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49 畑活③ ~六日目
しおりを挟む「お腹減った……」
早速、朝食にすることにして、一つだけ生るマンゴーに似た木の実を捥ぎ、公爵城で貰ったガーデンテーブルと椅子を出して置く。ついでに皿とナイフ、フォークを置き、干し肉と、井戸から汲んだ水を入れたガラスのコップをテーブルに並べる。なお、井戸の水はステイタスを見て安全を確認している。
「そうだ、収穫したのを一つだけ食べてみよう」
どれが良いかと悩んで、ゲーム時代のモモクマの好物だった、ハニーベア大根の一番小ぶりなものを試食しようと決める。これは生でも食べられる上に甘くて美味しいのだ。
とは言え、マリサの作った野菜である。丸みのある形のそれは桜島大根と似ていてそれよりさらに大きい。一番小さいものでも大玉スイカ程もあるのだ。
ハニーベア大根を洗うためまた井戸に行き、そうだと閃く。
こぽこぽと水が湧き出ている井戸の周囲に、畑の脇に転がる大き目の石を置けば井戸らしくなるだろうと思いついたのだ。
いずれ木やレンガ、石等で囲うつもりだったのだ。思いついた今日から少しずつやってみようとマリサは頷く。
畑に取って返し、グレープフルーツ程のサイズの石をいくつかアイテムボックスにしまい戻ってくると、井戸の周囲に並べていく。
半円分並べて一息ついたら、またお腹がなった。
「しまった、先に食べなくちゃ」
ハニーベア大根を洗って、まな板と包丁も出し、まず半分にカットしたものを四分割にして一つ残す。他をアイテムボックスに入れると、ハニーベア大根八分の七と表示された。
ハニーベア大根のステイタスを見ると、
『収穫済 1・1倍 S フルゥピュア産出種子……』
と表示された。
フルゥピュアで貰ったものらしい。もう一つ一番大きく育ったもののステイタスは、
『収穫済 1・2倍 +S マリサとシロリンの畑産出種子……』
と出た。
「この違い、もしかしたら、神獣になるシロリンが耕した畑からとれた種だからかな。うん、そうに違いないっ!」
マリサはふふっと微笑むと、ハニーベア大根を短冊状に刻み始めた。
「塩と植物油とコショウ、ビネガーもあったかな? それからナッツ類があるから砕いてドレッシングにしよう。はぁーっ、卵があったらマヨネーズ作りたかったよ」
干し肉と木の実を乗せた皿の隣に、ハニーベア大根サラダ入りの器を置いて、テーブルに着いたマリサは「うむむぅ~」と渋い顔になる。
「やっぱり、一人で食べるのって、なんだか物足りないや」
シロリンや、ロバジイ達と共にいたのはほんの数日のこと。それなのに、一人が心許ないだなんて、一人での食事は慣れっこだったはずなのにと、マリサは苦笑する。
「食卓に、温かいものがないせいもあるかな? そう言えば、頂いたコンロは魔石のものだけど、パンって、魔石コンロで焼けるかしら?」
あれこれと考えながらサラダを頬張ると、シャキシャキザクザクと気持ちの良い音がした。
「はら、こへ、とってもおいひい……」
ハニーベア大根の瑞々しい美味しさに、心が少し晴れてきた。
真面目マリサと新マリサの「現金ねぇ……」とハモった声が聞こえた気がしたが、マリサは知らぬ顔をする。
食事を終えて畑を見るともう青々と成長し始めている。
ステイタスを見ると、どれも概ね後七時間後には収穫出来そうだ。マリサのレベルも上がっているのか、最短六時間で収穫可能というのもあった。
「よし、順調、順調!」
少しだけ休もうと、テントに入ったマリサは、「ひゃっ」と声を上げて固まった。
「し、シロリン……」
シロリンを包む大きな繭が、今、うごうごと揺れながら震え、真珠色の輝きを一層強く放っていたのだった。
* ੈ✩* ੈ✩* ੈ✩* ੈ✩* ੈ✩* ੈ✩
更新遅くなりましてすみません。
体調不良が続いたところに、新たな仕事もあり現在も忙しくしております。
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