11 / 47
11.約束
しおりを挟む
「それより、ブレイデンこそ何か良いことでもあったのか?」
ネイトが訊ねると、ブレイデンは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて答えた。
「そうなんです。実は俺、階級が一つ上がるんですよ」
「何だって!? すごいじゃないか……もっと早く言えよ」
興奮したネイトは、ブレイデンのがっしりした肩を思わず強く掴んでしまった。
「ありがとうございます。訓練中に偶然通りかかった隊長の目に留まったらしいんですよ。あの、"大型犬みたいな男は誰だ"って。多分、運が良かったんです」
そう言って、ブレイデンは照れ臭そうに俯いたまま笑った。
「運じゃない。ブレイデンはいつも休みの日だって、欠かさず鍛錬して努力していただろう。それが実を結んだんだよ。チャーリーとも言ってたんだ、ブレイデンは出世するぞ、って」
チャーリーもブレイデンのことはよく目に掛けていた。もちろん、ネイトもだ。
「……ありがとうございます。俺、ネイトさんに直ぐに知らせたかったんです」
「ありがとう、俺も本当に嬉しいよ。おめでとう、ブレイデン」
だけど、あまり無茶をするなよ。と、ネイトは釘を刺しておいた。ブレイデンは頑張り過ぎるあまり、体を壊す直前まで追い込むことも厭わない。それをネイトが心配すると、ブレイデンはいつも『かあちゃんみたいなこと言わないでください』とむくれる。だが、今日の彼はただ笑って、『わかっています』と言った。
「あの……俺、ご褒美が欲しいです」
唐突にブレイデンが甘えたような口調になった。
「おお、いいよ。何でも買ってやる」
以前、ブレイデンが見習いから正式に近衛兵になった際は、彼が欲しがっていた手袋を贈った。
今度は何だろう、可愛い弟分の為ならとネイトは張り切って訊ねた。
「ネイトさんと……サシ飲みがしたいです」
返ってきた答えは思わず拍子抜けしてしまうものだった。
「そんなことでいいのか? もちろんだよ。外出届出すから、近いうちに休みの日を教えて」
「やった! 約束ですからね……でも、王子の誕生祭の後かなぁ、チャーリーさんたちもピリピリしてるから許可をくれなそうじゃないっすか。あと、手合わせして下さい」
ブレイデンは、持っていた棒をネイトに手渡した。自分は小屋の裏で見つけたブレイデン曰く"いい感じ"の棒を手に持っている。
「……一回だけだぞ、戻りが遅いとキャンベルさんに叱られる」
執事長のキャンベルは使用人仲間に対して、にこりともしないような厳格な人だ。半世紀以上クレール城に支えていて、スティーブ家の者からの信頼も厚い。彼は非常に観察眼が鋭く、いつも上手く立ち回ってるネイトの裏を見抜いてしまうので気が気ではない。
今も休憩がてらどこかで油を売っていのではないかと、目を光らせているに違いない。
「もしかして、体力が落ちてるんじゃないです?」
挑発的な笑みを浮かべるブレイデンは生き生きとしている。自信満々に木の棒を掲げる姿も様になっていた。
彼が城に入って間もない頃はよく練習相手になったものだ。元々体を動かすことが好きなチャーリーやネイトは、仕事の合間に遊び半分で付き合っていた。しっかりと教育を受けて型を知っているチャーリーと違って、ただの喧嘩しか知らないネイトは型も何もない無茶苦茶な戦い方だが、それがいい相手になったらしい。
「馬鹿力で俺の体を壊さないでくれよ?」
煽るような言葉を吐くブレイデンに、ネイトも負けじと言い返した。
ブレイデンはグッと言葉に詰まったような顔をして、直ぐに気を取り直して棒を構えた。
「ネイト!」
自分を呼ぶ声に、ネイトは飛び上がるほど驚いた。とうとうキャンベルが自分を探しに来たのかと思い、恐る恐る振り返ると、それはもっと厄介な人物だった。
ネイトが訊ねると、ブレイデンは待ってましたと言わんばかりに目を輝かせて答えた。
「そうなんです。実は俺、階級が一つ上がるんですよ」
「何だって!? すごいじゃないか……もっと早く言えよ」
興奮したネイトは、ブレイデンのがっしりした肩を思わず強く掴んでしまった。
「ありがとうございます。訓練中に偶然通りかかった隊長の目に留まったらしいんですよ。あの、"大型犬みたいな男は誰だ"って。多分、運が良かったんです」
そう言って、ブレイデンは照れ臭そうに俯いたまま笑った。
「運じゃない。ブレイデンはいつも休みの日だって、欠かさず鍛錬して努力していただろう。それが実を結んだんだよ。チャーリーとも言ってたんだ、ブレイデンは出世するぞ、って」
チャーリーもブレイデンのことはよく目に掛けていた。もちろん、ネイトもだ。
「……ありがとうございます。俺、ネイトさんに直ぐに知らせたかったんです」
「ありがとう、俺も本当に嬉しいよ。おめでとう、ブレイデン」
だけど、あまり無茶をするなよ。と、ネイトは釘を刺しておいた。ブレイデンは頑張り過ぎるあまり、体を壊す直前まで追い込むことも厭わない。それをネイトが心配すると、ブレイデンはいつも『かあちゃんみたいなこと言わないでください』とむくれる。だが、今日の彼はただ笑って、『わかっています』と言った。
「あの……俺、ご褒美が欲しいです」
唐突にブレイデンが甘えたような口調になった。
「おお、いいよ。何でも買ってやる」
以前、ブレイデンが見習いから正式に近衛兵になった際は、彼が欲しがっていた手袋を贈った。
今度は何だろう、可愛い弟分の為ならとネイトは張り切って訊ねた。
「ネイトさんと……サシ飲みがしたいです」
返ってきた答えは思わず拍子抜けしてしまうものだった。
「そんなことでいいのか? もちろんだよ。外出届出すから、近いうちに休みの日を教えて」
「やった! 約束ですからね……でも、王子の誕生祭の後かなぁ、チャーリーさんたちもピリピリしてるから許可をくれなそうじゃないっすか。あと、手合わせして下さい」
ブレイデンは、持っていた棒をネイトに手渡した。自分は小屋の裏で見つけたブレイデン曰く"いい感じ"の棒を手に持っている。
「……一回だけだぞ、戻りが遅いとキャンベルさんに叱られる」
執事長のキャンベルは使用人仲間に対して、にこりともしないような厳格な人だ。半世紀以上クレール城に支えていて、スティーブ家の者からの信頼も厚い。彼は非常に観察眼が鋭く、いつも上手く立ち回ってるネイトの裏を見抜いてしまうので気が気ではない。
今も休憩がてらどこかで油を売っていのではないかと、目を光らせているに違いない。
「もしかして、体力が落ちてるんじゃないです?」
挑発的な笑みを浮かべるブレイデンは生き生きとしている。自信満々に木の棒を掲げる姿も様になっていた。
彼が城に入って間もない頃はよく練習相手になったものだ。元々体を動かすことが好きなチャーリーやネイトは、仕事の合間に遊び半分で付き合っていた。しっかりと教育を受けて型を知っているチャーリーと違って、ただの喧嘩しか知らないネイトは型も何もない無茶苦茶な戦い方だが、それがいい相手になったらしい。
「馬鹿力で俺の体を壊さないでくれよ?」
煽るような言葉を吐くブレイデンに、ネイトも負けじと言い返した。
ブレイデンはグッと言葉に詰まったような顔をして、直ぐに気を取り直して棒を構えた。
「ネイト!」
自分を呼ぶ声に、ネイトは飛び上がるほど驚いた。とうとうキャンベルが自分を探しに来たのかと思い、恐る恐る振り返ると、それはもっと厄介な人物だった。
10
あなたにおすすめの小説
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
【8話完結】恋愛を諦めたおじさんは、異世界で運命と出会う。
キノア9g
BL
恋愛を諦め、ただ淡々と日々を過ごしていた笠原透(32)。
しかし、ある日突然異世界へ召喚され、「王の番」だと告げられる。
迎えたのは、美しく気高い王・エルヴェル。
手厚いもてなしと優しさに戸惑いながらも、次第に心を揺さぶられていく透。
これは、愛を遠ざけてきた男が、本当のぬくもりに触れる物語。
──運命なんて、信じていなかった。
けれど、彼の言葉が、ぬくもりが、俺の世界を変えていく。
全8話。
異世界転生した俺の婚約相手が、王太子殿下(♂)なんて嘘だろう?! 〜全力で婚約破棄を目指した結果。
みこと。
BL
気づいたら、知らないイケメンから心配されていた──。
事故から目覚めた俺は、なんと侯爵家の次男に異世界転生していた。
婚約者がいると聞き喜んだら、相手は王太子殿下だという。
いくら同性婚ありの国とはいえ、なんでどうしてそうなってんの? このままじゃ俺が嫁入りすることに?
速やかな婚約解消を目指し、可愛い女の子を求めたのに、ご令嬢から貰ったクッキーは仕込みありで、とんでも案件を引き起こす!
てんやわんやな未来や、いかに!?
明るく仕上げた短編です。気軽に楽しんで貰えたら嬉しいです♪
※同タイトルを「小説家になろう」様でも掲載しています。
真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~
水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。
アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。
氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。
「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」
辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。
これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
転生先は、BLゲームの世界ですか?
鬼塚ベジータ
BL
ティト・ロタリオは前世の記憶を思い出した。そしてこの世界がBLゲームの世界であることを知る。
ティトは幸せになりたかった。前世では家族もなく、恋愛をしても、好きな人に好きになってもらったこともない。だからこそティトは今世では幸せになりたくて、早く物語を終わらせることを決意する。
そんな中、ティトはすでに自身が「悪役令息に階段から突き落とされた」という状況であると知り、物語の違和感を覚えた。
このシナリオは、どこかおかしい。
というところから始まる、ティトが幸せになるまでの、少しだけ悲しいお話。
※第25回角川ルビー小説大賞最終選考作品です
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる