魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第四章「暗雲のル=シャトリエ」

第169話 静かなる怒り

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 「…………っ!?」

 恐る恐る、視線を横に戻すとそこには先ほどの気怠げな雰囲気から一転、銀と黒の入り混じった髪の少年がその蒼き瞳でオーギュストを捉え、静かに見つめていた。

 その表情から感情は読むことは出来ない。しかし、少年はその身から凄まじい魔力、怒気の孕んだ魔力を放っていた。

 見据える相手のみに感じさせる魔力は重圧を放ち、オーギュストを包み込む。一瞬でも気を抜けば、いや、気を抜かないまでもこのまま圧し潰されてしまいそうだった。

 「きっ!きき貴様っ!な、何も……の……」

 身体が勝手に震え出し上手く話せない。

 そんなオーギュストを冷ややかに見つめながら、少年は閉じていた口を開いた。

 「まあ、何が気に入らないの知らないが……俺のことをとやかく言うのはいい…………が、生徒たちのことを言うのは違うだろ?アンタ、仮にも講師として赴任したんだよな?…………違うか?」
 「か、か、かかか……カカカカカ…………」

 あまりの重圧に言葉が出ない。魔術を行使して一杯食わせてやろうと思っても腕が震えて上がってくれない。

 そんなことをしている間にオーギュストを包み込む魔力はより濃密になっていく。

 「とりあえず、ここにいる生徒たちに謝れ……」
 「だ、誰が!わ、私は……まちがっ……がっか…………」

 さらに重圧が強まる。意識を保ち、なんとか立っているが歪んだ口の端には泡が発生している。

 (く、クソっ!こ、ここ、このガキは一体何なん…………だ!…………)

 オーギュストの意識が薄まったその時だった。

 「伏見先生!そこまでです!」

 魔術科のローブを纏った灰色髪で薄い髭を生やしたやや老境に足を踏み入れた男性が教室に飛び込んできた。

 「っ!……ケルナー先生」

 教室に飛び込んできたのはロバート=ケルナー。イサベルたちのクラスの担当講師だった。

 温和な人物で生徒や同僚たちからの人望も厚い魔術科の主任だ。

 ケルナーの呼びかけで双魔の放っていた重圧が一瞬で霧散する。

 「っ!はあー……はあー…………はあー……」

 解放されたオーギュストは息を荒くしてその場で片膝をついた。

 そのオーギュストにケルナーは批難の念を込めた口調で声を掛けた。

 「シャトリエ殿、予定より早く着いたと聞いたが早速問題を起こさないで頂きたい……学園長からお話があるそうです。さ、早く教室を出て向かうように」

 ピシャリとまるで生徒が叱られるかのように言われたオーギュストはよろよろと立ち上がって双魔に背を向け、教壇を降りた。

 「…………フシミ…………覚えたぞ」

 刹那、振り返り双魔を睨み、そのまま、双魔にも生徒たちにも一切の謝罪をすることなく、乱入者は教室を後にした。

 ケルナーはそれを見送ると教室に一歩入り、双魔に手招きをした。

 「……?」

 双魔はケルナーの傍へと足早に近づく。すると、ケルナー口元に手を当てて労うかのような表情を浮かべた。

 「済まないね……詳しい話は後で紙に書いて伏見先生の部屋に届けておくよ。とりあえず鐘が鳴るまで授業を続けて欲しい……」 
 「…………分かりました」

 ケルナーは詳しくは語らなかったが十中八九、騒ぎに気づいた学園長に指示されて来たのだろう。

 遅れて双魔は訳の分からない男のせいで生徒たちを怯えさせてしまったことに罪悪感を覚えた。そう言う意味でもケルナーは最良のタイミングで割って入ってくれた。

 「それじゃあ、引き続きよろしくね」

 ケルナーはポンっと双魔の肩を軽く叩くと目配せをして、教室の戸を静かに閉めて去っていった。

 「…………」

 双魔は踵を返すとこめかみをグリグリと刺激しながら教卓の前に戻った。

 教室内を見渡すと生徒たちは皆、茫然として固まっている。

 「あー…………」

 双魔が声を出すと生徒たちはハッと我に返ったかのように動きはじめた。

 「…………じゃあ、解説の続きから」

 その後、双魔は一応鐘が鳴るまで授業を続けたが、生徒たちの動揺が大きく、復習とはいえ内容の理解が確認できなかったので、改めて資料を配ることを約束して授業を終えた。

 (…………オーギュスト=ル=シャトリエか…………何なんだ?アイツは…………)

 授業を終えた後、双魔は胸中に靄を抱えながら、それを発散させようと乱暴に頭を掻くと少し殺気立った足取りで自分の準備室へと向かうのだった。

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