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3.一晩限りの約束、でいい
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どこから来たの、に正直に答える奴がいると思うか?
「さあ、どこだったかな」
曖昧に笑うと、男は当然のように隣に座った。金色の髪に、薄い唇。人形みたいに整った顔立ち、だけど瞳の色は彼と同じじゃない。
一晩限りの相手にこんな馬鹿な質問をする男は嫌いだ。それでも普段のネイトなら恋愛ごっこという茶番に付き合うが、今夜はなかなかそういう気分になれない。
ーー結構いい男なのに、勿体無いな。
容姿は抜群にネイトの好みだった。こんな所
で相手を探さなくてもいいだろう? と訊ねたくなるような美男子だ。実際のところ、同性愛が受け入れられるようなったからといって、いざ良い相手を探せるかと言ったら難しい。
ここは有名な"出会いの場"となっている。城から少し離れた歓楽街の一角で、男同士の出会いを求める者が集まる酒場。ほとんどの人間は、純粋な出会いというより人肌恋しくて一夜限りの相手を探している。
それはネイトも例外ではないし、目の前の男は普段のネイトなら簡単について行ってしまうような相手だった。
「教えてくれないんだ、いいよ。いつもそうなの? 」
男は何故か勝手に盛り上がっているようだった。比例するように、ネイトの気分は下がっていく。
目の前の男は俺に何を求めているんだろう? お前は知らないだろう、俺が何を求めているか。知ったところでどうにもならない。半端にあの人に似てるから余計に虚しくなるんだな。
男は相変わらず形の良い唇を忙しなく動かしている。
「……すごく気品があるね。姿勢もいいし、もしかして良いところの御子息だったりするのかな?」
「そんなわけねぇだろ」
思わず笑ってしまうと、男は少しホッとしたように笑った。手元の酒を一気に煽る。今夜はハズレだ。
「ねえ、名前教えてよ」
「悪いけど、もう帰るよ」
せっかく危険を冒して抜け出しているというのに、収穫は何杯かの酒と……まあ目の保養にはなったか。
ネイトは、店内をぐるっと見回すとそれらしき人に適当にグラスを掲げて、小さく頭をさげた。この中の何人かが、今夜のネイトに酒を奢ってくれていたからだ。目が合って、グラスを掲げてくれた相手がそうだ。
この国では珍しい黒髪と、童顔が気に入られるらしい。最初は戸惑ったが、今ではすっかりこれに慣れてしまった。それに、何杯タダ酒を飲んだかが、存在する価値みたいに思えてしまう夜もある。今夜もそうだ、途中から酔って数も数えられなくなってしまったけれど。
クレール城は許可なく深夜に外出することを禁じられていて、破ったらもれなく罰則がある。
ネイトは夜な夜なこうして抜け出しているが、これまでバレたことはない。普段真面目に勤務している分、あまり目をつけられていないのだろう。
それでも、用が済んだら早く帰るに越したことはない。酒の匂いでバレるのもマズい。
「じゃあな」
「は? そりゃないだろう……!」
男は乱暴に立ち上がると、勢いよくネイトの腕を掴もうとした、瞬間だった。
「……!」
間一髪で、男の手を誰かが掴んだ。助かった、そう思って振り返ると、それは思いもよらない人物だった。
「さあ、どこだったかな」
曖昧に笑うと、男は当然のように隣に座った。金色の髪に、薄い唇。人形みたいに整った顔立ち、だけど瞳の色は彼と同じじゃない。
一晩限りの相手にこんな馬鹿な質問をする男は嫌いだ。それでも普段のネイトなら恋愛ごっこという茶番に付き合うが、今夜はなかなかそういう気分になれない。
ーー結構いい男なのに、勿体無いな。
容姿は抜群にネイトの好みだった。こんな所
で相手を探さなくてもいいだろう? と訊ねたくなるような美男子だ。実際のところ、同性愛が受け入れられるようなったからといって、いざ良い相手を探せるかと言ったら難しい。
ここは有名な"出会いの場"となっている。城から少し離れた歓楽街の一角で、男同士の出会いを求める者が集まる酒場。ほとんどの人間は、純粋な出会いというより人肌恋しくて一夜限りの相手を探している。
それはネイトも例外ではないし、目の前の男は普段のネイトなら簡単について行ってしまうような相手だった。
「教えてくれないんだ、いいよ。いつもそうなの? 」
男は何故か勝手に盛り上がっているようだった。比例するように、ネイトの気分は下がっていく。
目の前の男は俺に何を求めているんだろう? お前は知らないだろう、俺が何を求めているか。知ったところでどうにもならない。半端にあの人に似てるから余計に虚しくなるんだな。
男は相変わらず形の良い唇を忙しなく動かしている。
「……すごく気品があるね。姿勢もいいし、もしかして良いところの御子息だったりするのかな?」
「そんなわけねぇだろ」
思わず笑ってしまうと、男は少しホッとしたように笑った。手元の酒を一気に煽る。今夜はハズレだ。
「ねえ、名前教えてよ」
「悪いけど、もう帰るよ」
せっかく危険を冒して抜け出しているというのに、収穫は何杯かの酒と……まあ目の保養にはなったか。
ネイトは、店内をぐるっと見回すとそれらしき人に適当にグラスを掲げて、小さく頭をさげた。この中の何人かが、今夜のネイトに酒を奢ってくれていたからだ。目が合って、グラスを掲げてくれた相手がそうだ。
この国では珍しい黒髪と、童顔が気に入られるらしい。最初は戸惑ったが、今ではすっかりこれに慣れてしまった。それに、何杯タダ酒を飲んだかが、存在する価値みたいに思えてしまう夜もある。今夜もそうだ、途中から酔って数も数えられなくなってしまったけれど。
クレール城は許可なく深夜に外出することを禁じられていて、破ったらもれなく罰則がある。
ネイトは夜な夜なこうして抜け出しているが、これまでバレたことはない。普段真面目に勤務している分、あまり目をつけられていないのだろう。
それでも、用が済んだら早く帰るに越したことはない。酒の匂いでバレるのもマズい。
「じゃあな」
「は? そりゃないだろう……!」
男は乱暴に立ち上がると、勢いよくネイトの腕を掴もうとした、瞬間だった。
「……!」
間一髪で、男の手を誰かが掴んだ。助かった、そう思って振り返ると、それは思いもよらない人物だった。
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