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第2章 五芒星編
第23話 ドМなメイドさん
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自分の部屋に戻り、俺とセレスにしか見えないドアを開いて、セレスの家に帰る。
「セレス、メイドはほしくない?」
とりあえず、正攻法を避けて、遠回しな言い方をする。
「ほしいかも~」
おう、乗ってきたか。
「なら、部屋をもう一つ用意して」
「えっ?」
「後で分かるから」
そして、セレスを連れて訓練用の地下室へと向かう。
地下室に入って、断続的な悲鳴が聞こえてくる。
「きゃっ! ……ここはどこ? 何でもするから出して! ……ほんとになんでもするから」
うん、何でもするからって簡単に口に出せるのは今までさんざん調教されてきたということか。不憫でならない。
「セレス、暗いから、明るくして」
「はい~」
地下室は一瞬にして日中と変わらない明るさになった。
「きゃあああああああ!」
俺が監禁、いや、ご招待した女の子は周囲が急に明るくなったせいか、絶叫をあげた。
はっきり言っていいですか? うるさい。
「フィリ・イスフォード様?」
女の子は半狂乱になりながらも、俺を見た途端、安心して名前を呼んでくれた。
俺ってほんとに有名人になったもんだな。見かけたことのない女の子にも名前を憶えられているなんて。
「俺が怖くないのですか?」
「平民を助けたり、セロ・アフィミスからみんなを守ったりして、私の中ではフィリ・イスフォード様は正義の味方です」
正義の味方? うれしい響きだな。
「そうか、君が危ない目に遭いそうだったので、保護させていただきました」
「危ない目に?」
お前も脳みそがついてないのか。
「衛兵たちは君を保護するフリをして、今夜君を慰み者にする気ですよ?」
淡々と事実を告げる。
「えっ!?」
だが、その事実は彼女にとって信じがたいものだったのだろう。なんだって、頼ったら、保護してくれると言った衛兵がそんなことを企んでいるなんて夢にも思わないだろうね。
「少しは男を警戒したほうがいいですよ」
少しというかかなりね。
「……はい」
やはり、信じていた衛兵に裏切られたのはショックだったのだろう。彼女の声から生気が消えた。
「……フィリ様の隣の方は?」
しばらくして、彼女はセレスに気づいて、俺に問いかけてきた。
「俺の母―セレス・イスフォード侯爵です」
「『真眼』の魔女!?」
どいつもこいつもリアクションはワンパターンだな。一々驚くなって。
「それは置いといて、君、名前はなんですか?」
「……メアリー・スーレンです。家はその、準男爵家です……」
なるほど、いじめられてもおかしくない地位ってことか。
「一年生?」
「いいえ、二年生です」
年上なの? めっちゃ幼く見えるのだが。黒い髪のせいか、白い肌はより一層際立つ。顔は少し丸みを帯びていて、ややたれ目勝ち。
美少女の部類だろうね。
「よくいじめられるのですか?」
そう聞くと、メアリーは少し警戒しだした。多分、いじめられることを恨んでフォミなんとか子爵家の子息を殺したのは自分だと俺に疑われてると思ってるのだろう。
「俺はメアリーさんが人を殺したなんて思っていないので、ただ、君を守るために、ぜひ聞かせてくれませんか?」
「はい」
そういうと、メアリ―は少しほっとして、返事してくれた。
さっき言ったばかりじゃないか! 男を警戒しろって。なんでこんなに簡単に俺の言葉を信じるんだよ!
俺は男として見られてないというのか!
一旦落ち着こう。
とりあえず、質問を続ける。
「君をいじめた人間はほかにもいますか?」
「はい、ポウロ様、ナスリ様、フレン様……」
三人か。多いな。いや、フォミなんちゃらを加えたら四人か。
「それにミエル様、タリス様とエタ……」
「もういいです」
聞くに堪えない。なにこれ? いじめっ子のオンパレードなの? 学院は250人近くいるから、このまましゃべらせたら、半分くらい名前が出てきそうで怖い。
お前はあれか? いじめホイホイか? いるだけでいじめがそっちから飛んでくるのか。可哀想に。
いじめホイホイ? 我ながらいい命名センスだわ。
「どういう風にいじめられたんですか?」
メアリーは少し溜め込んで、そして意を決したように口を開いた。
「……性的な奉仕を強要されていました」
それを聞いて、俺の胸に烈火のごとき怒りが燃え上がった。
そんな美味しい、いや、下劣なことが俺抜きで行われていたとは……いずれ帝国を把握するということは、帝国の女はすべて俺のものということだ。だれの許しをもらって俺の女に手を出してるんだ! 貴様ら。
ますます、あいつらを許せないな。
「復讐したいですか?」
「……はい」
利害一致ということだな。
それを聞いて、俺はメアリーの顔に手を添えた。
「手伝いましょう。その代わりに……」
「代わりに……?」
「ここでメイドとして働いてくれませんか。もちろん、俺には夜の奉仕をしなければならないし、一生ここから出られません」
「フィリ……様? 本気で言ってるのですか?」
えっ? 冗談に聞こえたの? もしかして俺って笑いのセンスがあるのかな。
「復讐したくないのなら、断ってもいいですよ?」
そして、メアリーはしばらく黙り込んで、考えた末にゆっくりと口を開いた。
「……分かりました。彼らに復讐できるなら、私は何でもします」
予想通り、引いたら、そっちから食いついてきた。
「それじゃ、早速奉仕していただきましょうか」
俺はセレスの見ている前で、メアリーの服を脱がした。
復讐を手伝うって言ったのにはもちろんメアリーを弄んだ男たちが許せないのもある。だが、それよりも俺はいつもセレスと一心同体を練習しているが、戦いの相手がいない。そのせいで、今の自分がどれくらい強くなっているかが分からない。ならば、復讐の手伝いのついでに、メアリーをいじめた連中を攫って、戦闘の練習相手にしよう。どうせひどいことを平気でするゴミみたいな連中だから、誤って殺しても心は痛まないだろう。
あとはメアリーの好きなようにさせよう。俺の女となった今、それなりにご褒美をあげないとね。練習に役に立たなかったら、生かすも殺すもメアリーに任せるわ。
なにせよ、空間追跡を使って、セロの居場所をサーチしようとしたが、ダメだった。
悪い予感がしてならない。もしかしたら『五芒星』はすでに動き出しているのかもしれない。だから一刻も早く今の自分の強さを確かめる必要がある。
蕩けそうな顔を浮かべているメアリーを尻目に、俺とセレスは地下室を出た。正直、セレスの前でほかの女の子とこんなことするのが初めてで、少しドキドキしていた。
翌日の朝、俺は目を疑った。
セレスと一緒に食卓に座ってたら、セレスはなぜかうきうきしていた。
まあ、無理もない。いつもはセレスがごはんを作っていたが、今日からはメアリーが料理をすることになった。自分がしなくてもよくなったってのはうれしいことなのだろう。
だが、問題はセレスじゃない。メアリーのほうだ。
メアリーはキッチンから朝ごはんを運んできたが、俺は目を大きく見開いてじっと彼女の服装を見つめた。
もはや、それは服装と呼べる代物ではない。局部丸出しのボンデージを身に着けて、その上を縄で縛っているというものだ。
「セレス、お前、なにしたんだ?」
「うちはなにもしてないよ~」
えっ? セレスの仕業じゃない?
「うちはただメアリーちゃんの私物を彼女の部屋からとってきただけだよ~」
私物にボンデージとか縄とかある? 普通。
頭が痛くなった。最近はよく頭痛がする気がする。
オッケー、オッケー、きっとメアリーにもなにかしら理由があるのだろう。俺は紳士だ。とりあえず、理由を聞こう。
あれ、なんかこのくだり前にもあったような気がするが、気のせいか。
「メアリーさん、いや、今はメイドだから、メアリーでいいのか。メアリー、その服装はなに?」
「ボンデージというものです」
知ってるわ! そこじゃない!
「な、なぜそのような服を着てるの?」
「私に奉仕を強要してくるみんなにいつもこの恰好をさせられてるので、今はこの恰好じゃないと落ち着かないので」
うん、理由は分かった。だが、分かったから余計頭が痛くなる。
昨日も薄々感じていたが、どうやらメアリーはドМらしい。なんでもするからって簡単にいうところといい、この服装といい、もはや救いようのない変態だ。
それがメアリーをいじめたやつらのせいだというのだから、俺はもうあいつらを許す気になれない。
「別の服に着替えてもらえる?」
「裸エプロンにですか?」
もういいよ、メアリーの思考回路がとんでもないくらい歪んでいるのがよーく分かったから。
「いや、このままでいいよ。でも胸は隠しておいてね。目のやり場に困る……」
「なに仰ってるんですか!」
「えっ?」
俺なんか怒らせるようなこと言った?
「私はもうフィリ様のものなので、どうか思う存分に視姦してください! ……そのほうが興奮するので」
一瞬、この子は好きでいじめられてるんじゃないかと疑ってしまった。
でも、復讐したいからここに残ったのよね。違うよね。違うと言ってくれ! もしかしたら一生ここに閉じ込められて俺のメイドとして奉仕することに興奮を感じたとか……じゃないよね。
もうそうだったら、俺の周りに真面目な女の子はアイリスだけになるか……レイナは時々よくわからないこと言い出すから論外。
「はあ」
思わず、ため息をついた。
「どうしました? フィリ様。まだ露出が足りませんか?」
いつか人体魔術を覚えよう。そう思った瞬間であった。
そしたらメアリーを救えるかもしれない。無理だろうけどな。俺はセレスの魔術しか使えないし。
「フィリ様、セレス様、どうぞゆっくりお召し上がりください」
そういって、メアリーは自分の部屋に戻った。それから部屋から悩ましい声が聞こえてくるけど、無視することにした。
「いいメイドじゃない~」
「思念同調繋いでるから、俺の気持ち分かってて言ってるのか?」
「ばれた~?」
そうやってセレスはちっちゃい舌を出して、てへっと笑った。
憎たらしいけど、可愛いな。
メアリーの料理に口をつけると、俺は驚いてしまった。
セレスの料理に勝るとも劣らない味だ。
セレスはずっと旅していてごはんは自分で作っている。そのおかげで、料理の腕は確かだが、メアリーの料理もなかなか。
貴族だから、あんまり味に期待していなかった分、その予想を上回る味に、俺は思わず舌なめずりしてしまった。
でも、よく考えたら、貴族と言っても最下位の準男爵だから、使用人もそんなに雇えず、自分で料理していたのだろう。
胸の中で、少しメアリーに幸せになってほしい気持ちが芽生えたのは自分でも驚きだった。
「セレス、メイドはほしくない?」
とりあえず、正攻法を避けて、遠回しな言い方をする。
「ほしいかも~」
おう、乗ってきたか。
「なら、部屋をもう一つ用意して」
「えっ?」
「後で分かるから」
そして、セレスを連れて訓練用の地下室へと向かう。
地下室に入って、断続的な悲鳴が聞こえてくる。
「きゃっ! ……ここはどこ? 何でもするから出して! ……ほんとになんでもするから」
うん、何でもするからって簡単に口に出せるのは今までさんざん調教されてきたということか。不憫でならない。
「セレス、暗いから、明るくして」
「はい~」
地下室は一瞬にして日中と変わらない明るさになった。
「きゃあああああああ!」
俺が監禁、いや、ご招待した女の子は周囲が急に明るくなったせいか、絶叫をあげた。
はっきり言っていいですか? うるさい。
「フィリ・イスフォード様?」
女の子は半狂乱になりながらも、俺を見た途端、安心して名前を呼んでくれた。
俺ってほんとに有名人になったもんだな。見かけたことのない女の子にも名前を憶えられているなんて。
「俺が怖くないのですか?」
「平民を助けたり、セロ・アフィミスからみんなを守ったりして、私の中ではフィリ・イスフォード様は正義の味方です」
正義の味方? うれしい響きだな。
「そうか、君が危ない目に遭いそうだったので、保護させていただきました」
「危ない目に?」
お前も脳みそがついてないのか。
「衛兵たちは君を保護するフリをして、今夜君を慰み者にする気ですよ?」
淡々と事実を告げる。
「えっ!?」
だが、その事実は彼女にとって信じがたいものだったのだろう。なんだって、頼ったら、保護してくれると言った衛兵がそんなことを企んでいるなんて夢にも思わないだろうね。
「少しは男を警戒したほうがいいですよ」
少しというかかなりね。
「……はい」
やはり、信じていた衛兵に裏切られたのはショックだったのだろう。彼女の声から生気が消えた。
「……フィリ様の隣の方は?」
しばらくして、彼女はセレスに気づいて、俺に問いかけてきた。
「俺の母―セレス・イスフォード侯爵です」
「『真眼』の魔女!?」
どいつもこいつもリアクションはワンパターンだな。一々驚くなって。
「それは置いといて、君、名前はなんですか?」
「……メアリー・スーレンです。家はその、準男爵家です……」
なるほど、いじめられてもおかしくない地位ってことか。
「一年生?」
「いいえ、二年生です」
年上なの? めっちゃ幼く見えるのだが。黒い髪のせいか、白い肌はより一層際立つ。顔は少し丸みを帯びていて、ややたれ目勝ち。
美少女の部類だろうね。
「よくいじめられるのですか?」
そう聞くと、メアリーは少し警戒しだした。多分、いじめられることを恨んでフォミなんとか子爵家の子息を殺したのは自分だと俺に疑われてると思ってるのだろう。
「俺はメアリーさんが人を殺したなんて思っていないので、ただ、君を守るために、ぜひ聞かせてくれませんか?」
「はい」
そういうと、メアリ―は少しほっとして、返事してくれた。
さっき言ったばかりじゃないか! 男を警戒しろって。なんでこんなに簡単に俺の言葉を信じるんだよ!
俺は男として見られてないというのか!
一旦落ち着こう。
とりあえず、質問を続ける。
「君をいじめた人間はほかにもいますか?」
「はい、ポウロ様、ナスリ様、フレン様……」
三人か。多いな。いや、フォミなんちゃらを加えたら四人か。
「それにミエル様、タリス様とエタ……」
「もういいです」
聞くに堪えない。なにこれ? いじめっ子のオンパレードなの? 学院は250人近くいるから、このまましゃべらせたら、半分くらい名前が出てきそうで怖い。
お前はあれか? いじめホイホイか? いるだけでいじめがそっちから飛んでくるのか。可哀想に。
いじめホイホイ? 我ながらいい命名センスだわ。
「どういう風にいじめられたんですか?」
メアリーは少し溜め込んで、そして意を決したように口を開いた。
「……性的な奉仕を強要されていました」
それを聞いて、俺の胸に烈火のごとき怒りが燃え上がった。
そんな美味しい、いや、下劣なことが俺抜きで行われていたとは……いずれ帝国を把握するということは、帝国の女はすべて俺のものということだ。だれの許しをもらって俺の女に手を出してるんだ! 貴様ら。
ますます、あいつらを許せないな。
「復讐したいですか?」
「……はい」
利害一致ということだな。
それを聞いて、俺はメアリーの顔に手を添えた。
「手伝いましょう。その代わりに……」
「代わりに……?」
「ここでメイドとして働いてくれませんか。もちろん、俺には夜の奉仕をしなければならないし、一生ここから出られません」
「フィリ……様? 本気で言ってるのですか?」
えっ? 冗談に聞こえたの? もしかして俺って笑いのセンスがあるのかな。
「復讐したくないのなら、断ってもいいですよ?」
そして、メアリーはしばらく黙り込んで、考えた末にゆっくりと口を開いた。
「……分かりました。彼らに復讐できるなら、私は何でもします」
予想通り、引いたら、そっちから食いついてきた。
「それじゃ、早速奉仕していただきましょうか」
俺はセレスの見ている前で、メアリーの服を脱がした。
復讐を手伝うって言ったのにはもちろんメアリーを弄んだ男たちが許せないのもある。だが、それよりも俺はいつもセレスと一心同体を練習しているが、戦いの相手がいない。そのせいで、今の自分がどれくらい強くなっているかが分からない。ならば、復讐の手伝いのついでに、メアリーをいじめた連中を攫って、戦闘の練習相手にしよう。どうせひどいことを平気でするゴミみたいな連中だから、誤って殺しても心は痛まないだろう。
あとはメアリーの好きなようにさせよう。俺の女となった今、それなりにご褒美をあげないとね。練習に役に立たなかったら、生かすも殺すもメアリーに任せるわ。
なにせよ、空間追跡を使って、セロの居場所をサーチしようとしたが、ダメだった。
悪い予感がしてならない。もしかしたら『五芒星』はすでに動き出しているのかもしれない。だから一刻も早く今の自分の強さを確かめる必要がある。
蕩けそうな顔を浮かべているメアリーを尻目に、俺とセレスは地下室を出た。正直、セレスの前でほかの女の子とこんなことするのが初めてで、少しドキドキしていた。
翌日の朝、俺は目を疑った。
セレスと一緒に食卓に座ってたら、セレスはなぜかうきうきしていた。
まあ、無理もない。いつもはセレスがごはんを作っていたが、今日からはメアリーが料理をすることになった。自分がしなくてもよくなったってのはうれしいことなのだろう。
だが、問題はセレスじゃない。メアリーのほうだ。
メアリーはキッチンから朝ごはんを運んできたが、俺は目を大きく見開いてじっと彼女の服装を見つめた。
もはや、それは服装と呼べる代物ではない。局部丸出しのボンデージを身に着けて、その上を縄で縛っているというものだ。
「セレス、お前、なにしたんだ?」
「うちはなにもしてないよ~」
えっ? セレスの仕業じゃない?
「うちはただメアリーちゃんの私物を彼女の部屋からとってきただけだよ~」
私物にボンデージとか縄とかある? 普通。
頭が痛くなった。最近はよく頭痛がする気がする。
オッケー、オッケー、きっとメアリーにもなにかしら理由があるのだろう。俺は紳士だ。とりあえず、理由を聞こう。
あれ、なんかこのくだり前にもあったような気がするが、気のせいか。
「メアリーさん、いや、今はメイドだから、メアリーでいいのか。メアリー、その服装はなに?」
「ボンデージというものです」
知ってるわ! そこじゃない!
「な、なぜそのような服を着てるの?」
「私に奉仕を強要してくるみんなにいつもこの恰好をさせられてるので、今はこの恰好じゃないと落ち着かないので」
うん、理由は分かった。だが、分かったから余計頭が痛くなる。
昨日も薄々感じていたが、どうやらメアリーはドМらしい。なんでもするからって簡単にいうところといい、この服装といい、もはや救いようのない変態だ。
それがメアリーをいじめたやつらのせいだというのだから、俺はもうあいつらを許す気になれない。
「別の服に着替えてもらえる?」
「裸エプロンにですか?」
もういいよ、メアリーの思考回路がとんでもないくらい歪んでいるのがよーく分かったから。
「いや、このままでいいよ。でも胸は隠しておいてね。目のやり場に困る……」
「なに仰ってるんですか!」
「えっ?」
俺なんか怒らせるようなこと言った?
「私はもうフィリ様のものなので、どうか思う存分に視姦してください! ……そのほうが興奮するので」
一瞬、この子は好きでいじめられてるんじゃないかと疑ってしまった。
でも、復讐したいからここに残ったのよね。違うよね。違うと言ってくれ! もしかしたら一生ここに閉じ込められて俺のメイドとして奉仕することに興奮を感じたとか……じゃないよね。
もうそうだったら、俺の周りに真面目な女の子はアイリスだけになるか……レイナは時々よくわからないこと言い出すから論外。
「はあ」
思わず、ため息をついた。
「どうしました? フィリ様。まだ露出が足りませんか?」
いつか人体魔術を覚えよう。そう思った瞬間であった。
そしたらメアリーを救えるかもしれない。無理だろうけどな。俺はセレスの魔術しか使えないし。
「フィリ様、セレス様、どうぞゆっくりお召し上がりください」
そういって、メアリーは自分の部屋に戻った。それから部屋から悩ましい声が聞こえてくるけど、無視することにした。
「いいメイドじゃない~」
「思念同調繋いでるから、俺の気持ち分かってて言ってるのか?」
「ばれた~?」
そうやってセレスはちっちゃい舌を出して、てへっと笑った。
憎たらしいけど、可愛いな。
メアリーの料理に口をつけると、俺は驚いてしまった。
セレスの料理に勝るとも劣らない味だ。
セレスはずっと旅していてごはんは自分で作っている。そのおかげで、料理の腕は確かだが、メアリーの料理もなかなか。
貴族だから、あんまり味に期待していなかった分、その予想を上回る味に、俺は思わず舌なめずりしてしまった。
でも、よく考えたら、貴族と言っても最下位の準男爵だから、使用人もそんなに雇えず、自分で料理していたのだろう。
胸の中で、少しメアリーに幸せになってほしい気持ちが芽生えたのは自分でも驚きだった。
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