追憶ノ破片

Kyoga

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主従記念日

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『主従記念日』



微かな月明かりが照らす、薄暗い室内。

濡れていた。

私の心も体も


アナタの指も

「…は…ぁッ、いらな‥ぃ」

譫言のようにつぶやき首を横にふる。
しかし、その言葉とは裏腹に、指や玩具にじっくりと溶かされた陰部からは蜜が溢れ出し、陰核は誘うように腫れている。
中断された愛撫の続きを懇願するようにヒクつく陰部を眺めていたアナタは、楽しそうに笑みを浮かべた。

「ふうん。嘘つきだね、架椰(カヤ)。」

大きく開かされた脚の間を覗き込み、陰部に顔を近づけ、息を吹き掛ける。

「‥ぁッ、ふ‥ぅ…」

そっと撫でるような冷たさに、拒むように脚を閉じようとするが、左右の手足首を拘束され、閉じることができない。
それどころか、胎内からさらに滲み出す蜜を感じ、身を焦がす。

「こうして欲しかったんでしょ?堕としてあげるからね、ゆっくりと…」

不敵な笑みを浮かべたアナタは、私の髪掴み、瞳に舌をはわせた。


アナタのことが好きでした。毎朝すれ違うマンションの廊下で交わす挨拶。
それだけで、幸せで。



アナタの名前は、狩野 司。部屋のドアに書いてありました。
背丈は、そう170ぐらいでしょうか。髪は黒髪で短め。
凛とした顔立ちに、太陽が焼くことを躊躇うような色白な肌。
縁のない眼鏡に覆われた切れの長い瞳。
スレンダーなスタイルを強調するようなユニセックスな装い。
一瞬 男性と見間違ってしまうような女性でした。

眼鏡に覆われていながらも漆黒の瞳は、見るものを惹きつけるには十分すぎるモノで。
そんなアナタを周りがほおって置くわけはなく。
派手めな女性と仲よさげに腕を組んでいるのを幾度も見かけました。
また、私が大学に行こうとする時にマンションの廊下を歩いていると、すれ違うざまに香る甘い香水と煙草の香り。
挨拶を口にする、少し掠れたような声。


ただ、見てるだけで幸せでした。


正直、可愛くもない。
顔も、背丈も、外見も人並み。
髪は短めだし、洋服もカジュアルな色気のかけらもない。
どちらかといえば、地味めな目立たないタイプの私に、気さくに挨拶をしてくれたアナタ。

アナタの目にふれられるだけでよかった。

それのに、人というのは貪欲なもので…

恐れ多くも、いつしかアナタに、恋心を抱き始めていました。

落ち着いた低めな声。
柔らかな物腰。
思い出すだけで、胸が高まります。

アナタの白い指先が私の胸元をつまみ上げる。
焦らすような愛撫を与えてくれる。
それを想像して、毎晩のように自らを慰めています。
下肢は濡れ、触れられることを求めるように蜜を溢れさせていました。

所詮は、かなわない妄想。

胸にしまい続けたまま、この恋は終わってしまう。

そう諦めていました。
あの夜までは…。




ゼミの飲み会の帰り。
やっとの思いで終電に駆け込むことができたから、深夜2時前ぐらいだろうか。
マンションのエレベータに乗り、自分の部屋の階で降りると、傍らにうずくまる男性を見つけた。
突然のことに言葉を失い、そのスーツ姿の男性を窺(うかが)う。
フロアに膝を立てて座り込み、頭を伏せる男性は静かに寝息を立てているようだった。

「大丈夫ですか~?」

肩を揺り起こすと、微かに頭部をおこし、うっすらと目蓋を開こうとし、
視点の定まらない瞳で私を見つめる。
その様子を見守っていた私は、再び言葉を失った。
今、私の目の前にいるのは、男性ではなく、恋心を抱いている相手。いつもかけている眼鏡がないため、気がつくのに遅れてしまったが、紛れも無く、司だった。驚きのあまり、言葉を見つけられずにいたが、このままにしておいては風邪をひいてしまいかねないと、司の部屋まで運んでやることにした。
司の腕を肩にかけ、支え起こすと、部屋の前まで連れて行き、懐に手を入れ、鍵を探し出す。

「んー…」

未だ眠気の抜け切らない様子の司を抱えたまま、部屋の鍵を開け、ドアを開く。

「すみません、お邪魔しますね。」

部屋に入り、司の靴を脱がせつつ、自分も靴を脱いで、リビングのソファーに司の体を横たえた。
形良く締められたネクタイを緩めてやると、床に膝をつき、穏やかな司の寝顔を眺める。
しばらく眺めていると、紅く色づいた唇に誘われるように唇を重ねた。
柔らかく、甘い唇に酔わされ、静かに離すと、白い首筋を唇でなぞった。
すーっと唇をおろし、鎖骨の凹凸にキスをする。
そのまま、シャツの襟元からボタンをはずそうと指先をかけたとき、突然 頭皮を引っ張られる感覚に身を強張らせた。

「はい、そこまで。」

背後からのびた手が、私の髪を掴み、司から引き剥がした。
いつの間にか目を醒ましていた切れの長い漆黒の瞳が私を覗き込む。

「人が黙って寝たフリをしていれば、どこまで進めるのかな。」

ソファーから身を起こし、笑いながら見下ろす。

「ごめんなさい。あの…、エレベータのとこに寝てたので、風邪をひいちゃったらと思って…その。」

頭の中が真っ白になってしまい、精一杯の言葉をひねり出す。

「ついでに、夜這いをかけに来たの?」

窘(たしな)めるように、漆黒の瞳が向けられると私は言葉をつまらせてしまった。

「そんなつもりじゃ…ただ…。」

「いい度胸してるね。君さ、僕のことが好きなの?」

瞳をのぞき込まれ、微笑みかけられる。

「ずっと…私‥、あの…」

向けられた微笑に見惚れてしまう。

「僕のことが好きなのかって聞いたんだけど?」

再び聞かれ、私は意を決して答えた。

「はい…、大好きです。ずっと…見てました。」

「正直でよろしい。でもね、恋人だとか、そういう類のは面倒でね。まぁ、楽しませてくれるペットになるっていうなら、考えてあげなくはないけど。」

面倒そうに呟き、私の目を見つめる。
ペット?どういう扱いをされるのかわからない上に、人以下と云う事だろうか?
理解に戸惑い、ただ司を見つめ返していた。

「さっきの勢いはどうしたの?その気がないなら、さっさと帰りなよ」

呆れたように見下され、私は口を開いた。

「ペットにして。」

「挨拶ぐらいちゃんと出来るよね?」

「 はい…、あの…司様の‥ペットにしてください。」

そういい終えると、なにかに引き付けられるように、司のつま先に服従を誓うキスをした。

「いいよ。いい子にしていれば、たっぷり遊んであげるからね。何て呼んで欲しい?」 

「 架椰と…。」

「架椰ね。架椰?」

「はい。」

「 服を脱ぎな。ペットに服はいらないでしょ?」

戸惑いを隠しきれないが、ゆっくりと服を脱ぎ下着のみになった。
その行動を見守っていた司がつまらなそうに呟く。

「まぁ、下着は普通だね。外して?」

覚束ない手つきでピンクのブラのホックを外すと、押さえ込まれていた胸が飛び出してきた。

「胸の大きさは好みかな。」

司はソファーから身を起こし、乳房を鷲掴んだ。

「…ッ」

突起を指先でなぞられると、驚いたように目で追うばかりだった。

「年、いくつだっけ?」

突起をつまみ上げ、指の腹で転がしながら問いかける。

「ぁッ…、にじゅう・・いち・・です。」

「じゃあ、食べごろな感じかな。」

突起に爪を立て、押しつぶすように愛撫する。

「…ぃッ、ぁ…やぁっ。」

痛みを感じつつも、疼き始める甘い痺れに唇を噛む。

「ねえ、いつも一人でシたりするの?」

司が立ち上がったかと思うと、耳元に唇を寄せられ、囁きかけられた。

「…あ…ぁッ、…ン」

漏れる喘ぎと、恥ずかしさを抑えるために、手で口元をおさえる。 

「もう一度聞いて欲しい?」

「…たまに、します」

「そう。僕にこうされるのを考えたことは?」

見透かしたように笑われ、視線を逸らす。

「あるんだね。でもね、これからは自慰禁止。」

「はい。」

羞恥心を堪えながら返事をすると、手の平が下腹部におり、下着をずらし陰部をなぞる。

「触れてもいないのに濡れてるみたいだね」

私に意識させるように、蜜をにじませる陰口に指を差し入れ、蜜が絡み付いた指を引き抜いて、口元に指を差し出す。

「んっ…ふっ‥ぅ」

自らの蜜に濡れた指に複雑な気持ちになりつつ、その指に手を添え、舌をはわす。口に含み、歯を立てないように舐め、唇でなぞる。

「そう、もういいよ」

司の指が引き抜かれると、名残惜しそうに唇をとがらせてしまう。
それを見ていた司が笑みをこぼし、濡れた指で陰核に愛撫を施した。

「‥はっ…ぁッ、やぁ‥」

甘く痺れるような刺激に、膝の力が抜けそうになり、司にしがみつく。

「どうしたの?」

陰核を執拗にいじりながら、気付かぬふりで問い掛けられると、逆にそれが羞恥心を煽った。

「ぁ‥ッ、‥ン‥立って‥られな‥い」

膝を震わせ、司を見つめる。

「無駄口は嫌いだが‥始めはしょうがないか」

苦笑いしつつ、ソファーにかけ、司の膝を跨ぐように私をソファーに膝立ちさせられる。

「ぃ…ッ、ぁッ」

足を開かされ、濡れた陰孔を冷気がなであげると、思わず陰孔をヒクつかせる。

「座らせてあげたんだけど、何か不服?」

少しの間、空を見つめていた私の下腹部に、再び司の手がのばされ、陰核を擦りあげる。

「‥は‥ぁッ‥ぁ‥ぅ、司‥様」

司の首に腕を絡め、身を支える。

「架椰、腰が動いてるよ。自分からなすりつけて、そんなにこの指が欲しいのか?」

陰核に爪をたて、陰孔に指を差し入れる。

「…ッ、ゃ‥ぁッ、ひ‥ぅ」

指を埋められ、突然の異物感に腰を浮かそうとするが、阻むように腰を掴まれる。指を曲げて粘膜を擦り上げられ、水音がたつように抜き差しを繰り返される。

「ん…、ダメ‥ッ、あつ‥い」

水音に両耳を塞ぐが、さらに体内に水音を響かせてしまい、司の指を締め付ける。

「キツいよ、架椰。もう少し拡げる必要がありそうだね。」

笑いながら指を引き抜くと、溢れた蜜が司の服を汚してしまう。

「は…ぁッ、も‥ぅ、ぁふッ‥ぅ」

虚ろな瞳で、甘い疼きに喘ぐ。

「今日はこれぐらいにしてあげようか。服を汚したお仕置きは後日たっぷりしてあげるからね」

司の指先が濡れた陰核を弾き、私は気を遣った。

「イッちゃ…、ぁ…ぁッ」

司の肩に顔を埋め、肩で息をつく。

私の思いが叶いました。

たとえ、人として扱ってもらえなくても…

アナタの指を感じることができた

それだけで

私は…




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