追憶ノ破片

Kyoga

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鞭とアメ

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『鞭とアメ』




帰宅する人々の流れとは逆に、雑踏を通り抜けて繁華街の一角に向かう。
初めてきた場所ではないのに、なんだか心細くて、視線を下げて歩いていた。
穿きなれない短めのスカートを身につけているうえに、下着をつけることを禁じられてしまった陰部を風が撫でる。
たった一枚の布が取り払われただけで、こんなにもぎこちない気分になってしまうのだろうか。
また、他の人に知られてしまったら、どんな蔑む目を向けられるかを考え、羞恥感に襲われ、バッグを握る手に力が入った。
ゲームセンターや飲食店が立ち並ぶ角を曲がると、待ち合わせ場所となっている喫茶店に入る。
会話が飛び交う明るい店内を見回し、奥の席に司を見けた。
向かいの椅子の傍らに立ち、声をかける。


「司様?お待たせしてしまいましたか?」

椅子をひいて腰をかけると、紫煙をくゆらせつつ、携帯電話の画面に目を向けていた司に声をかけた。

「いや、大丈夫だよ。」

携帯電話から視線を上げ、眼鏡に覆われた瞳が私を見つめる。
今日は、黒いスーツに白いYシャツ、ノーネクタイというシンプルな装いだった。

「あの…、お仕事お疲れ様です。」

仕事の帰りに待ち合わせると聞いていたのを思い出した。
司は何の仕事をしているのだろうか?などと、脳裏に過ぎったことを口に出しかけたが、寸でのところで飲み込んだ。

「 あぁ。架椰?」

何かを思い出したように私の名前を呼ぶ。命じられることをわかっていながらも、恥ずかしさから目を逸らす。

「はい。」

「脚を開いて。」

私は頷くと、言われるがままに、ゆっくりと脚を開いた。
テーブルの下からスカートの中を眺める司の視線に、私は頬を赤らめ、脚を閉じようとする。

「誰が閉じていいっていったの?」

脚を閉じることを制止せれ、私は脚を開いたまま座り続ける。

「 司様?」

懇願するような視線を送り続けるが、そんな私を見て楽しむように、コーヒーカップに口をつける。

「そういえば、忘れてたね。その毛剃るの…。帰ったら綺麗にしてあげるからね。」

処理されていない陰部を眺め、気がついたように呟く。痴態をさらす自らを想像し、陰口に蜜が滲み出すのを感じたが、言葉も見つけられずに、私は頷くしかなかった。

「さて、そろそろ出ようか?」

立ち上がり、店を出る司の後に私はただついてゆく。

「どこに行くんですか?」

「君の首輪を買いに行くんだよ。何色が似合うだろうね?」

しばらく歩き、繁華街のビルの前で足を止めた。
慣れた足取りで地下に続く階段を下りてゆくと、古ぼけた木製のドアが現れた。
ノブに手を伸ばし、ドアを引くと、私に入るよう促した。
私は言われるがままに扉の中に入ると、そこはSMショップだった。
こういう場に足を踏み入れること自体が初めてだった私は、なぜか怖くて、司の袖口を掴んだ。

「架椰、大丈夫だよ。」

なだめる様に私の頭を撫でると、店内を眺め始めた。
店の中には、首輪をはじめ縄、ロウソク、ボンデージ衣装やコスプレまで、ありとあらゆるモノが並んでいた。
店内を眺めていてふと、女性同士のカップルしかいないということに気がついた。ボーイッシュなカップルや、フェミニンなカップル等、男性の姿は一組も見かけなかった。
物珍しそうに店内を見回す私を見ていた司が苦笑いする。

「ほら、社会科見学はそれぐらいにして、こっちへおいで。」

「はい、司様」

首輪を手に取る司の傍らに立ち、陳列されている首輪を眺める。
細いものから、大型犬がはめるような鋲がついたもの。
赤や黒等色も様々だった。

「架椰、こっちを向いてごらん。」

声の方に向くと、赤い首輪が首にあてられた。
中央に、鎖やリードを通すリングがついているものだった。
黒いものと比べるようにあてる司の首筋を見つめ、司の白い首筋には赤が映えるのではないかと思った。
獣のように地に這い、赤い首輪につながれても、なお血に飢えた瞳を失わない…。そんな妄想をしていると、「…椰。聞いてるのか、架椰。」と、私を呼ぶ司の声に、現実に引き戻された。

「あっ、すみません。ぼーっとしちゃって…」

「首輪とリードは、赤がいいみたいだね。良く映える。あとは…、これかな」

陳列されている中でも、小さなクリップにチェーンのついたアクセサリーの
ようなものを手に取り、レジへと持って行った。
会計を済ませる司の後ろ姿を見つめながら…
前にどんな子と一緒に来たんだろう?などと考えを巡らしていると、戻って来た司が私の腕を引いて、レジの横にある小さな部屋に連れてゆく。

「さて、早速付けてみようか。」

私の腰に腕を絡ませたと思うと、カットソーの裾を掴み一気に捲くり上げてしまう。
ブラのホックを外すと、指で摘みあげ、指の間で転がすように愛撫する。

「…ッ、司‥様っ、‥ン」

「前よりも感度が良くなったみたいだね。」

漏れる声を抑えるように指を噛む私を見ていた司が笑いながら、突起に唇をよせる。
口に含み、温かい舌で舐めたり、甘い刺激で酔わされていたかと思うと、甘噛みされ、肩を震わせる。
反対側を同じように愛撫されている間も、弄られたばかりの突起は、今も摘み上げられ続けているような余韻が残り、下腹部に疼きを与える。

「…ぁ‥ダメッ」

「感じすぎてダメなんでしょ?」

羞恥を煽るように微笑みかけ、先ほど買ったばかりのボディクリップを手に取る。
潤んだ瞳で司を見つめていると、チェーンの先のクリップが突起を挟み込む。

「ぃッ‥」

私が漏らした声を気にとめず、もう一方の突起も挟み込んだ。

「似合うね」

シルバーのチェーンに指をかけて引っ張ると、両方いっぺんに摘み上げられ、痛みと快楽に声にならない喘ぎを漏らす。
未だ直接触れてもらっていない下腹部の疼きをどうにかして欲しくて、求めるように見つめるが、焦らすように触れてくれない。

「続きは家に着くまでおあずけ。」

チェーンにかけていた指を離し、愛撫の手を止めてしまう。

「あの…これは?」

突起につけられていたボディクリップを外そうとする私の手を司が掴んだ。

「このままつけて帰ってね。僕の指にずっと摘まれているみたいで楽しいでしょ?」

そう言いながら、肩にかかっていたブラの紐を取り払い、服を着せられてしまう。
ボディクリップをつけられた突起は、いやらしくカットソーの布を押し上げ、体を動かすたびに突起と布地が擦れる。

「…ぁッ」

慣れない感覚に戸惑っていると「ほら、帰るよ?」と司に手を引かれ、慌てて胸元を隠すようにジャケットの前を合わせる。 



街の人ごみや電車での視線を受け、そのたびに体を反応させてしまい、司の部屋にたどり着く頃には、陰口から溢れ出した蜜が膝まで伝っていた。

「‥は‥ぁッ、…も‥ぅっ。」

玄関で靴を脱ぐまもなく、気が抜けたように床に膝をついてしまう。

「架椰、そんなとこで休んでる暇ないよバスルームにおいで?」

私の頭に軽く触れ、書斎に入っていってしまう。
立ち上がろうとしたが、脚に力が入らず、四つん這うようにバスルームに向かった。
脱衣所に入ると目の前には、全身を映し出すことができる鏡がかけられており、映される自らの姿に、目を背けた。
虚ろな瞳、赤く染まった頬、獣のように四つん這う姿、そして…


「まだ脱いでなかったのか?そんなとこでうずくまってると、椅子にしちゃうよ?」

声に驚き顔を上げると、私の後ろには、スーツの上着を脱ぎ、Yシャツの袖をまくりあげた司が立っていた。
椅子!?その言葉に慌てて立ち上がると、司が私の服に手をかけ、脱がしてゆく。
ボディクリップに摘まれていた突起は、うっ血して柘榴色に染まっていた。
触れられることを待ちわび、涙を流すように濡れる陰口の縁を指でなぞられると、膝を震わせ、司のシャツを掴む。

「…司、様?」

「さて、まずは綺麗にしようね。」

バスルームに入れられ、シャワーをかけられると、司の手のひらが肌をなぞり、ボディソープを塗りたくられる。
くすぐったく、心地よい手のひらに浸っていると、下腹部にも塗りつけられ、気がついたときには、司が剃刀を手にしていた。

「ぇ?」

逃げようとしても、バスタブを背に座らされ、身をよじることさえできない。

「おとなしくしててね。でないと…。」

脚を大きく開かされ、反射的に閉じようとすると、ボディクリップのチェーンを引かれる。

「‥ぁぅッ」

「手元が狂っても知らないよ?」

意地悪く笑いかけられると、おとなしく脚を開くことにした。 
私の様子を窺っていた司が、腹部に手を置きながら楽しそうに毛を剃り落としてゆく。

「これぐらいでいいかな」

一通り剃り終え、シャワーで流されると、剥き出しの陰部を見て言葉を失った。先程まであったものが無くなってしまった違和感と、陰部を露にしている羞恥に、複雑な表情を浮かべていただろう。

「可愛くなったね」

司が無毛になった下腹部に触れ、陰核を指で転がすように愛撫し始める。

「…ふっ‥ぁン」

待ちわびていた直接的な愛撫に歓喜の喘ぎをあげる。焦らされ続けていた体が、再び熱をもち始めるのに長くはかからず。
いつの間にか、司の指に合わせて腰を動かしていた。

「もっ…と、‥ぁッ‥ぅ」

「もっと?」

陰核をいじる手を速め、空いた手でボディクリップに指を絡めていっきに引き外す。

「あぁッ、‥ぁ‥はぅっ、痛…ッ」

激しい快楽と、痛みを一緒に与えられ、気を遣ってしまう。
体の力が抜け、バスタブに背をあずけると、気が抜けたように意識が途切れた。

「架椰?」

バスタブに背をあずけ、崩れ落ちた架椰の肩を揺する。口元に耳を寄せ、吐息を確認すると、穏やかな笑みを浮かべ、架椰の頭を撫でる。

「世話の焼けるやつだな…」

自らが濡れるのも厭わず、濡れた架椰の体を抱き上げ、ベッドルームに運んだ。




終? 
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