【完結】王子、"それ以上"なんておこがましいことは申しません!〜素直になれない二人は今夜もすれ違う〜

桐野湊灯

文字の大きさ
3 / 47

3.一晩限りの約束、でいい

しおりを挟む
 どこから来たの、に正直に答える奴がいると思うか?

「さあ、どこだったかな」

 曖昧に笑うと、男は当然のように隣に座った。金色の髪に、薄い唇。人形みたいに整った顔立ち、だけど瞳の色は彼と同じじゃない。

 一晩限りの相手にこんな馬鹿な質問をする男は嫌いだ。それでも普段のネイトなら恋愛ごっこという茶番に付き合うが、今夜はなかなかそういう気分になれない。

ーー結構いい男なのに、勿体無いな。

 容姿は抜群にネイトの好みだった。
で相手を探さなくてもいいだろう? と訊ねたくなるような美男子だ。実際のところ、同性愛が受け入れられるようなったからといって、いざ良い相手を探せるかと言ったら難しい。
 ここは有名な"出会いの場"となっている。城から少し離れた歓楽街の一角で、男同士の出会いを求める者が集まる酒場。ほとんどの人間は、純粋な出会いというより人肌恋しくて一夜限りの相手を探している。
 
 それはネイトも例外ではないし、目の前の男は普段のネイトなら簡単について行ってしまうような相手だった。

「教えてくれないんだ、いいよ。いつもそうなの? 」

 男は何故か勝手に盛り上がっているようだった。比例するように、ネイトの気分は下がっていく。

 目の前の男は俺に何を求めているんだろう? お前は知らないだろう、俺が何を求めているか。知ったところでどうにもならない。半端にあの人に似てるから余計に虚しくなるんだな。

 男は相変わらず形の良い唇を忙しなく動かしている。

「……すごく気品があるね。姿勢もいいし、もしかして良いところの御子息だったりするのかな?」

「そんなわけねぇだろ」

 思わず笑ってしまうと、男は少しホッとしたように笑った。手元の酒を一気に煽る。今夜はハズレだ。

「ねえ、名前教えてよ」

「悪いけど、もう帰るよ」

 せっかく危険を冒して抜け出しているというのに、収穫は何杯かの酒と……まあ目の保養にはなったか。

 ネイトは、店内をぐるっと見回すとそれらしき人に適当にグラスを掲げて、小さく頭をさげた。この中の何人かが、今夜のネイトに酒を奢ってくれていたからだ。目が合って、グラスを掲げてくれた相手がそうだ。

 この国では珍しい黒髪と、童顔が気に入られるらしい。最初は戸惑ったが、今ではすっかりこれに慣れてしまった。それに、何杯タダ酒を飲んだかが、存在する価値みたいに思えてしまう夜もある。今夜もそうだ、途中から酔って数も数えられなくなってしまったけれど。

 クレール城は許可なく深夜に外出することを禁じられていて、破ったらもれなく罰則がある。
 ネイトは夜な夜なこうして抜け出しているが、これまでバレたことはない。普段真面目に勤務している分、あまり目をつけられていないのだろう。
 
 それでも、用が済んだら早く帰るに越したことはない。酒の匂いでバレるのもマズい。

「じゃあな」

「は? そりゃないだろう……!」

 男は乱暴に立ち上がると、勢いよくネイトの腕を掴もうとした、瞬間だった。

「……!」

 間一髪で、男の手を誰かが掴んだ。助かった、そう思って振り返ると、それは思いもよらない人物だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。

キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。 しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。 迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。 手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。 これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。 ──運命なんて、信じていなかった。 けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。 全8話。

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

転生先は、BLゲームの世界ですか?

鬼塚ベジータ
BL
ティト・ロタリオは前世の記憶を思い出した。そしてこの世界がBLゲームの世界であることを知る。 ティトは幸せになりたかった。前世では家族もなく、恋愛をしても、好きな人に好きになってもらったこともない。だからこそティトは今世では幸せになりたくて、早く物語を終わらせることを決意する。 そんな中、ティトはすでに自身が「悪役令息に階段から突き落とされた」という状況であると知り、物語の違和感を覚えた。 このシナリオは、どこかおかしい。 というところから始まる、ティトが幸せになるまでの、少しだけ悲しいお話。 ※第25回角川ルビー小説大賞最終選考作品です

異世界転生した俺の婚約相手が、王太子殿下(♂)なんて嘘だろう?! 〜全力で婚約破棄を目指した結果。

みこと。
BL
気づいたら、知らないイケメンから心配されていた──。 事故から目覚めた俺は、なんと侯爵家の次男に異世界転生していた。 婚約者がいると聞き喜んだら、相手は王太子殿下だという。 いくら同性婚ありの国とはいえ、なんでどうしてそうなってんの? このままじゃ俺が嫁入りすることに? 速やかな婚約解消を目指し、可愛い女の子を求めたのに、ご令嬢から貰ったクッキーは仕込みありで、とんでも案件を引き起こす! てんやわんやな未来や、いかに!? 明るく仕上げた短編です。気軽に楽しんで貰えたら嬉しいです♪ ※同タイトルを「小説家になろう」様でも掲載しています。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

【完結】ネクラ実況者、人気配信者に狙われる

ちょんす
BL
自分の居場所がほしくて始めたゲーム実況。けれど、現実は甘くない。再生数は伸びず、コメントもほとんどつかない。いつしか実況は、夢を叶える手段ではなく、自分の無価値さを突きつける“鏡”のようになっていた。 そんなある日、届いた一通のDM。送信者の名前は、俺が心から尊敬している大人気実況者「桐山キリト」。まさかと思いながらも、なりすましだと決めつけて無視しようとした。……でも、その相手は、本物だった。 「一緒にコラボ配信、しない?」 顔も知らない。会ったこともない。でも、画面の向こうから届いた言葉が、少しずつ、俺の心を変えていく。 これは、ネクラ実況者と人気配信者の、すれ違いとまっすぐな好意が交差する、ネット発ラブストーリー。 ※プロットや構成をAIに相談しながら制作しています。執筆・仕上げはすべて自分で行っています。

処理中です...