。
だから気持ちが悪いんだ。自分というものはほんとに自分なのか分からないというもどかしい感情。
今の俺を構成しているのはこいつを含めたシュバルージェ家への憎しみと帝国を掌握したい野心、あと枯れることのない性欲少々。
そんな俺を構成してるものがほんとに自分が望んでいるものなのかが分からないというのはアイデンティティがはっきりしないということだ。
はっきり言って、気分が悪い。
まあ、性欲はこいつと関係ないか。いや、こいつの遺伝かもしれないし。やはりこいつが全部悪い。
俺は野心に従って、ここまでやってきたが、それがほんとに俺自身の願いなのかって考えなかったわけではない。だが、この疑念に蓋をすれば、大した悩みでもないのだが。
こいつと再会するまではな。
「ラスマ伯爵こそ、変わりましたね。ご冗談を言うようになるなんて」
「冗談ではない!」
ラスマ伯爵の表情は一瞬で緊迫したものに変わった。
「ほんとに戻ってきてほしいんだ」
「理由を聞いても?」
「ああ、もちろん。アイシャはファイアボールみたいな初級魔術しか使えないのは知ってるよね」
「知ってるも何も、いつもそいつに焼かれてたんですけど?」
「それは知っていた……」
知ってた? いやいや、知ってたなら止めろよ。まあ、今更驚くことでもないか。
「そんなアイシャでも、昔魔術が使えないふりをしていたお前と比べたら、魔術の才能があるように思えた」
うん、使用人たちも同じこと言ってたよ。アイシャの魔術の才能は素晴らしいって。ほんと目がとこについてるんだ? お尻?
「気を悪くしないで聞いてくれ。お前を追放したあと、跡取りの件を考えて、いろんな貴族家に縁談の話を持ち掛けたけど、すべて断られた。アイシャに魔術の才能はないからって」
ほう、ほかの貴族家の人間にはちゃんと目がついてるみたいだな。
「もちろん、縁談を持ち込んでくる人間もいない。そして、今回のD級昇級試験でも、アイシャは一時選考すら通過できなかった」
「そりゃそうですよ。ファイアボールは平民でも使えますし」
「アイシャをこの学院に入れるために、どんな手段も使った。なのに……」
おいおい、泣くな。男だろう。
やはり、アイシャが入学試験に合格したのは不正だったのか。全くもって納得だ。
「このままじゃ、跡取りがいなくてシュバルージェ家がつぶれちゃうんだ」
「魔術の才能というより、アイシャの性格に問題があるんですよ! 救いようがないので、約立たずならどっかに売りさばいてください!」
「はい?」
あれ、声ちっちゃかった?
「どっかに! 売りさばいて! 下さい!」
「聞こえてるわ!」
あれ、違った?
ったく、毎日セレスと一心同体を練習していたら、いつの間にか思考回路までセレスに似てきたな。
こうなったら、考える前にセルフチェックしようか……って、出来るか!
「お前の妹だぞ?」
「それがなにか?」
「情はないのか?」
「それはアイシャに聞いてください。俺もあなたの元息子ですが、あなたは平気で追放したんですよね」
「うっ……」
ラスマ伯爵は唸って、黙りこくった。
まあ、俺も悪魔ではないから、少しくらい考えてやってもいいか。
「家に戻ってもいいですよ?」
「ほ、ほんとに?」
「ただし、条件があります」
「なんだ? なんでもするから」
「今から四つん這いになって、俺に蹴らせてください」
「はい?」
あれ? また声ちっちゃかった? って、違う!
この思考回路はやめよう。
「あなたがしたことをやり返すだけですが?」
「わ、私はお前の父だぞ」
「だから、もう追放されたでしょう?」
「うっ……私にも尊厳がある」
「それは俺にもあります。ただ、あなたはそれを踏みにじりました」
「くっ」
次の瞬間、ドアが開いた。
「うちの息子に何か用?」
「えっ!? 『真眼』の魔女!?」
「伯爵の分際で、馴れ馴れしく呼ばないでくれる? 貴様の領地をすべて焼き払おうか?」
「こ、これはまことに失礼いたしました。イスフォード侯爵様」
思念同調でツッコミを入れてこないと思ったら、貴賓室の外で盗み聞きしてたのか、このパンツ。
「で、私の息子に何か用? フィリに大切な授業の時間を割いて貰ってまで呼んだのだから、きっと大事な用があるわよね」
「息子? いや、私はフィリに家に戻ってきて欲しい……」
ラスマ伯爵が言い終わるや否や、セレスはラスマ伯爵の尻に、それは可愛い可愛いお尻に、物凄い勢いで蹴りを入れた。
ラスマ伯爵はそのままソファーから転がって悲鳴を上げながら床に突っ伏した。
俺がセレスの養子になったことすら知らなかったのか。ほんと、自分のことしか考えてないな、こいつ。
「そんなくだらないことのために、私の大事な息子の時間を奪ったというのか!」
「……も、申し訳ございません」
「さっさと帰れ!」
「は、はい!」
ラスマ伯爵は逃げるように貴賓室から出ていった。
「これでよかったでしょう~ ご主人様」
ナイス、セレス。
放課後、俺はまたしても自分の耳を疑った。
今日はほんとに、自分の聴力に自信を無くす日だな。
「すみません。もう一度言って頂けますか」
とりあえず、聞き間違いかもしれないから、再確認。
「明日休みだから、私とデートしなさい!」
うん、聞き間違いではなさそうだ。
「急にどうしたんですか? ラーちゃん」
「明日はせっかくの休みだから、買い物がしたいのよ! だから、フィリ様、荷物持ちになりなさい!」
なんという素直じゃないデートの誘い方。俺じゃなかったら断ってただろうに。
まあ、ちょうどラーちゃんで試したいことがあるし、乗ってやろう。
ついでにラーちゃんを美味しく頂こう。今まで散々熟成させて置いたからな。もうそろそろ食べ頃だろう。
「ええ、いいですよ」
「やったー」
ちょっと、ラーちゃん、キャラ忘れてるよ?
あーあ、せっかくの休日はラーちゃんと帝都でデートすることになっちゃったよ……
別に嬉しくないんだからな。
内心でラーちゃんの真似をしてみる。
うん、意外と楽しいかも。
ところで、アイリスは大きく目を見開いてラーちゃんを見つめているが、何かあったのかな。
帝国臣民は一律E級魔術師として見なされているが、D級以上になると、認定状が必要になってくる。帝国では、魔術師協会から発行される認定状を受け取って初めて正式にその階級の魔術師として認定される仕組みになっている。
だから、認定状を持っている俺は晴れてA級魔術師となったわけだ。
A級魔術師になってからというもの、クラスメイトの視線を毎日ふんだんに浴びることになった。
「フィリ様だ!」
「あの『隕石』の破壊者を倒したんだよね……」
「うちのクラスにこんな天才がいるとやる気なくしちゃうよ~」
「そうだけど、負けないように頑張るしかないよ」
「セロ・アフィミスより強いならS級魔術師に認定されてもおかしくないのに」
やれやれ、困った子羊どもよ。
そもそも、S級魔術師になるには、皇帝陛下直接のお許しを得るかS級魔術師昇級試験に合格でもしないと、いくら魔術師協会といっても、認定書を発行することができない。
もちろん、エリルからの情報だ。
そして、ある日、朝教室に入ったとき、マリア教師はすでに教室の中にいた。
珍しいな。いつまギリギリに教室に入ってくるあのマリア教師だよ? 明日クラスの女子は全員ノーパンで登校してくるのかな。
「フィリさん、お客人です」
「客人ですか」
少し戸惑って、俺は聞き返した。
「はい、貴賓室で待っているので」
「はあ」
俺は腑に落ちないまま、学院の三階に上がったら、そこには一人の教師が立っていて、俺を貴賓室に案内してくれた。
とりあえず、ノックしようか。
トントンとドアを叩く。
返事がない。ただのドアのようだ。
そりゃそうだよな。
やばい、セレスのあのセリフがうつっちゃった。恥ずかしい。穴があったら入れたいわ。
あとでセレスにお仕置きしよう……
でも、返事もしないとは大したものだな。皇族か、それとも公爵?
ゆっくりとドアを開けて、貴賓室に入り、そこに座る人物を確認する。
だが、そこに座っているのは俺の一番見たくない人間だった。父―ラスマ・シュバルージェ伯爵だ。
伯爵のくせに、よくも返事をしなかったな!
「フィリ、よく来てくれたよ」
なれなれしく、ラスマ伯爵が俺に声をかける。
おいおい、伯爵の分際で馴れ馴れしすぎやしないか? 俺は侯爵家の人間だぞ?
「何か用ですか?」
ラスマ伯爵は驚いた顔で俺を見つめる。なぜだ?
「変わったね、フィリ」
「変わってませんよ、ラスマ伯爵」
「お父さまとは呼んでくれないか」
「あれ、シュバルージェの名前を名乗るなと言ったのはラスマ伯爵ではありませんでしたか?」
「そうだけども」
「俺には授業があるんです。用がなかったら帰ってもいいですか?」
「ま、待って」
「はい?」
「A級魔術師になったらしいな」
「そうですが?」
「今まで私を騙したな。魔術を使えないふりをして」
「はあ」
騙したも何も、ほんとに使えなかったんだから。てか、言い方悪いな。まるで俺が犯罪者みたいじゃないか。
「家に戻ってきてくれないか?」
一瞬耳を疑った。これが俺を馬車から蹴り落とした人間の言葉だとは思えなかったからだ。
こいつの教育のせいで、俺は幼いころから野心というものを叩きこまれた。小さいときから、ことあるごとに、俺に帝国の頂点を目指せと言ってきたのはこいつだ。
おかげで、呪いみたいに、帝国の頂点を目指したいという気持ちが俺の心から離れない。
それが俺自身のものなのか、それともこいつの影響なのか、今でも分からない。
だから気持ちが悪いんだ。自分というものはほんとに自分なのか分からないというもどかしい感情。
今の俺を構成しているのはこいつを含めたシュバルージェ家への憎しみと帝国を掌握したい野心、あと枯れることのない性欲少々。
そんな俺を構成してるものがほんとに自分が望んでいるものなのかが分からないというのはアイデンティティがはっきりしないということだ。
はっきり言って、気分が悪い。
まあ、性欲はこいつと関係ないか。いや、こいつの遺伝かもしれないし。やはりこいつが全部悪い。
俺は野心に従って、ここまでやってきたが、それがほんとに俺自身の願いなのかって考えなかったわけではない。だが、この疑念に蓋をすれば、大した悩みでもないのだが。
こいつと再会するまではな。
「ラスマ伯爵こそ、変わりましたね。ご冗談を言うようになるなんて」
「冗談ではない!」
ラスマ伯爵の表情は一瞬で緊迫したものに変わった。
「ほんとに戻ってきてほしいんだ」
「理由を聞いても?」
「ああ、もちろん。アイシャはファイアボールみたいな初級魔術しか使えないのは知ってるよね」
「知ってるも何も、いつもそいつに焼かれてたんですけど?」
「それは知っていた……」
知ってた? いやいや、知ってたなら止めろよ。まあ、今更驚くことでもないか。
「そんなアイシャでも、昔魔術が使えないふりをしていたお前と比べたら、魔術の才能があるように思えた」
うん、使用人たちも同じこと言ってたよ。アイシャの魔術の才能は素晴らしいって。ほんと目がとこについてるんだ? お尻?
「気を悪くしないで聞いてくれ。お前を追放したあと、跡取りの件を考えて、いろんな貴族家に縁談の話を持ち掛けたけど、すべて断られた。アイシャに魔術の才能はないからって」
ほう、ほかの貴族家の人間にはちゃんと目がついてるみたいだな。
「もちろん、縁談を持ち込んでくる人間もいない。そして、今回のD級昇級試験でも、アイシャは一時選考すら通過できなかった」
「そりゃそうですよ。ファイアボールは平民でも使えますし」
「アイシャをこの学院に入れるために、どんな手段も使った。なのに……」
おいおい、泣くな。男だろう。
やはり、アイシャが入学試験に合格したのは不正だったのか。全くもって納得だ。
「このままじゃ、跡取りがいなくてシュバルージェ家がつぶれちゃうんだ」
「魔術の才能というより、アイシャの性格に問題があるんですよ! 救いようがないので、約立たずならどっかに売りさばいてください!」
「はい?」
あれ、声ちっちゃかった?
「どっかに! 売りさばいて! 下さい!」
「聞こえてるわ!」
あれ、違った?
ったく、毎日セレスと一心同体を練習していたら、いつの間にか思考回路までセレスに似てきたな。
こうなったら、考える前にセルフチェックしようか……って、出来るか!
「お前の妹だぞ?」
「それがなにか?」
「情はないのか?」
「それはアイシャに聞いてください。俺もあなたの元息子ですが、あなたは平気で追放したんですよね」
「うっ……」
ラスマ伯爵は唸って、黙りこくった。
まあ、俺も悪魔ではないから、少しくらい考えてやってもいいか。
「家に戻ってもいいですよ?」
「ほ、ほんとに?」
「ただし、条件があります」
「なんだ? なんでもするから」
「今から四つん這いになって、俺に蹴らせてください」
「はい?」
あれ? また声ちっちゃかった? って、違う!
この思考回路はやめよう。
「あなたがしたことをやり返すだけですが?」
「わ、私はお前の父だぞ」
「だから、もう追放されたでしょう?」
「うっ……私にも尊厳がある」
「それは俺にもあります。ただ、あなたはそれを踏みにじりました」
「くっ」
次の瞬間、ドアが開いた。
「うちの息子に何か用?」
「えっ!? 『真眼』の魔女!?」
「伯爵の分際で、馴れ馴れしく呼ばないでくれる? 貴様の領地をすべて焼き払おうか?」
「こ、これはまことに失礼いたしました。イスフォード侯爵様」
思念同調でツッコミを入れてこないと思ったら、貴賓室の外で盗み聞きしてたのか、このパンツ。
「で、私の息子に何か用? フィリに大切な授業の時間を割いて貰ってまで呼んだのだから、きっと大事な用があるわよね」
「息子? いや、私はフィリに家に戻ってきて欲しい……」
ラスマ伯爵が言い終わるや否や、セレスはラスマ伯爵の尻に、それは可愛い可愛いお尻に、物凄い勢いで蹴りを入れた。
ラスマ伯爵はそのままソファーから転がって悲鳴を上げながら床に突っ伏した。
俺がセレスの養子になったことすら知らなかったのか。ほんと、自分のことしか考えてないな、こいつ。
「そんなくだらないことのために、私の大事な息子の時間を奪ったというのか!」
「……も、申し訳ございません」
「さっさと帰れ!」
「は、はい!」
ラスマ伯爵は逃げるように貴賓室から出ていった。
「これでよかったでしょう~ ご主人様」
ナイス、セレス。
放課後、俺はまたしても自分の耳を疑った。
今日はほんとに、自分の聴力に自信を無くす日だな。
「すみません。もう一度言って頂けますか」
とりあえず、聞き間違いかもしれないから、再確認。
「明日休みだから、私とデートしなさい!」
うん、聞き間違いではなさそうだ。
「急にどうしたんですか? ラーちゃん」
「明日はせっかくの休みだから、買い物がしたいのよ! だから、フィリ様、荷物持ちになりなさい!」
なんという素直じゃないデートの誘い方。俺じゃなかったら断ってただろうに。
まあ、ちょうどラーちゃんで試したいことがあるし、乗ってやろう。
ついでにラーちゃんを美味しく頂こう。今まで散々熟成させて置いたからな。もうそろそろ食べ頃だろう。
「ええ、いいですよ」
「やったー」
ちょっと、ラーちゃん、キャラ忘れてるよ?
あーあ、せっかくの休日はラーちゃんと帝都でデートすることになっちゃったよ……
別に嬉しくないんだからな。
内心でラーちゃんの真似をしてみる。
うん、意外と楽しいかも。
ところで、アイリスは大きく目を見開いてラーちゃんを見つめているが、何かあったのかな。
応援ありがとうございます!
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