拾われたパティシエールは愛に飢えた御曹司の無自覚な溺愛にお手上げです。

羽村 美海

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#44 王子様の嫉妬!? ⑶

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 けれどそれなら、あんな紛らわしい言い方しなければよかったじゃないか! 
   
  馬鹿にされたままでは気が収まりそうもなかった私は、羞恥も忘れて反撃を試みた。

「だったら、あんな紛らわしい言い方しないでくださいッ! 色恋に不慣れなんですから、勘違いするのも当然ですッ!」

 すると桜小路さんは、あっさりとのたまった。

「お前には俺のことを好きにさせると言っただろう? だから、俺がお前の従兄に嫉妬したと思わせて、お前の反応を確かめただけだ」
「そんなの酷いッ!」
「別に酷くないだろう? 恋愛には駆け引きも必要だ。これから一月の間、そういうことも含めて、たっぷりと教え込んでやる。お前は余計なことを考えず、俺のことを好きになることだけに集中していればいい」

 桜小路さんのあんまりな物言いに悔しくて悔しくて。

「だから、あなたのことなんて好きにならないって言ってるじゃないですかッ!」

 憎たらしいイケメンフェイスを睨み上げながら言い返してみるも。

「でも、俺にキスされるのは嫌じゃなかったんだろう? それに、俺が嫉妬したと思い込んで、まんざらでもなさそうだったじゃないか。少なからず、嫌悪感はないはずだ。お前こそ、俺のことを好きになり始めてるんじゃないのか?」

 悔しいくらいに整った王子様然としたイケメンフェイスに、勝ち誇ったような笑顔を湛えて、図星をつきつつ、自意識過剰発言をお見舞いされてしまい。

 余計悔しい思いをさせられることとなった。

――だからって、別に、桜小路さんのことを好きになりかけている訳じゃない。

 恋愛ごとに不慣れでキスなんかしたことなかったから、そういうことに慣れていて、キスだって上手に違いない桜小路さんのキスに、ただただ酔いしれてしまってただけなのだ。

「あなたのことなんか好きになりかけてもないし、これからだって絶対に好きになりませんッ!」

  後から後から悔しさがこみ上げてきて、とうとう爆発してしまっていたのだけれど。

 組み敷いた私の鼻先すれすれの眼前まで迫ってきた桜小路さんに、首筋をツーッと指先でなぞりながら、

「そんなにムキになって否定しても、身体は嘘を付けないものだ。そのことも、これからたっぷりと教えてやる」

やけに色っぽい声音で宣言されてしまい。

 触れられている首筋から、あたかも弱い電流でも流されているかのようにゾクゾクと身体が粟だっていく。

 と同時に、私の無防備な唇は、桜小路さんの柔らかな唇によって優しく啄まれてしまっていて。

――桜小路さんの言いなりになんてなるもんか!

 そう思うのに、どういう訳か身体は制御不能で、桜小路さんのことを拒むことができない。

 優しく啄むだけだったソフトなキスはやがて深いものになっていて、息をつくような余裕も思考も全てが奪い去られてしまっていた。

 そうして気づいた時には、いつものように桜小路さんの広い胸に抱き寄せられていたのだった。

 桜小路さんにお見舞いされたキスが、あんまり深くて濃厚なモノだったお陰で、まだぼんやりとしてて心ここにあらず。

 あたかも身体は雲の上にでも浮かんでいるような、ふわふわとしていて、夢見心地だ。

 この前から一体どういうことだろう?

 桜小路さんにキスされるのが嫌などころか、もっともっとキスしてて欲しいって思ってしまう。

 それに、どうして桜小路さんの腕の中はこんなにも居心地がいいんだろう?

 どうしてこんなにも安心できるんだろう?

――ずっとずっとこうしてて欲しいなぁ。

 なんて、どうしてそんなことを思ってしまってるんだろう?

 ぼんやりとした意識の中で、解けない謎が次々に浮かび上がってくる。

 そんな私のことを大事そうに抱き寄せてくれている桜小路さんは、私の頭を優しく何度も撫でてくれている。

 それがまた心地よすぎるものだから、一向に動けないでいる。

――さっき言われたように、桜小路さんのことを好きになりかけてるってこと? あーもー、よく分かんない!

 解けない謎に挑もうにも、今まで誰かを好きになったことさえ経験のない私には難解すぎて。

 呆気なく投げ出した私は、ブンブンと頭を揺すってしまうのだった。

 それをまたまた小バカにしたように、

「フンッ、どうした? 俺とのキスがあんまり心地よかったものだから、やめてほしくなかったのか?」

軽く笑った桜小路さんに図星をつけれて。

「////……ち、違いますッ!」

 あたかもリトマス紙のように顔を真っ赤に染めて、なんとも説得力に欠けることしか言えない私は、顔を隠すようにして桜小路さんの胸にピッタリと張り付くことしかできないのだった。

 そんな分かりやすすぎる私の反応に、桜小路さんは、

「フンッ、図星か。まぁ、仕方がないか。お前には、まだ俺のことを好きになりかけている自覚がないようだからなぁ」

やけに嬉しそうな声音で独り言ちるようにそう言ってきた後で、私のことを自分の胸から引き剥がすと。

 そうはさせまいとワイシャツを掴んで胸にしがみついている私の顔をグイと片手で上向かせてしまった桜小路さん。

 真っ赤になって縮こまろうと足掻く私の眼前にイケメンフェイスで尚も迫ってくるなり。

 何か嫌なことでも思い出しているのか、さっきのライオンを彷彿とさせる不機嫌極まりないという表情を忌々しげに歪めつつ、

「それはさておき、今後一切、俺の前で俺以外の男の名前を出すのは許さない。俺以外の男の名前を聞くのは不愉快極まりない。偽装だとは言え、お前は俺と結婚するんだ。結婚したら、キス以上のことは勿論、子供だって産んでもらわなきゃならないんだから、当然だ」

同様に怒気を孕んでいるような低い声音で耳を疑うようなことを言ってのけた。

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