22 / 51
21 閑話② ~三日目(16話と17話の間)
しおりを挟む「よし、確認するぞ!」
ジーパンのポケットからスマホを取り出す。
電源を入れると早速「箱庭のロンド」の画面が立ち上がった。
「充電しなくてもバッテリーが一ミクロンも減ってないミステリー……」
画面右上のバッテリー表示は「88%」。恐らくこの世界に来る寸前の、あちらの世界の残量そのままだろう。
にゅっと新マリサが頭に浮かび、「考えるな、感じるんだ!」と訳の分からない事を言って消えた。
(おいおい……)
突っ込んでいる場合ではなかった。
本日収穫した際に発生しているであろうポイントの確認と、ポイントで交換できるものの吟味を今の内にしたかった。
「おおっ、収穫ポイント、650ポイントも入ってた! えっ、でも、こんなにもらえたっけ?」
ゲームのマリーサの時は、最初の収穫ポイントは500ポイント台だった記憶がある。うむむ~と考えるが思い当たらないため、一旦保留にする。
一度収穫した野菜の種と苗は倍に増える。今日植えられなかったのは残念だったが、帰ったら早速植えなければと頭を巡らせるマリサだった。
「そうだ、呪文で時間短縮できるなら、早朝から植えたら、一日に二回植えられるかも」
ポイントで交換できるアイテムをスクロールしていく。
「『簡易トイレ』は1500ポイントで交換できるんだ。あっ、『コンポスト・トイレ』がある。これ、畑の堆肥が作れるやつだ。2000ポイントね」
どんどんスクロールして行き、ピタッと指が止まった。
「わあっ、『ログハウス風の家』は、10000ポイントで交換できるのね!」
ゲームでは、家は二の次で欲しいものリストの上位になく、作業小屋を選択していた。
幾つかある家の中では必要ポイントも低めで建物のサイズも小さめだが、ログハウス風の家はなかなか頑丈そうに見える。
「シロリンがいても、やっぱりテントでは心許ないもんね」
なにより、雨風を凌げるのが魅力だ。しかし、トイレだって今すぐにでも欲しい。
今のトイレは、シロリンに穴を深めに掘ってもらって、身を隠すため穴の中に足場を作った仕様になっている。ただし、明るい内はまだいいが、夜はまったく足場も底も見えなくなり、そのまま落ちそうで恐怖しかないのだった。
「ううーん、トイレと家、どっちを先にしよう。……まって、ログハウス風の家は一間で、二十㎡ほど。室内は何もついてないんだっけ。でも、小さくても家が10000ポイントは破格な気がするし、なにもないのは仕方ないか」
その他はオプションになるが、調理の出来る薪ストーブ、魔石で浄化する水道付きの流し台、同じく魔石で動くオーブン、風呂、トイレ等が設置できる。
「テーブルとか家具も、それぞれ種類があるんだよね。まあ、いいなと思うものはポイントが大きいけど……」
マイホームで、シロリンとまったり過ごす場面を妄想し、やはり家が欲しいと思うマリサだった。
コンポスト・トイレは魅力的だが、堆肥はポイントで交換できるし、ロバジイからも買えるはずだ。
トイレは独立して外に作るより、オプションで、家の中や家に繋げる形にしたい。
「よし、『ログハウス風の家』に決定!」
早速、設定する。
「家は設定でいいけど、後はその都度選ぶ形にしようかな」
最初に目標設定をしておけば、そのポイントに達成するまで他のものとポイント交換が出来なくなる。うっかり無駄なものと交換しなくて済むのだ。
そういえばとアイテムボックスを開く。
そこから、マリサは自分の畑で収穫したカミナリコムギを一つ取り出して手を翳す。
「オープン」
すると、
『S(品質)・カミナリコムギ イネ科・成熟期 サイズ・二割り増し 光魔法(成長促進)により十時間で成長・収穫済み』
と表示された。
公爵家の畑で蒔いたカミナリコムギのステータスは、
『-S(品質)・カミナリコムギ イネ科・幼苗 サイズ・一割り増し 光魔法(成長促進)により十二時間で収穫可能』
という表示だった。
「私のレベル、「5」ってなってる、うん低いね。で、二つのカミナリコムギの品質の違いに、私のレベルは関係なさそう。うちの畑で収穫したものの方が、成育がいいもの。ジャングルみたいになってたけど、野菜はどれも熟れすぎたってこともなかったし。それと、成長の時間も二割ほど早いみたい」
戻ったら、次は寝落ちしないで野菜を育てて確認する外なさそうだ。
一日で二毛作(?)それが出来たとして、ちゃんと育つかは不明だ。
「あっ、もしかして、収穫ポイントが多かったのは、サイズが二割大きかったから? 品質の違いもあるかな?」
頭で計算すると、650ポイントから二割引けば、520ポイントになる。
「そっか、そういうことなのかも」
マリサはひとり頷いた。
「収穫すれば、種も苗も倍に増えるし、うまくいけば、案外早くマイホームが手に入るかも。んーっ、早く帰って植えたいーっ」
明日から南の地へ向かうというのに、頭の中は、畑のことでいっぱいだ。目標を立てると、気持ちに張りが生まれるらしい。俄然やる気に燃えるマリサだった。
0
あなたにおすすめの小説
妖精の森の、日常のおはなし。
華衣
ファンタジー
気づいたら、知らない森の中に居た僕。火事に巻き込まれて死んだはずだけど、これってもしかして転生した?
でも、なにかがおかしい。まわりの物が全部大きすぎるのだ! 草も、石も、花も、僕の体より大きい。巨人の国に来てしまったのかと思ったけど、よく見たら、僕の方が縮んでいるらしい。
あれ、身体が軽い。ん!?背中から羽が生えてる!?
「僕、妖精になってるー!?」
これは、妖精になった僕の、ただの日常の物語である。
・毎日18時投稿、たまに休みます。
・お気に入り&♡ありがとうございます!
異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。
彩世幻夜
恋愛
エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。
壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。
もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。
これはそんな平穏(……?)な日常の物語。
2021/02/27 完結
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)
犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。
意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。
彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。
そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。
これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。
○○○
旧版を基に再編集しています。
第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。
旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。
この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。
もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜
双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」
授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。
途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。
ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。
駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。
しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。
毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。
翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。
使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった!
一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。
その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。
この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。
次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。
悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。
ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった!
<第一部:疫病編>
一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24
二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29
三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31
四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4
五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8
六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11
七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。
『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合
鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。
国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。
でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。
これってもしかして【動物スキル?】
笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる