魔剣少女と契約した低血圧系魔術師、実は  の生まれ変わりでした?魔導学園で学生と講師を両立しながら何とか生きていこうと思います。

精神感応4

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第二章「時計塔の眠り姫」

第232話 遺物科の毒舌庶務

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 「……それで、結局どういうことなの?」
 「…………ん……いや、まあ…………な」

 改めてアッシュに問い詰められた双魔は今まで見たことがないくらい苦い顔をしている。

 「…………」

 親しく話すようになったのは最近だが、以前から凛としたクールな印象があったイサベルも目の前でそわそわと落ち着かなそうにしている」

 (…………怪しい)

 アッシュは心の内に生まれた疑念を視線に乗せてジトーっと双魔を見つめた。

 もう、どう見ても二人は怪しかった。双魔に関しては掴み切れないがイサベルからは恋人同士の間柄特有の空気が濃密に漂っていた。

「…………まあ、色々あったんだが……その、イサベルと結婚を前提に付き合うことになった」

 観念したのか双魔はアッシュの視線から逃げるように顔を動かしてそう言った。

 「…………………………………………え?」

 双魔の衝撃の告白にアッシュは思考がついていかず長い沈黙の後に出た声は非常に間抜けなものだった。

 俄かに信じられずイサベルの方を見る。

 「……っーーーー!」

 するとイサベルもイサベルで手を両手で覆い悶絶していた顔は見えないが両耳がしっかりと真っ赤になっていた。

 「そ、双魔!?どういうこと!!?」

 思考がやっと追いついてきたのかアッシュは困惑を全力でその一言に込めた。

 「……急に大きな声を出すなよ」

 アッシュの声は人のいない静まり返った学園に響き渡ったのではないかと思うほど大きかった。

 双魔は少し驚いたのか閉じていた片目を開き、耳を手で抑えた。が、アッシュとしてはどれどころではない。少し声は落としたが普通よりは大きな声で話を続ける。

 「双魔には鏡華さんがいるじゃない!?それなのに…………ガビロールさんと結婚するってどういうことなの!?鏡華さんはどうなっちゃうの!?」

 アッシュは長い付き合いで双魔が人の心を踏み躙るような酷い人間ではないと分かっているので怒りなどは浮かばず、只々困惑が脳内で暴れまわるばかりだった。

 それを感じ取ってか双魔はアッシュの顔の前にゆっくりと右手をかざした。

 「ん、アッシュ、落ち着け…………ちゃんと説明する……」
 「そ、そう?」
 「ああ……まあ、俺も未だによく理解できてないから聞いても混乱したままかもしれんが、取り敢えず聞いてくれ……」
 「う、うん!分かった!」
 「ん……よっと……さて、どこから話すか……まずは…………」

 双魔は背もたれから身体を起すと起こったことをありのままに親友へと話すのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 「……………………」
 「…………」
 「…………っーーーーーーーー!!」

 話しはじめてしばらくが経った。全ての出来事から双魔だけが知っている情報を差し引き、イサベルと今の関係に至るまでの出来事を抜き出し一筋になるように語り終えた。

 双魔は再び椅子に身体を預け、片目を閉じて何とも言えない表情を浮かべている。

 自分の口から人に説明するとやはり所々で理解に苦しむ点があるのだろう。

 話を聞き終えたアッシュは凍てついたかのように固まり、しきりに瞬きをしている。

 親友の口から聞いた話を必死に理解しようとしているのだろう。

 イサベルに至っては両手で顔を覆ったまま上半身を丸めて亀のようになっていた。

 双魔とのやり取りがフラッシュバックするのか頭から湯気を上げながら時々身体を震わせて声にならない声を上げていた。

 沈黙が評議会室を支配する中、作業を続けていたシャーロットが紙束を整えるために机を叩くトンットンッと言う少し高い音が響いた。

 「…………要は体のいい二股ですか…………不潔ですね」
 「…………」

 作業をしながら話は聞いていたのかシャーロットは双魔の胸をえぐるような一言を息をするように呟いた。

 その自覚があった双魔は思わず背もたれから身体を起して姿勢よく真顔になってしまう。

 シャーロットは書類の束を片手に立ち上がるとつかつかと双魔の机に近づき書類の山の端の方にパサリと紙束を置いた。

 「整理と確認、終わりました。リチェックとサインをしておいてください。それでは、私は用事がありますので失礼します」

 シャーロットは何を考えているのか全く感じさせない冷めた目で双魔たち三人をチラリと見てから、踵を返し、自分の机に置いてあるコートとバッグを手にすると評議会室を出ていった。

 「……っ!」
 「…………っ!」

 バタンッ!扉が閉まる音と衝撃が部屋の中を揺らす。それで我に返ったのかアッシュとイサベルはハッとしたように動き出し、双魔に目をやった。

 「…………体のいい……二股か…………」

 そうポツリと呟いた双魔はシャーロットの一言が相当深く刺さったのか、イサベルもアッシュも今まで見たことのないような顔をしていた。

 「そ、双魔!気にすることないよ!シャーロットちゃんが辛辣なのはいつものことじゃない!ね?大丈夫だよ!」

 アッシュの言う通りシャーロットは大人しそうな顔をしてかなり毒を吐く。

 この前はフェルゼンが「女に慣れていなさ過ぎて気持ち悪い」、「自分を鍛え上げること以外考えられない馬鹿」と言われ、カラドボルグもそれに同調したためその場に体育座りをしてフローリングに”の”の字を書きはじめるほど落ち込ませ。

 アッシュも「いつも女子とばかり話しているから男子に目の敵にされる」、「実力があるのは差し置いて、威厳や迫力が皆無」と気にしているところをザクリと刺され数日落ち込んでいた。

 そして、今日はその矛先が双魔に向いたのだろう。と言っても先ほどの一言にはフェルゼンやアッシュの時と違い明確な嫌悪感が含まれていた。双魔もそれを感じ取ってへこんでいるのだろう。

 「そ、双魔君!大丈夫よ!人に何を言われようと私は双魔君のことが……その……す、好き……だし!鏡華さんも同じよ!だから気にすることないわ!」
 「…………」

 イサベルはシャーロットの一言で熱の引いた頬を再び朱に染めながら、双魔の手を取って自分の気持ちが伝わるようにギュッと握りしめた。

 「…………ん……そうだな……イサベル、ありがとさん……」
 「っ!え、ええ……」

 双魔は強張った表情を綻ばせると口元に薄い笑みを浮かべてイサベルの手を軽く握り返した。

 (…………ホッ…………びっくりしたー!双魔が落ち込むところなんて……見たことあったっけ?……ガビロールさんがいてくれてよかったー!)

 双魔がいつも通りの様子を覗かせたのを見て心の底から安堵して、胸を撫で下ろしながら、身体から力がひょろりと抜けていくのを感じるアッシュであった。
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