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第七章「決闘炎上」
第202話 鏡華の思い
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炎の巨人が現れる直前、赤レンガのアパート、双魔が住んでいる部屋のリビングでは鏡華、ティルフィング、左文の三人がそれぞれエプロンや割烹着を着て談笑しながら、食卓を囲んで何やら作っていた。
「……むー、キョーカこれでいいのか?」
ティルフィングは手元の鍋を覗き込んで首を傾げる。右の手にはマッシャーが握られていた。
「んー?どぉれ?……うんうん、ええ感じやね、もう少し潰したらこっちの材料と混ぜよか」
「うむ、分かった!」
ティルフィングは鍋の中にマッシャーを刺しいれるとせっせと上下に動かしはじめた。
鍋の中には崩れた茹でジャガイモ。そして、鏡華の手元のフライパンの中には炒められたひき肉や玉ねぎ。
そう、三人はコロッケを作っていた。
何故コロッケを作っているのか、経緯は至って普通で昼食の時に偶々、鏡華と左文がコロッケの話をしたところ、好奇心旺盛かつ食いしん坊のティルフィングが是非食べてみたいというので作ることになったのだ。
「鏡華様、卵とパン粉の準備ができましたよ」
「うん、左文はん、おおきに。ああ、ティルフィングはん、そんくらいでええよ。一旦、うちに貸して」
「うむ」
鏡華はティルフィングから完全にマッシュポテトとなったジャガイモが入った鍋を受け取るとそこに軽く塩コショウを振り、フライパンの中の挽肉と玉ねぎを入れた。
「そしたら、これで軽く混ぜて」
「うむ!」
ティルフィングは差し出された木べらを受け取ると鍋の中身をかき混ぜはじめる。
それを見届けると鏡華は左文の方に向き直った。
「双魔は上手くやってるやろか?」
「そうですね……少々心配ですが……坊ちゃまのことですから何とかなさっていると思いますよ?」
「ほほほ……せやね」
朗らかに笑う鏡華、一方、左文は何とも言えない表情を浮かべていたが。
「ん?どしたん?」
それに気づいた鏡華に声を掛けられた左文は一瞬、逡巡を見せたが結局口を開いた。
「鏡華様は……本当によろしかったのですか?」
「んー?何が?」
「いえ……その、坊ちゃまとガビロール様が、その…………」
如何やら左文は鏡華がイサベルに対して双魔と結ばれることを承知した件に後悔がないのか気にしているようだ。
「ああ、ええのええの。双魔は優しいし、格好ええからね。多分これからも結構な女の子に惚れられてまうやろけど……双魔を独り占めにするんはなんか悪いなぁーって思ってまうのよ」
「悪い……ですか?」
鏡華の顔から笑みが消え、真剣な表情になった。
「そうそ。それに、双魔は鈍いとこあるけど、もし自分が好かれてる分かって、その子の気持ちに応えてあげられへん言うて苦しむに決まってるさかいね。双魔が傷つくんはうちも苦しいから…………」
「そう……ですか…………」
鏡華の考えの根底はあくまで双魔自身のことを慮ってのものだった。
(坊ちゃまは……幸せなお方ですね……)
心の中で感じ入る左文を横目に鏡華は再び茶目っ気のある笑みを浮かべた。
「まあ、そのかわり、双魔に言寄ってきた娘はしっかりとうちが見極めさせてもらうけどね!」
鏡華の瞳が一瞬、紫色に輝いた。
「これはこれは……御見それいたしました」
「ほほほほほほ!あら?玻璃、どうかしたん?」
笑い声を止めた鏡華がソファに座ってじっとしていたはずの浄玻璃鏡が窓辺に立っていることに気づいた。
「……何やら……外が……騒がしい……な」
そう言われると外からの多くの人々のざわめきや悲鳴のようなもの聞こえてくるような気がする。
「それに……妙な……気配も……」
「妙な気配?ってティルフィングはん!?」
鏡華が首を傾げて、窓の方に足を向けた時だった。
ティルフィングの身体が淡い光を帯び、その光がどんどん強まっていく。
「むむっ!双魔が我のことを呼んでいる!では!行ってくるぞ!」
そう言うとティルフィングの全身を包んだ紅の輝きは霧散し、ティルフィングの姿は跡形もなく消えていた。
「…………」
突然の出来事に左文が呆気にとられる一方、鏡華は身に着けていた割烹着を脱ぎ捨てた。
「はっ、鏡華様!?」
「なんや、嫌な予感がする!うちもちょっと行ってくるさかい左文はんはお留守番よろしゅう!玻璃!」
「……承知」
「あっ!鏡華さ……ま……」
あっという間にリビングには左文一人になってしまった。
状況を鑑みるに良くないことが起っているのは確かだ。が、行って自分に何ができるだろうか。幸い、声は遠く、何かが起きているのは此処から離れた場所のようだ。
左文は作業途中の食卓に目を遣ると一つため息をついた。
「はー……この家を守るのも私のお役目です!留守番をしつつ……まずはこれを仕上げてしまいますか」
左文は襷をかけ直し、一人コロッケ作りに勤しむのだった。
「……むー、キョーカこれでいいのか?」
ティルフィングは手元の鍋を覗き込んで首を傾げる。右の手にはマッシャーが握られていた。
「んー?どぉれ?……うんうん、ええ感じやね、もう少し潰したらこっちの材料と混ぜよか」
「うむ、分かった!」
ティルフィングは鍋の中にマッシャーを刺しいれるとせっせと上下に動かしはじめた。
鍋の中には崩れた茹でジャガイモ。そして、鏡華の手元のフライパンの中には炒められたひき肉や玉ねぎ。
そう、三人はコロッケを作っていた。
何故コロッケを作っているのか、経緯は至って普通で昼食の時に偶々、鏡華と左文がコロッケの話をしたところ、好奇心旺盛かつ食いしん坊のティルフィングが是非食べてみたいというので作ることになったのだ。
「鏡華様、卵とパン粉の準備ができましたよ」
「うん、左文はん、おおきに。ああ、ティルフィングはん、そんくらいでええよ。一旦、うちに貸して」
「うむ」
鏡華はティルフィングから完全にマッシュポテトとなったジャガイモが入った鍋を受け取るとそこに軽く塩コショウを振り、フライパンの中の挽肉と玉ねぎを入れた。
「そしたら、これで軽く混ぜて」
「うむ!」
ティルフィングは差し出された木べらを受け取ると鍋の中身をかき混ぜはじめる。
それを見届けると鏡華は左文の方に向き直った。
「双魔は上手くやってるやろか?」
「そうですね……少々心配ですが……坊ちゃまのことですから何とかなさっていると思いますよ?」
「ほほほ……せやね」
朗らかに笑う鏡華、一方、左文は何とも言えない表情を浮かべていたが。
「ん?どしたん?」
それに気づいた鏡華に声を掛けられた左文は一瞬、逡巡を見せたが結局口を開いた。
「鏡華様は……本当によろしかったのですか?」
「んー?何が?」
「いえ……その、坊ちゃまとガビロール様が、その…………」
如何やら左文は鏡華がイサベルに対して双魔と結ばれることを承知した件に後悔がないのか気にしているようだ。
「ああ、ええのええの。双魔は優しいし、格好ええからね。多分これからも結構な女の子に惚れられてまうやろけど……双魔を独り占めにするんはなんか悪いなぁーって思ってまうのよ」
「悪い……ですか?」
鏡華の顔から笑みが消え、真剣な表情になった。
「そうそ。それに、双魔は鈍いとこあるけど、もし自分が好かれてる分かって、その子の気持ちに応えてあげられへん言うて苦しむに決まってるさかいね。双魔が傷つくんはうちも苦しいから…………」
「そう……ですか…………」
鏡華の考えの根底はあくまで双魔自身のことを慮ってのものだった。
(坊ちゃまは……幸せなお方ですね……)
心の中で感じ入る左文を横目に鏡華は再び茶目っ気のある笑みを浮かべた。
「まあ、そのかわり、双魔に言寄ってきた娘はしっかりとうちが見極めさせてもらうけどね!」
鏡華の瞳が一瞬、紫色に輝いた。
「これはこれは……御見それいたしました」
「ほほほほほほ!あら?玻璃、どうかしたん?」
笑い声を止めた鏡華がソファに座ってじっとしていたはずの浄玻璃鏡が窓辺に立っていることに気づいた。
「……何やら……外が……騒がしい……な」
そう言われると外からの多くの人々のざわめきや悲鳴のようなもの聞こえてくるような気がする。
「それに……妙な……気配も……」
「妙な気配?ってティルフィングはん!?」
鏡華が首を傾げて、窓の方に足を向けた時だった。
ティルフィングの身体が淡い光を帯び、その光がどんどん強まっていく。
「むむっ!双魔が我のことを呼んでいる!では!行ってくるぞ!」
そう言うとティルフィングの全身を包んだ紅の輝きは霧散し、ティルフィングの姿は跡形もなく消えていた。
「…………」
突然の出来事に左文が呆気にとられる一方、鏡華は身に着けていた割烹着を脱ぎ捨てた。
「はっ、鏡華様!?」
「なんや、嫌な予感がする!うちもちょっと行ってくるさかい左文はんはお留守番よろしゅう!玻璃!」
「……承知」
「あっ!鏡華さ……ま……」
あっという間にリビングには左文一人になってしまった。
状況を鑑みるに良くないことが起っているのは確かだ。が、行って自分に何ができるだろうか。幸い、声は遠く、何かが起きているのは此処から離れた場所のようだ。
左文は作業途中の食卓に目を遣ると一つため息をついた。
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