魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第五章「選挙開幕」

第35話 遅刻の理由

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 そのころ、アッシュが自分の心配をしていることなど露知らず。魔術科のローブを羽織った双魔は正門を入って少しのクレープの屋台の前で片目を瞑ってこめかみをグリグリしていた。

 「…………」

 ティルフィングがクレープ屋の前にしゃがみ込んでしまって動かないのだ。アパートを少し遅めに出発し、早くも慣れたが、いつも通りティルフィングと手を繋いで学園までやってきた。

 一応、左文に来るかどうかを確認したが「ごちそうを作って吉報をお待ちしています!」とたすきを掛けて腕まくりをし、気合十分と言った様子だったので置いてきた。

 学園に着くとティルフィングはその賑わい様に目を輝かせた。正門を入ってからずっと落ち着かずにキョロキョロしていた。興奮しているようで双魔の手を握る力が強くなっている。そして、少し歩いたところでクレープ屋に目が釘付けとなった。パッと双魔の手を離してクレープ屋の前に走っていった。そして、今の状況に至る。

 ティルフィングはクレープ屋のお姉さんが見事な手際で鉄板の上に垂らしたクレープの生地を薄く、円く伸ばすのを凝視している。あまりの熱心さにお姉さんは冷や汗を垂らしている。

 「ティルフィング……もうそろそろ行かないと間に合わないんだが」
 「うむ、わかっておる」

 そう言いながらティルフィングは一歩も動かない。そして、こちらを向きもしない。

 さて、どうするかと腕を組むとお姉さんと目が合った。

 (困りましたねぇ……)
 (そうですねー……どうしましょうか?)

 視線で会話が成立してしまった。時計を確認すると選挙開始まで二十分を切っている。双魔は第五ブロックなので最悪第四ブロックが終わる前に到着すればいいが、面倒を避けるためになるべく時間通りに闘技場に着いておきたい。

 「……ティルフィング、取り敢えずクレープは買ってやるから急ぐぞ」
 「むう……しかし、もっと見ていたいぞ……」
 「クレープなら左文も作れるぞ」
 「む!本当か!?」 
 「ん、本当だ」

 双魔はしれっと嘘をついた、左文がクレープを作っているところなど見たことがない。

 (まあ……言えば作ってくれるだろ)

 「では、今は我慢するぞ!」
 「ん、じゃあ、お姉さん。チョコバナナのクレープにバニラアイスとキャラメルソースをトッピングしてください」
 「はーい、かしこまりました!」

 お姉さんは鮮やかな手つきでクレープを焼き上げるとバナナやクリーム、チョコ、アイスと手際よく具材を盛りつけクルクルと巻いて紙に包んでティルフィングに差し出した。

 「はいーお待たせしました」

 ティルフィングはそれを満面の笑みで受け取る。

 「うむ、感謝するぞ!」
 「これ、お代」
 「はい、丁度いただきますね!ありがとうございました!」

 双魔が代金を払っている間にティルフィングは早速クレープにかぶりついていた。そして、また満面の笑みを浮かべる。

 「むむ!甘くてとても美味だぞ!」
 「ん、そいつはよかった。じゃあ、行くぞ」

 ティルフィングの空いている方の手を掴んで歩き出した時だった。

 (ん?)

 見覚えのあるフードが視界の端に入った気がした。立ち止まってフードが見えた方を確認するが、そこにはフードを被った者などおらず、生徒たちが行き交っているだけだった。

 「むぐむぐ……ソーマ、どうかしたのか?」

 ティルフィングがクレープを口いっぱいに詰めながらながら双魔の顔を見上げた。

 「ん、何でもない」

 (……気のせいか?)

 双魔は釈然としないまま闘技場へと急いだ。

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