200 / 201
番外編~海翔のライバル~
#4
しおりを挟む「……え!? 居るって、もしかして…」
海翔の言葉に驚き過ぎた私は、大きな声を出していた。
そんな私に対して海翔は、
「あぁ、多分な…」
言葉も態度も、とても落ち着いてるように見える。
「海翔スゴい! どうして解ったの?」
そんな海翔に興奮気味に聞いてみれば、
「だって芽依、今月生理まだだっただろ? 普通だと終わってんのに」
さも当然の事のように自分の事のように言ってのける海翔。
「……え、あ、うん。えっ!? 覚えてるの? まさか日付まで?」
「ん? あぁ、覚えてる。 症状や数値って一度聞いたら覚えてるし。職業病だろうな?」
キッパリ言い切る海翔にまたまたびっくりさせられた。
けど、お腹に手を当てて、ここに居るのかもって思っただけで……
「スッゴく嬉しい」
嬉しくてたまらなくて、いてもたってもいられなくて海翔に抱きつけば……。
「俺は、ちょっと複雑だけどな」
そんな意外な言葉が返ってきたのだった。
……え?
今、『複雑』って言ったけど……。
前にも言ってたように、まだ父親になることに不安があるってことなのかな。
それとも、子供があんまり好きではないってことなのかな。
どちらにしても、海翔にとってはあんまり嬉しくないってことなんだよね……。
「芽依?」
「……え?」
色々考え込んでたら海翔に呼ばれて、ゆっくり海翔の様子をうかがいながら視線を向ければ、
「また、なんか悪い方に考えてたんだろ?」
「……え? なにが?」
フッと軽く笑った海翔に聞かれたけど、うわの空だったから海翔の言葉が頭に入ってこなくて キョトンと見つめることしかできなくて。
そんな私の心の中を見透かしたように、
「だから、俺が父親になる覚悟ができてないとか、子供が嫌いだから嬉しくないんじゃねぇかって、考えてたんだろって聞いたんだけど……。違うか?」
「……う、うん。そういう意味じゃなかったの?」
ズバリ言い当てられてしまったけど、海翔が何を言いたいのかが益々解らなくなってしまった。
「俺、芽依が妊娠してるかもって思った時にな、芽依にもし何かあったらって、不安で堪らなかったんだ。猫や犬と違って、生まれるまでに10ヶ月もかかるだろ?
いくら医学が進歩してるっていっても、絶対なんて保証なんかない訳なんだし。もし、芽依を失うことになったらって……。
いくら人間の医者じゃないっていっても獣医師のクセに、可笑しいよな? これじゃ父親どころか、芽依の支えになんてなれねぇよな?」
ただただ、海翔が心配そうな表情をして、真剣に話してくれるのを聞いてたら、少しずつ胸のどこか奥の方からあったかい何かが込み上げてきた。
言い終えた海翔は、自嘲するような笑みを浮かべて私のことを優しく見つめた後、いつもそうしてくれるように、ふわりと優しく包み込むようにして抱きしめてくれた。
途端に、胸の奥からあったかいものが涙と一緒に溢れて止まらなくなってしまって。
「芽依、ごめん。不安にさせるつもりじゃなかったんだ。ごめんな?」
「ち、違うよ。不安になったんじゃないの。海翔にそんなに色々心配してもらえて。そこまで想ってもらえてスッゴく嬉しいの…」
自分のせいで泣かせたと勘違いして謝ってくる海翔にしがみついて、ただ自分の想いを伝えるのに精いっぱいだった。
1
あなたにおすすめの小説
ドクターダーリン【完結】
桃華れい
恋愛
女子高生×イケメン外科医。
高校生の伊吹彩は、自分を治療してくれた外科医の神河涼先生と付き合っている。
患者と医者の関係でしかも彩が高校生であるため、周囲には絶対に秘密だ。
イケメンで医者で完璧な涼は、当然モテている。
看護師からは手作り弁当を渡され、
巨乳の患者からはセクシーに誘惑され、
同僚の美人女医とは何やら親密な雰囲気が漂う。
そんな涼に本当に好かれているのか不安に思う彩に、ある晩、彼が言う。
「彩、 」
初作品です。
よろしくお願いします。
ムーンライトノベルズ、エブリスタでも投稿しています。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる