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第七章「決闘炎上」
第200話 敗北の決定打
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「ハハ……ハハハ!この勢いは止められないだろう!これで僕の勝ちだ!」
オーギュストは青白くなった顔に勝利を確信する笑みを浮かべた。
この勢いと重量のゴーレムを忌まわしい雑草で止めることなどできるはずはない。
並みの魔術を行使しても止めるのは無理だ。確実に伏見双魔を仕留められる。
頭の中には「相手を過度に傷つけることを禁ず」という約定は残っていなかったが、事実、想定の範囲内なのか決闘責任者たるキリルの介入はなかった。
「ハハハ!ハハ……ん?」
哄笑していたオーギュストの目にあるものが映る。
屈んで、地面に手をつく伏見双魔。そして、地面に浮かんだ巨大な緑の魔法円。
(何をする気だ?)
「配置”足喰み苔”!」
伏見双魔が何かを言ったのが耳に届いた。
次の瞬間、緑の魔法円が広がっていた部分の全てが少し茶色身を帯びた緑の何かに覆われた。
「何をしたのか知らんが!僕のゴーレムは止められない!そら!」
オーギュストはステッキを地面に着き姿勢を正すと、残っている魔力をギリギリまで絞り出し、ゴーレム兵たちに注入する。
「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」
すると、ゴーレムたちは猛々しい雄叫びを上げ、勢いをさらに増し、そのまま伏見双魔が出現させた謎の緑の範囲に足を踏み入れた。
何か起こると思いきや、騎馬の勢いが止まることはない。
(勝った!)
オーギュストが心の中でそう念じた時だった。
「……何故だ?何故止まる!?」
計十八騎にも及ぶ怒濤の突進が、双魔を槍の間合いに入れる寸前で止まってしまったのだ。
オーギュストには何が起きているのか分からない、そして、己の最も強き魔術が食い止められた事実を信じることがすぐには出来なかった。
その場で藻掻くように身を震わせるゴーレムたちの背中の隙間から立ち上がる伏見双魔の姿が見えた。
(……ハッ!不味い!)
このまま、奴の増幅器らしき銃で自分を狙われれば万事休すだ。
ほとんど魔力は尽きたが何とか防御しようと構える。
「…………」
しかし、伏見双魔は動かなかった。
そして、僥倖これあり。完全に動きが止まったかに見えたゴーレム兵たちは徐々に前進をはじめた。
(な、何だ!虚仮脅しか!やはり私の勝ちだ!行け!)
更なる前進ゴーレムにを念じ勝利を己がものとしようとしたオーギュスト。だったが、それはすぐに落胆へと転じた。
「……な、な!?」
何と、伏見双魔は何もしていないにもかかわらず炎を身に纏った後列の騎馬兵ゴーレムたちがガラガラとその身を崩しはじめたのだ。
続いて、前列の鋼のゴーレムたちにも異変が生じた。
九騎のゴーレム全てに幾つもの小さな魔法円が浮かび、それぞれ小さな南国に生えているような木が生えてきたのだ。
「”溶鋼の蛸樹”!」
伏見双魔の声が聞こえた。
その声に合わせるようにゴーレムの表面に出現した木が突如成長をはじめた。
まるで、ゴーレムの鋼の体躯を溶かし、絡みつくようにして根が太くなり、幹を、枝葉を成長させる。
やがて、ゴーレムたちは痩せ細り、ガラガラと崩れ果てた。
「き、ききき、貴様!」
オーギュストの狼狽した声に双魔は気だるげな眼差しを向けた。
「……一応、言っておくと炎のゴーレムが崩れたのはアンタのせいだ。竜の炎を使うのはいいが、そこらの土が耐えられるわけがない」
”竜”とは神にも準ずる高等な存在だ。それに関連する物を扱うにはそれなりの準備がいる。軽々に扱えるようなものではないのだ。
「それと、鉄っぽい方が崩れたのは見ての通り俺の仕業だ。まあ、わざわざ説明することでもないか…………」
”溶鋼の蛸樹”はその根から金属を溶かす成分を放出し、溶かした金属を糧に成長する植物だ、溶かされた金属は脆い搾り滓と化す。即ちオーギュストが生成した堅牢なゴーレムの天敵に類するものだった。
そして、伏見双魔の手は今度こそオーギュストを目標に据えた。
(…………僕は負けるのか?)
オーギュストの脳裏に初めて”敗北”の文字が浮かんだ。
これまで、立ちはだかる者は鎧袖一触に打倒してきた。自分は紛れもない強者だと思っていた。
そんな自分が、栄光を確約する決闘で、自分よりも年下の子供に負けると言うのか。
現実味がまるでない。しかし、対峙する少年は、忌々しき伏見双魔を前に抗う術はもう残っていない。
「ヒッ!?」
その蒼い両の瞳が、冷徹さを孕んだ眼が自分を捉えていた。
身体が震え、思わず口から悲鳴が漏れ出た。無意識に、両腕で身体を抱きしめた。
(…………な、何だ?)
ふと、何か硬い棒状の物が懐に入っていることに気づく。
(そ、そうだ!僕にはまだこれがあった!これを使えば!僕は奴に勝てる!イサベルは!ガビロールの遺産は僕の物だ!)
オーギュストは青ざめた顔から一転、愉悦に満ちた笑みを浮かべると切り札たる、祖先より伝わる宝杖を懐から出して頭上に掲げた。
「ハハハハハ!僕はまだ負けていない!目にものを見せてやる!我、神の御業を写しし者!汝、命を吹き込まれし者!我が魔力を糧に!その力を解放し我が敵を打倒さん!」
詠唱と共に手にした宝杖に微かに残った魔力を流し込む。
次の瞬間、その場を覆わんばかりに杖の先端の紅玉が光輝き、オーギュスト自身を含む四人の視界を奪い去った。
オーギュストは青白くなった顔に勝利を確信する笑みを浮かべた。
この勢いと重量のゴーレムを忌まわしい雑草で止めることなどできるはずはない。
並みの魔術を行使しても止めるのは無理だ。確実に伏見双魔を仕留められる。
頭の中には「相手を過度に傷つけることを禁ず」という約定は残っていなかったが、事実、想定の範囲内なのか決闘責任者たるキリルの介入はなかった。
「ハハハ!ハハ……ん?」
哄笑していたオーギュストの目にあるものが映る。
屈んで、地面に手をつく伏見双魔。そして、地面に浮かんだ巨大な緑の魔法円。
(何をする気だ?)
「配置”足喰み苔”!」
伏見双魔が何かを言ったのが耳に届いた。
次の瞬間、緑の魔法円が広がっていた部分の全てが少し茶色身を帯びた緑の何かに覆われた。
「何をしたのか知らんが!僕のゴーレムは止められない!そら!」
オーギュストはステッキを地面に着き姿勢を正すと、残っている魔力をギリギリまで絞り出し、ゴーレム兵たちに注入する。
「「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」
すると、ゴーレムたちは猛々しい雄叫びを上げ、勢いをさらに増し、そのまま伏見双魔が出現させた謎の緑の範囲に足を踏み入れた。
何か起こると思いきや、騎馬の勢いが止まることはない。
(勝った!)
オーギュストが心の中でそう念じた時だった。
「……何故だ?何故止まる!?」
計十八騎にも及ぶ怒濤の突進が、双魔を槍の間合いに入れる寸前で止まってしまったのだ。
オーギュストには何が起きているのか分からない、そして、己の最も強き魔術が食い止められた事実を信じることがすぐには出来なかった。
その場で藻掻くように身を震わせるゴーレムたちの背中の隙間から立ち上がる伏見双魔の姿が見えた。
(……ハッ!不味い!)
このまま、奴の増幅器らしき銃で自分を狙われれば万事休すだ。
ほとんど魔力は尽きたが何とか防御しようと構える。
「…………」
しかし、伏見双魔は動かなかった。
そして、僥倖これあり。完全に動きが止まったかに見えたゴーレム兵たちは徐々に前進をはじめた。
(な、何だ!虚仮脅しか!やはり私の勝ちだ!行け!)
更なる前進ゴーレムにを念じ勝利を己がものとしようとしたオーギュスト。だったが、それはすぐに落胆へと転じた。
「……な、な!?」
何と、伏見双魔は何もしていないにもかかわらず炎を身に纏った後列の騎馬兵ゴーレムたちがガラガラとその身を崩しはじめたのだ。
続いて、前列の鋼のゴーレムたちにも異変が生じた。
九騎のゴーレム全てに幾つもの小さな魔法円が浮かび、それぞれ小さな南国に生えているような木が生えてきたのだ。
「”溶鋼の蛸樹”!」
伏見双魔の声が聞こえた。
その声に合わせるようにゴーレムの表面に出現した木が突如成長をはじめた。
まるで、ゴーレムの鋼の体躯を溶かし、絡みつくようにして根が太くなり、幹を、枝葉を成長させる。
やがて、ゴーレムたちは痩せ細り、ガラガラと崩れ果てた。
「き、ききき、貴様!」
オーギュストの狼狽した声に双魔は気だるげな眼差しを向けた。
「……一応、言っておくと炎のゴーレムが崩れたのはアンタのせいだ。竜の炎を使うのはいいが、そこらの土が耐えられるわけがない」
”竜”とは神にも準ずる高等な存在だ。それに関連する物を扱うにはそれなりの準備がいる。軽々に扱えるようなものではないのだ。
「それと、鉄っぽい方が崩れたのは見ての通り俺の仕業だ。まあ、わざわざ説明することでもないか…………」
”溶鋼の蛸樹”はその根から金属を溶かす成分を放出し、溶かした金属を糧に成長する植物だ、溶かされた金属は脆い搾り滓と化す。即ちオーギュストが生成した堅牢なゴーレムの天敵に類するものだった。
そして、伏見双魔の手は今度こそオーギュストを目標に据えた。
(…………僕は負けるのか?)
オーギュストの脳裏に初めて”敗北”の文字が浮かんだ。
これまで、立ちはだかる者は鎧袖一触に打倒してきた。自分は紛れもない強者だと思っていた。
そんな自分が、栄光を確約する決闘で、自分よりも年下の子供に負けると言うのか。
現実味がまるでない。しかし、対峙する少年は、忌々しき伏見双魔を前に抗う術はもう残っていない。
「ヒッ!?」
その蒼い両の瞳が、冷徹さを孕んだ眼が自分を捉えていた。
身体が震え、思わず口から悲鳴が漏れ出た。無意識に、両腕で身体を抱きしめた。
(…………な、何だ?)
ふと、何か硬い棒状の物が懐に入っていることに気づく。
(そ、そうだ!僕にはまだこれがあった!これを使えば!僕は奴に勝てる!イサベルは!ガビロールの遺産は僕の物だ!)
オーギュストは青ざめた顔から一転、愉悦に満ちた笑みを浮かべると切り札たる、祖先より伝わる宝杖を懐から出して頭上に掲げた。
「ハハハハハ!僕はまだ負けていない!目にものを見せてやる!我、神の御業を写しし者!汝、命を吹き込まれし者!我が魔力を糧に!その力を解放し我が敵を打倒さん!」
詠唱と共に手にした宝杖に微かに残った魔力を流し込む。
次の瞬間、その場を覆わんばかりに杖の先端の紅玉が光輝き、オーギュスト自身を含む四人の視界を奪い去った。
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